そもそも、人はみな多面的である

――2020年の個展「NOWHERE」には、立体物を通じて新しい表現に果敢に挑戦する姿勢を提示しましたが、“三上数馬=イラスト”を一切展示しなかった理由は？

コロナ禍でイラストの仕事が途切れたタイミングがあって、過去一番悩みました。20代後半から『POPEYE』からの発注が増えて、フックアップしてもらいましたが、〝POPEYEの三上さん〟と言われることでありがたい反面、だんだんイラストレーターとして社会に接することに摩耗しているとも感じていました。

流行りは一瞬で過ぎ去るもの。そこにしがみついても意味がないですし、しがみつけば飯は食えるかも知れませんけど来年40歳というタイミングで、キャリアもあと20年くらいだろう、と。それなら、やりたいことをやろうと思ったんです。人間は多面的であり、転がるようにいろんな面から社会と接しながら表現したい。それで、イラストじゃない表現方法にチャレンジしてみたら、すごく自分の幅が広がりました。それからは受け身の姿勢ではなく、自ら発信して何か新しいプロジェクトをやろうと強く思っていた矢先に、CATSからの誘いがありました。

 

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――そのプロジェクトがCyber Pottery Projectですね。

そうですね。その中では陶芸をやっています。自分が作っているものが3Ｄで見られるVRの陶芸ソフトがあるんですけど、作っているはずなのに〝物〟としては存在しない。この違和感がすごく面白くて、最初はそのデータを使い、3Dプリンターで作ろうとしました。でも、それだと技術に頼りすぎて僕がやる意味がない。なので一回2Dで描いたスケッチをVRによって立体的にして、それを元にまたアナログで陶器を作るということをやっています。

クルマを手に入れ、DIYでカスタマイズした

――「Cyber Actress, a.k.a. CATS」では、オンラインでの作品販売以外に、移動車による販売も行うようになったのはなぜですか。

2年前に、日産のADマックスワゴンを譲ってもらったんです。走行距離は、今で20万キロぐらいで、調子も良いです。それで、いろいろいじって、ある程度形になってからは、キャンプ道具やカヤックを積んだりして自家用車として愛用していたんです。ラゲッジルームは、自転車もバラさないで乗せられるスペースがあるんですよ。

でも、もっと違う使い道があるんじゃないかと思った時にCATSで取り扱ってる商品を移動販売したら面白いんじゃないかと。今後は、このクルマを使って、東京やその近郊の都市でゲリラ的に販売をしていきたいんです。

クリエイターと消費者が直接つながる

――実際に、移動販売を始めてみていかがですか？

自分でクルマを運転して、自分達が作ったものを持って行くことによって、人との距離がすごく近くなりましたね。これまでと比べると、確かに雑誌の担当者から「編集部も喜んでいます」と言ってもらえてそれも嬉しいんですけど、実感はわきにくいんです。でも、移動販売なら直に人に会えて、声を聞けるじゃないですか。それはやっぱり面白いですし、新鮮でしたね。

どうしてもイラストレーターって、受注ありきで。クライアントからの依頼を待つしかないんですよ。今までは、依頼があってから動いていたのが、クルマで移動するという手段を手にしてからは、自分から動けるようなった。それが、一番の変化ですね。

そこで出会った人から「うちのお店でイベントをやってくれないか」と誘われたりして、人との繋がりが密になったのもすごく楽しいです。こうした動きに、周りのアーティストたちも敏感に反応してくれて「いいね」って言ってくれている。もっとフレキシブルに動いて、「Cyber Actress, a.k.a. CATS」を通じて、たくさんの人に刺激を与えられたらいいですね。

今後の活動は「Cyber Actress, a.k.a. CATS」のインスタグラムを通じて告知予定だ。ぜひチェックしてみてほしい。

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