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2021.01.03

#02 防災時にも役立つ。暮らすように過ごす、車中泊アイテム
by 千代田高史(Moonlightgear)

車中泊の魅力や最低限必要なアイテムなど、車中泊のキホンを教わった前回に続き、今回は「防災用品」と車中泊アイテムの親和性に焦点をあてる。限られたインフラの中で衣食住を確保するというシチュエーションが共通する防災時と車中泊。車中泊のためだけではなく、いざというときの備えとしても活躍するアイテムを、『Moonlightgear』の代表・千代田高史さんに教えてもらった。

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» 教えて車中泊
Summary of this article

・いざという時に備える、ギアと経験を積む
・天候に左右されないバッテリータイプのビーコンライト
・カセットボンベで稼働するキッチン用品
・快適性を上げる、衣服収納と洗濯バッグ


車中泊といっても、1年のうちに実際にクルマで寝泊まりをする回数はそう多くないかもしれない。そう考えると、車中泊のためだけにいくつものギアを揃えるのはちょっぴり気が引けてしまう。せっかくならキャンプや旅、日常、さらには防災用として、多岐にわたって使えるモノを手に入れたい。

「防災用」というと唐突感があるが、そもそも災害時の車中泊は、プライバシーの確保や感染症リスクの軽減のほかに、子どもやペットがいてもまわりの目が気にならないというメリットもある。電気自動車やハイブリッド車に関しては、停電時の電源供給になると注目を集めているほどだ。さらに車中泊で使うアウトドアギアは、不便な環境下で使うことを想定して作られたモノであり、実は防災との親和性が非常に高い
そこで『教えて車中泊』第2弾の今回は、アウトドアショップ 『Moonlightgear』の代表・千代田高史さんに、「防災」を意識した車中泊ギアを紹介してもらった。

いざという時に備える、ギアと経験を積む

可能な限りギアを軽量化し、身軽に山遊びを楽しむウルトラライトスタイルを提案している千代田さん。日頃からギアを購入する際は、小さくて、軽くて、持ち運びしやすい物を意識的に選ぶというが、「防災」の視点から見ることもあるのだろうか。


「普段から防災を強く意識しているかといえばそうではないですが、“物を少なくしていかに軽やかに移動できるか?”ということは常に念頭において生活をしている気がします。例えば僕が持ち運ぶ道具には〈Hydro Blu〉のストロー型コンパクト浄水器やペットボトルに装着できる〈SAWYER〉の浄水器に加え、小分けにできるいくつかのウォーターコンテナが入っているので、そういった意味では丸腰な状態ではないと思っています。家族を含め、車の中で寝泊まりをする経験を積んでおけば、いざという時でも冷静になれる。結果的に防災訓練にはなっているかもしれません」

天候に左右されないバッテリータイプのビーコンライト

暗い夜の車内で作業をするうえで、灯りは欠かせない。一方で災害のようにいつ起きるかわからない停電時でも、灯りがあるとないでは安心感が大きく違う。あらゆる局面に備えて用意しておきたいアイテムが「照明」だ。

「『ビーコンライトLED』は内臓USBケーブルで充電するタイプなので、シガーソケットチャージャーを使えば移動中に充電しておけます。最近よく見かけるソーラータイプのランタンの連続点灯時間が10〜15時間ぐらいなのに対して、これはLowパワー設定で約200時間連続点灯。ソーラータイプは電源がなくても充電できるというメリットがありますが、バッテリータイプは天候に左右されないので災害時でも安心です」


ビーコンライトLED
商品詳細:http://barebonesliving.jp/

カセットボンベで稼働するキッチン用品

前回の記事でも話しましたが、僕は車中泊の楽しみは料理にあると思っていて。1〜2泊程度のキャンプなら食材の保管はクーラーボックスでこと足りますが、車中泊のように数週間かけて生活をするように移動を続けるときは食材や調味料を長時間保存する必要が出てきますよね。とくに夏場はすぐに食材が傷んでしまうので、冷蔵庫を持って行くようにしています。写真右上にあるのは、カセットボンベ(CB缶)1本で24時間稼動するガス式の冷蔵庫で、「保冷」ではなく「冷却」ができるのが特徴です。カセットボンベ(CB缶)はコンビニでも売っているので、手に入らなくて困るという心配がありません



右:〈DOMETIC〉 COMBICOOL ACX 35G 
https://www.dometic.com/ja-jp/jp
中央:〈KOVEA〉 CUBE http://kovea.com/
左:〈EVERNEW〉 兵式ハンゴー https://www.evernew.co.jp/
※Amazon,楽天市場 等で購入可能

手軽に入手できるカセットボンベ(CB缶)は、防災用としても何本か常備しておきたいアイテムのひとつだ。ここで紹介した冷蔵庫だけでなく、卓上で使用できる一般的なカセットコンロにも装着できるため、食まわりはこの缶ひとつで賄うことができる。

「僕が使用しているのは、CB缶を挿すタイプのcubeというカセットコンロ。これとハンゴーでご飯を炊き、あとは現地で調達した新鮮な魚や肉をその場で調理して食べるのが旅の楽しみです。長期保存が効くという面ではアルファ米が便利ですが、たとえ少量でもその場で炊いた暖かいご飯があるだけで『日常』が取り戻せると思うんです。それは車中泊のような長旅だけでなく、災害時にも同じことが言えるんじゃないかなと。」

快適性を上げる、衣服収納と洗濯バッグ

車中泊を生活と捉えると、残りは衣食住の『衣』だ。長旅の間、毎回洋服をパッキングするのは手間がかかるし、鞄の奥底に詰め込むと探すのもひと苦労。そんな煩わしさを解消するアイテムがあるという。

「着るものを収納するのに僕が使っているのは、90Lの大容量で490gと軽量な<ULA>のダッフルバッグです。家族全員の着替えをこれひとつにまとめているんですが、開口部がガバッと大きく開くのでとにかくモノの出し入れがしやすい。使わないときは小さく畳んでおけるので、お土産を買いすぎて荷物が増えがちな旅の帰りにも重宝します。避難所などで大勢と共同生活を送らなければならないときでも、嵩張る着替えや食料をざくざくとひとつにまとめておけるバッグは活躍します。」


右:〈ULA〉 Duffle Bag https://moonlight-gear.com/?pid=148522639
左:〈Scrubba〉 Tactical Wash Bag 、Laundry Detegent(スクラバ専用洗濯洗剤)
https://thescrubba.jp/

「写真左の〈Scrubba〉ウォッシュバッグは、いわばコンパクトな洗濯機。洗いたい衣服と水、洗剤をウォッシュバッグに入れて口を閉じ、つまみ部分から空気を抜いて真空にします。その状態で衣服を内部のシリコン製洗濯板に擦り付けるように揉み洗いすることで、短時間で汚れを落とすことができるアイテムです。直接肌に触れる靴下や下着、Tシャツ、子どもの服を洗うだけでも、快適性はかなり上がりますよ」

車中泊を通してライフラインの不便な生活を試みるということが、実は防災力を身に着けることにつながっている。レジャーとして楽しみながら、時折そんなことを思い出すと車中泊の価値がもっと上がるかもしれない。

次回は、ファミリー車中泊にフォーカス。家族と楽しむ車中泊で役立つギアをご紹介!

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千代田高史
学生時代に山道をマウンテンバイクで駆け抜ける里山トレイルライドにどハマりし、山へ通い詰めるようになる。山での活動のなかで、軽さを追求したウルトラライトギアの面白さに目覚め、アメリカから直輸入したギアなどを販売する『moonlight gear』を2010年に設立。ショップの運営とともに、イギリスの山岳レースブランド『OMM』のディストリビューションなども手がけている。愛車は2006年式 LAND ROVER ディスカバリー3。

Photo by Hao Moda Text by Yumi Kurosawa Edit by Anna Hisatsune