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#02 また来ますの、その先へ|湖と小林百合子さん
2025.12.24

#02 また来ますの、その先へ|湖と小林百合子さん
by 根本絵梨子

計画のないバントリップは、思いがけない再会を連れてくる。写真家・根本絵梨子とフィルマーのエリナ・オズボーンが、天気と直感を頼りに北の大地を走った2025年の夏。季節に導かれて変わる風景、道の途中で再びめぐり合う人たち、そしてバンの中で育まれる静かな創作の時間。ただ自由に走るだけで、「また」会える——。

その不思議を確かめるように、二人の旅の記憶。連載「Roads to Meet」第二弾。


「Roads to Meet」記事一覧

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ごはんの力

2025年の真冬。ちょうど半年前のこと。

編集者の小林百合子さんのご自宅に5日間も居候させてもらいながら、スキーやハイキングを楽しみつつ撮影をしていた。「また来ます!」と別れ際に言い残したあの日の言葉が、もう現実になってしまった。

バン・トリップの2日目。小林さんと、あれよあれよといううちに一緒にキャンプ地で夕食を囲み、再会を果たすことに。そこで、大きな大きな牡蠣をいただいた。バタバタと飛んできて、まだ体も頭も追いついていなかったけれど、炭火の香りと浜の味が口に広がった瞬間、ようやく—— あぁ、夏の北海道に来たんだなぁ、と実感が湧いた。ごはんの力は本当に偉大だ。

留まりたい場所

翌朝、車窓を開けると目の前に静かな屈斜路湖が広がっていた。

この旅で初めて北海道に来たエリナは、もうすっかりこの湖に魅せられている。私も珍しく「ここに住みたいな……」という気持ちがふと湧いて、2人で「いつか家を探そうか」なんて話していた。旅で飛び回っていると、ときどき腰を落ち着けられる場所が欲しくなる。まだ3日目だというのに、もしかしたらここなのかもしれない、と思ってしまった。

出発の日、冬の思い出が詰まったあの家にもう一度立ち寄らせてもらった。東京では忙しく働きながらも、自然に囲まれ、時間の流れがゆるやかに感じられる場所を持っている。そんな暮らし方を目の当たりにして、私もさらに夢を膨らませる。「また来ます!」と声をかけ、次の目的地へ出発した。


小林百合子(Yuriko Kobayashi):
編集者。山や自然、動物、旅、暮らしや食にまつわる雑誌・書籍の編集・執筆を多く手がける。最新の著書に『山の時刻(とき)』。共著に『一生ものの、山道具』『山登りのいろは』『最高の山ごはん』などがある。
IG:@yurippe25

ふたたび硫黄山へ

その前にもう一つ。屈斜路といえば硫黄、ということで、これまでに2度訪れた硫黄山へ再び足を伸ばす。ここは何度訪れてもかっこいい場所だ。今回はエリナにも見せたくて、予定を少し変えて急遽立ち寄った。
立ち寄る場所が多くてなかなか前に進まない、というのも、クルマ旅の良さかもしれない。

すると背後から「根本さん?」と声をかけられた。振り返ると、またまた冬の撮影でお世話になっていたガイドの鑓野目純基さんの姿が。彼は北海道東部(特に摩周湖・屈斜路湖・阿寒湖周辺)を拠点に、カヌーやスノーシュー、スノーボード、写真などを通して自然体験ツアーを案内している人だ。

「なんだか屈斜路に来てるような気がしてたよ」と笑う鑓野目さん。


鑓野目純基(Junki Yarinome):
北海道文教大学大学院修了後の2017年に弟子屈町へ移住し、阿寒摩周国立公園周辺をメインフィールドにカヌーやトレッキングのアウトドアガイドとして活動を開始。2021年より「Outdoorguide YARINOME」として独立。近年は、APA AWARD 2024入選や写真展「Sense of Wonder」開催など、写真家としても評価を高めている。
IG:@junki_yarinome

旅は“人”

こんなところで? という場所で知人に会うことはよくあるけれど、やっぱり驚く。そして、何より嬉しい。たくさん話したかったけれど、“また会える気がする”という感覚に背中を押され、「また来たら連絡してね」と見送られて先へ進むことにした。

旅はまだ始まったばかり。山にも登っていないのに、すでに心が満たされている。結局のところ、旅は“人”なのだと思う。良き人との出会いがあると、旅は旅らしくなる。このバンライフの道行きは、きっとこれからもたくさんの人を会わせてくれる。次は誰に会えるだろうか——そう思うだけで、心がまた弾んだ。

根本絵梨子 (ねもとえりこ)
Photographer
2010-2011年 渡豪
2012年 都内スタジオ勤務
2014年 都内にてアシスタント
2016年 フリーランスで活動開始

2026年1月10日よりand wander outdoorギャラリーにて個展「New land, new me」を開催予定

HP:erikonemoto.com
IG:@neeemooo

Elina Osborne(エリナ・オズボーン)
映像作家。日本にルーツを持つ日系ニュージーランド人。世界中のロングトレイルを歩き、その様子を撮影したドキュメンタリー映像をYouTubeで公開し、日本を初め世界中のロングトレイルハイカーたちから絶大な信頼を得ている。
HP:elinaosborne.com
IG:@elinasborne

Photo &Text by Eriko Nemoto Produce by Ryo Muramatsu Cooperation by Moving Inn