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#04 畑のある生活、余暇としての釣り
2021.12.08 [PROMOTION]

#04 畑のある生活、余暇としての釣り
by Shogo

その人の価値観や習慣を含めた生き方をライフスタイルと呼ぶならば、釣り人にとっての「フィッシングスタイル」は、人生観が反映された釣り方、とも捉えることができる。

#go fishing」は、各方面で活躍するクリエイターに会いに行き、「どのように移動して、どんな風に釣りを楽しんでいるのか? 」という観点から、各人のフィッシングスタイルを紐解いていく連載。今回の主役はモデルのShogoさん。都内でモデル業をこなしながら、山梨県道志村と横浜市郊外にある畑を行き来する一拠点二畑の暮らし。自ら選んだ多忙な生活の中で、少しずつ確保できるようになった余白の時間を、釣りに充てようと考えていた。

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山梨県の最東端に位置する道志村は、清流・道志川に沿って村を成す自然味溢れる土地。東京都内からもアクセスしやすく、アウトドア好きからはキャンプスポットとして有名。また、谷間を縫うように走る村のメインストリート「道志みち」はツーリングのメッカとしても知られている。モデルのShogoさんは、最低でも週1回はこの地を訪れる村の常連さん。その目的はキャンプをするためでもバイクに乗るためでもなく、農作業のため。凛と冷え込んだある秋の朝も、道志の畑には彼の姿があった。

「今は晩夏から秋に定植した野菜の収穫時期で、今日はカブとビーツが採りごろですね。もう少ししたら芽キャベツ、ブロッコリー、ニンジンもいけそうです。ニンニクは来年の春ですね。本格的に寒くなる前にここまで育ってくれたので、あとは霜がおりてしまっても問題なさそう……」

道志山麓の畑でひとり

出演しているファッション誌やカタログ、広告、CMは数知れず。モデルとして15年以上のキャリアを持ち、ますます油がのっている人気モデルのShogoさん。2018年からは自分が代表を務めるモデル事務所を開設した傍ら、ボランティア活動も継続的に行っていて、家族との時間も大切にしているというから、なかなか自分の時間が作れないであろう。

それなのに、家から離れた場所に畑を2ヶ所を持つ。彼を突き動かす原動力はなんなのだろうか。

「そもそも畑を始めるきっかけとなったのは、事務所に所属するモデルの実家が八百屋さんだったこと。僕は事務所をやっていることもあって特に気にしているのですが、モデルとしてセカンドキャリアを築けるように、常に知識を蓄えたり、挑戦すべきだと考えています。野菜作りを通して生産者の側に立ったとき、違う視点が持てたり、自分たちがいる意義を感じられるんじゃないかと思って、それで事務所として横浜の郊外に畑を借りました。でも結局僕がハマって(笑)。今は僕が一番楽しんでいるから、きっかけを作ってくれた彼には感謝です」

土をいじって、自分で野菜を作ることによって食べ物に対する価値観も代わり、野菜の美味しさにも気がつけるようになったというShogoさん。この4年間で畑マニアになり、ついには育てた野菜を店に出荷する機会を得て、農業従事者としての顔も持ち始めた。

横浜にある事務所の農園を維持しつつ、ここ道志村での野菜づくりをスタートしたのは2020年。地元の農業グループ〈道志村ひゃくしょう会〉との出会いがきっかけとなって一緒に野菜を育てるプロジェクトが始まり、秋から遊休農地となっていた場所を借り受ける形で畑をいちから開墾した。


栽培期間中に化学肥料や農薬を使わない農法で、野菜を栽培。道志村の畑で採れた野菜の多くは〈代官山青果店〉に出荷して、販売されている。

「マルチシートや防草シートを使っているのでいわゆる自然農法ではないですが、野菜の世話はよっぽど日照りが続かなければ週に1、2回やってくる程度で、基本的に野菜本来の生命力頼り。もちろん毎日水をあげなくても良いようなものを選んだり、栽培も工夫もしていますが、なるべく自然の力で育った野菜の方が美味しいと思っているので、そうしています」

この日の任務は、夏の終わりに植えたカブとケールの収穫。昼と夜の激しい寒暖差が育んだ旨みが凝縮された野菜を、ジムニーの荷台に積んで東京に持ち帰る。



作業用兼・趣味カーとしてのジムニー

道志村ひゃくしょう会と一緒に野菜作りを始めた昨年、セカンドカーとしてジムニーを手に入れたShogoさん。イメージとしては農家の軽トラ的な使い方で、農作業をするときにちょうどいいと購入したものだが、小回りも効くので都内での生活でも大活躍中だという。

「軽トラ代わりといっても、僕の場合は収穫量も限られているので小さなジムニーの荷台があれば十分。軽バンも考えましたが、モデルという職業柄もあってスタイルが感じられる方がいいかなと。もちろん、アウトドア遊びにも使えるという下心ももちろんありました(笑)」

1995年製のJA22。四半世紀以上前のクルマということになるが、エンジンを載せ替えたばかりなので末長く付き合っていきたいとのこと。そのためにも、活用の幅を広げたいと思っているのだとか。

Shogoさんが次に企んでいるのは、農作業と釣りを抱き合わせること。道志の畑に向かうときには毎回中央自動車道の相模湖インターを利用するそうだが、その道すがらに相模湖でバス釣りができないかと考えているのだ。

「実はついでに釣りをするっていうのは始めから思っていたことで、釣り竿をクルマ車に忍ばせてことがあるのですが、いつも畑作業で時間がなくなってしまい(笑)。ただ、道志の畑も1年やってきて作業量も落ち着いて来たので、今後は少しづつ時間が作れるようになるかなと」

現在36歳のShogoさんはバリバリのバス釣り世代。小・中学生の頃バス釣りをはじめ、20代前半はよく千葉に野池を開拓しに行っていたという。それ以降も今に至るまで折に触れて個人的釣りブームがやってきていたが、改めて釣り場が身近にある状況になったため、いま再びアングラーの血が騒ぎ出したのだ。

目指すは趣味と趣味の両立

子どもの頃から森林公園が遊び場で、そこから自然趣味が根付いていると自己分析するShogoさん。モデルという都会ならではの職業であるものの、街での生活を過ごすためには、土の匂いを嗅いで、緑で目を癒し、フレッシュな空気を吸い込むことだって必要なことなのだと歳を重ねるごとに感じているそう。

「都内から自然豊かな場所に来るとしっくり来て。都会で日常生活をしているだけだったらバランスが保てないというか。土いじりっていうのはそういう意味でも今の僕には必要な存在で。それに釣りが加わるっていうのも自然な流れなのかなと」

一拠点二畑の生活の間に、ちょうどいい息抜きもプラス。たまに家族と一緒に畑で作業をすることもあるものの、基本はShogoさんがひとりで畑に向かって作業をする。しかし、1日中畑にいれる日ばかりでもなく、午前中だけでとんぼ返りということも増えてきたという。だからこそ日々に忙殺されないためにも、自然の中で自分の時間をもつという意味でも、釣りに気分が向いているのかもしれない。

「野菜作りだって趣味で始めたものですが、実益も大きいからか妻も大賛成してくれていて、畑に行くことに関しては肯定的です。でも、もし釣りのためだけの外出なら妻からブーイングが入ると思うんですよね。同じ趣味には違いないのに(笑)。でも、畑に行くついでにちょっと遊ぶくらいならきっと許してくれるはず。僕がこのスタイルを成功させたら、世のお父さんに“畑×釣り”を推奨していこうと思います」

小春日和のこの日は、1年以上温め続けていた計画を実行に移した記念すべき1日。愛車のジムニーからフットエレキのボートに乗り換えたShogoさんは、雄大な相模湖にゆっくりと漕ぎ出す。

久しぶりのペダル操作に悪戦苦闘しながら、湖上に浮かんで竿を振る。これから開拓していくこの湖の様子を、次々とキャストしながら探る作業。自然を相手に身ひとつで挑む感覚が嬉しいかったのだろう、「これこれ!」と言わんばかりの笑みが溢れる。

天気や気温、時間帯、ストラクチャーや地形を読み、どうすれば魚が釣れてくれるのか。Shogoさんは、真剣な眼差してラインの先を眺め、アクションを試していた。

未知を無くしていく充実感

バスフィールドとして70年以上の歴史をもち、首都圏のバサーが集まるの人気の湖だが、人工湖ゆえに急深で陸っぱりから狙えるポイントが少ない相模湖。これまで陸から釣る事が多かったShogoさんにとっては、同じバス釣りでもここは少し勝手が違うようだ。

「まずはもっとリサーチをして、場数を踏んでポイントを見つけるところから始めなければいけなさそうです。畑のついでに朝マズメか夕マズメにちょろっと2、3時間できるのが理想なので、できれば陸っぱりで狙える川の流れ込みとか。それか相模湖ではなく野池を探すのもいいかも。いや、考え方を変えて、渓流で釣れるようになったら畑の近くで楽しめるかも? いずれにせよ、新しい挑戦が始まる予感です」

膨らむ妄想からも感じられるShogoさんのやる気。いよいよ畑と釣りの両立という理想的フィッシングスタイルの確立も間近。ハマってしまったら徹底的に追求してしまいそうな彼のことだから、むしろ釣り熱が高まりすぎて、家族からひんしゅくを買わないか心配になってきた。

Instagram:@go_fishing_jp

1985年愛知県出身。2007年にモデルとして活動を開始。2018年にはモデルエージェンシー〈VELBED.〉を設立し、代表を務める傍ら自らもモデルとしてファッション誌、CM、広告などで活躍中。また、復興支援ボランティア団体〈This is a pen〉の代表、野良仕事用ウェア&小物ブランド〈KEIMEN〉のディレクター、農業従事者など、多彩な顔をもつ。

photo by Masayuki Nakaya text by Junpei Suzuki produce by Yuki Hiiro supported by #go_fishing