product

2023.09.25

日常のちょっとした隙間で読みたい超短編集 #編集部員のクルマの中 by Toshiya Muraoka

戌井昭人「沓が行く。」/左右社

移動とヒトのライフスタイルメディア『noru journal』の編集部員・スタッフたちオススメのカーアイテムとは? どんなプロダクトを乗せてクルマを走らせているのだろうか。「#編集部員のクルマの中」をのぞいてみよう。

今回、クルマの中のアイテムを紹介してくれるのはライターの村岡俊也。

PRODUCT連載 | 「#編集部員のクルマの中」記事一覧


時代に反して、待ち時間を有意義!?なものに変えてくれる一冊

雑誌BRUTUSで、10年近く戌井昭人さんの連載を担当していた。戌井さんは芥川賞に5回ノミネートされて全て落選という素晴らしい作家なのだが、日常に潜む旅情、あるいは旅先で見つけた詩情を短い文章と写真で綴ってもらう連載だった。その超短編を一冊にまとめると、想像以上にくだらなくて、よくわからない本になった。例えば娘の習い事が終わるのを待っている間の、ふとした時間で読めるからクルマの中にこの本を置いている。ほとんど詩のような超短編は、一編を読むのに一分もかからない。だから、いつ子どもが出てきてもサッと本を閉じられるのだが、その余韻の強さは文章量は関係ないことがよくわかるはず。
帯裏の文には、“屁を嗅ぐように写真を撮り、屁をひるように文章を綴る”という文言を選んだが、その言葉通り、何の役にも立たない。けれど、SNSで情報収集を気取るより、その待ち時間をはるかに有意義なものに変えてくれる。そしてとにかく旅に出たくなる。

Recommender
ライター:村岡俊也

鎌倉市出身、在住。旅とその土地の記憶を一つのテーマに執筆を行う。著書に、アイヌの木彫り職人を取材した『熊を彫る人』(小学館)、新橋駅前のビルをルポした『新橋パラダイス 駅前名物ビル残日録』(文藝春秋)など。

乗っているクルマ:Volkswagen クロスポロ 2008年式
好きなドライブ:アラスカやテキサスの広大な土地で、スピードを出しているのに、進んでいるかどうかわからなくなるようなドライブ。

村岡俊也さんの関連記事:
PEOPLE | 暮らしの中での機能を果たすべき道具

 

戌井昭人「沓が行く。」
価格:¥2,090(税込)

■商品詳細
URL:sayusha.com/books/-/isbn9784865280739

[刊行日] 2022年05月30日
[判型/ページ数] 四六判 並製 256ページ
[装幀/装画] TAKAIYAMA inc./装幀

SHOP INFO
取り扱い:左右社
URL:sayusha.com

Photo by Yasuma Miura