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2022.04.20

#02 オリジナル軽トラキャンピングカー、どんな風に乗る? (レイアウト&デザインを思考する編)

noruのオリジナル軽トラキャンピングカー『noru car』ができるまで。構想〜下準備編をお伝えした初回に続き、第二弾となる今回はレイアウトとデザインの会議編。とことんこだわりたいがゆえ、一から作るnoru car。だからこそ紆余曲折あったが、なんとか、見えてきました。

noruのオリジナル軽トラキャンピングカー | 連載「noru car project」記事一覧

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本来、トラベルハウスの軽トラキャンパーはセミオーダースタイルなので、ラインナップされた型やカラーから標準装備を選択、さらにオプション追加などをして、自分好みを“選ぶ”スタイルだ。一般的には、キャンパーの内装・外装はほとんど出来上がった状態で受け取るわけだが、我々が選んだのはオリジナルで“作る”という道。車検や法律などの制約はあれど自由度は高い。だからこそ迷うのである。無限にある選択肢からどうレイアウト、デザインしていくのか、そこのところをレポートしていこう。

今回、キャンパー内の設計とデザインは、アパレルショップやコーヒーショップなどの店舗デザインを得意とする〈gavel〉の森貴士さんに依頼した。デザインも設計もすべて自分たちで、というDIYな路線も考えたが、機能性やデザイン性をより洗練されたものにするために、デザインや施工はプロにお願いしようということになった。森さんは、noru studioの設計、デザインも担当してくれているインテリアデザイナー。noruの総監督である村松賢一の学生時代の後輩で、忖度のない話し合いができる間柄のようだ。キャンピングカーを作るのは森さんも初めて、だが、このプロジェクトを面白がってくれ、引き受けてくれた心強いチームのひとり。そんな森さんと打ち合わせを重ねて、仕様とレイアウト、内装デザインを決定していく。

こちらが森さん。事務所に伺った際は、壁にキャンパーのサイズをマーキングしてくれたり、とお互いがイメージしやすい環境を作ってくれる。

レイアウト決めは、必要な機能に応じて

レイアウト案を森さんが作成するにあたり、noru carでどんなことをしたいか、をお伝えした。リクエストしたことは以下のようなこと。

必要なこと

・仕事ができる椅子と机が欲しい
・2名で、打ち合わせまたは食事ができるようにしたい
・2名が寝れるスペースの確保

可能であれば実現したいこと

・窓のフレームを木枠にしたい
・後ろの扉を改修したい
・パーツなどはなるべく経年変化するものが良い
・太陽光パネル実装

このざっくりとしたリクエストをもとに、森さんがレイアウト案を作成してくれた。


初回ミーティング時の設計図

軽キャンパーは、高さ約1730mm×幅約1250mm×奥行き約2000mmの空間(以下、ボックス部分と表記)と、運転席側にかぶるかたちでせり出している高さ600mm×奥行き約1770mmのロフト部分がある構造。ボックス部分には、ベンチ、テーブル、小物を収納したりディスプレイできるシェルフを設置する、というのが主な仕様だ。

このレイアウトの前提に沿って、さらに具体的な機能の仕様を詰めていくのだが……。わかっちゃいたけどやっぱり狭い。車体はあくまで“軽自動車”なのだから、それはそうなのだ。この狭小スペースを実用性、機能性を考慮して設計し、デザイン性も両立させるというのは簡単ではない。ひとつひとつ吟味して、取捨選択をしていくしかない。

就寝スペースと土足の関係性

ロフト部分はスペース的に1人しか寝れないので、2人が寝る場合、床に1人が寝ることになる。そうなると土足で使用すると床で眠る場合、汚れが気になるので土足はNGということに。

2人で打ち合わせをしたり、食事をするために。ベンチとテーブルは要工夫

右の壁側に沿って配置するベンチは2人が座れるサイズ。ボックス内の空間の3分の1程度を占める。有効スペースを最大化するため座席部分に収納スペースを設けることにした。

なかなか悩ましいのがテーブル。ベンチの中央部分に壁から飛び出すようなかたちのテーブルを検討したが、小窓がある関係で設置が難しい。というわけで、シェルフ側に取り付ける案に。ありきたりではないデザインにしたい、という賢一さんの希望とアイディアで、用途に応じてサイズを調整できるような二段階で折りたためるものの設計をリクエスト。

ブラッシュアップされた設計図

走行中に荷物が飛び出さないように

設計において忘れてはいけないのは、クルマであること。ロフト部分とシェルフの収納スペースは、走行中に荷物が飛び出さないような仕組みも必要だ。シェルフにはしっかりと閉められる、かつ停車時には開けたままにすることもできるような扉をつけてもらう。ロフト部分は、下に荷物が落下しないよう留め具となるものを設置予定。

エアコンと電力問題

当初は、居住性を重要視してエアコンを設置し、電力は太陽光パネルを設置しソーラーでまかなおうとしていた。のだが、noru carの現状の使用用途として、コロナ渦ということもあり、そもそもキャンパー内に長時間滞在をしたり長旅をしたり、ということがそう多くないだろうと。仮に長旅に出るとなれば、エアコンのいらない避暑地の可能性が高いはずだ。いうことで、ひとまずはエアコンも太陽光発電も装備しないこととなった。

デザインは、インダストリアルなnoruらしいトーンに

仕様が決まったらデザインの方向性を決めていく。いくつかのイメージからそれぞれ好きな雰囲気、noruらしい印象などを話し合い、結論は、noru studioとの親和性もあるインダストリアルでシックなトーンを選択。


素材選びは重量とにらめっこ

こうして決まっていった各仕様。サクサクとお伝えしてきたが何度も打ち合わせを重ねて、ああでもないこうでもないと話し合い行き着いた選択だ。そうしてようやく仕様とデザインが見えてきた。いよいよ施工へ向けて、各部分の資材・素材を決めていく。壁や床、ベンチ、テーブル、そして棚をどの資材で作るか、ということ。

このように、細部まで自分たちで選べる、というのは今回の醍醐味でもある、のだが、そこでぶち当たったのは重量問題。軽トラックは積載量が350kgまでと定められている。そのため、もちろん我々のキャンパーも350kgを超えてはならない。高級感のある質感の素材や、経年変化を楽しめる無垢の木材など重たい素材を多用すると重量オーバーとなってしまう。実は、この問題に現在進行形で悩まされています。この壁、どう乗り越える!? 次回の記事をお楽しみに。

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