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2024.12.26

年末年始こそ、本を読もう。選書企画 #移動時間で読み切れる本 【完読時間:1時間以内 編】

忙しない年の暮れを駆け抜けたら、新しい年の始まり。年末年始は、挨拶回りや帰省に旅行などと、なにかと移動が多い。いろんな移動の間は、読書のチャンスでもありますよね。そこで今回は、移動時間で読み切れる(であろう)本を編集部で選書してみました。第1弾は、1時間以内編。5分や10分のちょっとした移動で数頁めくりたい詩集や掌編小説。1時間以内でさくっと読んだり眺めたりするのにちょうどいい雑誌や写真集など8冊をご紹介。

#移動時間で読み切れる本|記事一覧


旅をする木/星野道夫 [読書時間 約20分/各章]

旅の幸福を言語化した星野道夫の入口

「ここ数年で、クルマの移動中に最も流れている音楽は、haruka nakamuraのCDたちだ。だから星野道夫×haruka nakamuraのコラボレーションをきっかけに、これまで読んでこなかった星野さんの冒険の手記や写真集を少しずつ手にとるようになった。お恥ずかしながら、ここ最近のことなのだ。そんな入門者としての視点でいうと、冒険家、写真家、詩人として誰もが一度は目にしたことのある星野道夫という人物を知るにはちょうどよく、手に取りやすい33編のエッセイ集。そもそも旅をすること。見たことのない景色や誰かに出会うこと。それに感動することで、人の感情がどう揺れ動くのか。人生に何がもたらされるのか、そんな旅の効能みたいなものが言語化されている1冊です。(村松亮)」

発売:1999年3月10日
発行:文春文庫
価格:640円 (税込)
ページ数:241P

SPROUT! [完読時間 約1時間]

長野県発のローカル雑誌が創刊! テーマは、“New Organic”

「最近の個人的なテーマに、耳触りも良く、世間の受けも良いフレーズにこそ注意が必要だ、というものがある。たとえば「豊かな暮らし」。何をもって豊かなのか、その豊かさの先に何があるのか。「自分らしく生きる」。そもそも自分らしさをみんな求め過ぎ? ほんとに自分らしさは必要? などなど。聞こえの良い言葉には、案外ぼんやりしている部分がある。だから安易に使わずに、立ち止まって見直していきたい。そう考えていたところに、先輩編集者である岡澤浩太郎さんが創刊する長野県発のローカル雑誌『sprout!』に参画することとなった。創刊号のテーマは、“New Organic”。「オーガニック」という言葉も、聞こえはとても良く、それでいて捉え直したら面白いし、これからの時代に向けて、むしろ再定義すべき、ややぼやっとしたところがある言葉だ。長野県で活動する人たちの声を集めながら「New Organicとは、つながりのことではないか」そんな仮説のもとで編まれた特集は読み応えありです。(村松亮)」

発売:2024年12月21日
発行:八耀堂
価格:1,760円 (税込)
ページ数:80P

 

Recommender:noru journal 編集長:村松亮

東京-伊那谷-御代田の3拠点ライフを実践中。会社・編集部は東京なので、週2~3回は出稼ぎに。2022年より、家族と米作りを始めました。
IG:@ryomuramatsu

 

幸せについて/谷川俊太郎 [読書時間 約5分/一小節]

詩人・谷川俊太郎が87歳で綴った、はじめての“人生論”

「今年11月13日に92歳で亡くなられた詩人・谷川俊太郎さん。いわゆる“人生論”は一切出版してこなかった彼が87歳のときに『幸せとは何か』を語り、綴った全編書き下ろしの1冊。2年前に子が生まれ母になって、言葉に表せないくらいの幸せを感じる瞬間が増えて、ふと手に取った本です。過去や未来を憂うことなく、ここにある幸せがすっと腹に落ちてくる。難しいことはひとつも書かれていないし、手書きの短い言葉をぱらぱらと眺めるだけでもいい。疲れていても読めます。むしろ沁みます。なんでもないことの幸せに気づかせてくれたり、はっとさせられたり、1日の始まりや終わりに数頁だけでもめくりたくなります。生涯言葉を紡いだ谷川俊太郎さんに畏敬の念が尽きません(久恒杏菜)」

発売:2018年11月22日
出版社:ナナロク社
価格:1,100円 (税込)
ページ数:112P

 

Recommender:noru journal編集・ライター:久恒杏菜

神奈川県・西湘エリアに暮らすリモート編集部員。田舎町に移り住んだことをきっかけに、ペーパードライバーを脱する。近頃は、秦野方面への近場ドライブが多めな一児の母。
IG:@anna_hisatsune

 

やさしいせかい/関根愛 [読書時間 約10分/一篇]

シンプルな言葉の意味を巡って

「執筆活動や映像作品を撮ったりと、多岐にわたって制作活動をする関根愛さんの初の書き下ろし本。やさしさとはなんなのか、本当のやさしいとはどういうことなのか、をテーマに書かれた31個の掌篇です。簡単な言葉のようで、簡単じゃない。一見やさしく思えるものがそうじゃなかったり。時に厳しさの中にある、一見わかりずらい言葉の奥底に潜んでいたり。そして、後からそのやさしさに気づいたり。自分も日々生活していく上で、あの時のあの言葉、あの時こうしていればよかったと自責したり。“やさしい”の周りにあるものを集めたような物語たち。忙しい日々に疲れた時や、のある社会にうんざりした時、この年末年始のゆったりとした時間にゆっくり読んでみてください。(石川美帆)」

発売:2023年11月11日
印刷・製本:株式会社イニュイック
価格:1,000円 (税込)
ページ数:68P

 

Recommender:noru journal編集:石川美帆

都内在住、1995年生まれ。前職はグラフィックデザイナー。その後SHIKAKU incに所属しnoru journalの編集部員となる。休日は月に数回友達と目的のないドライブを楽しんでいる。趣味は温泉、お絵描き、美術館巡り。
IG:@ishi_mih0

私、写真を放棄することは、全く不可能です/大竹昭子 [完読時間 約1時間]

写真の不思議を探る1冊。思考と言葉に満ちた人が、写真を選んだのはなぜか

「2015年、私が写真を始めた頃に亡くなった中平卓馬という写真家。今年の3月に初めて中平卓馬の写真を見たときに買った本です。この本に載っている写真も良い。カラーがモノクロになっているのにとても良い。正直、中平卓馬のことをあまりよく知らないまま読む本ではなかったかもしれませんが自分が写真家として生きている今、少しは分かる部分があります。写真家ではなくても、写真家のことをよく知らなくても、きっと写真を撮っている人のことを少しは理解できると思います。新しい写真集を見るように本を開いてみてほしいです。(柘植美咲)」

発売:2023年7月15日
発行:カタリココ文庫
価格:1,100円 (税込)
ページ数:80P

キッチン/吉本ばなな [読書時間 約10分/一篇]

〈吉本ばなな〉始まりの本。世界で読みつがれるロング・ベストセラー

「私は、だれかのために料理をして、その“だれか”と一緒に食事をするのが好き。そう、改めて気づくことができた本でした。私は自分だけのために食事を作りたいとは思わないし、せっかくおいしいご飯を食べるのなら“だれか”と一緒に食べたいんです。『どうして、あなたと一緒に食べるとこんなにおいしいのだろう』こう思える人と私も出会いたいな。そして、そう思ってもらえるような人になりたいな。主人公、みかげの芯の強さとやさしさに憧れます。そして、雄一とえり子さんのあたたかさに救われます。この先、またひどくつらいことがあったらこの本を読んで、あついカツを食べようと思います。(柘植美咲)」

発売:2018年10月31日
出版社:新潮社
価格:2,475円 (税込)
ページ数:272P

 

Recommender:フォトグラファー:柘植美咲

写真家。2000年、三重県生まれ。2016年の高校1年生の時から写真を撮り始める。2018年、ポカリスエットの広告を撮影。2020年2月、IMA nextの「LOVE」をテーマにした回でグランプリを受賞。
IG:@misaki_tsuge

TTP/富安隼久 [完読時間 約1時間]

公園に置かれたTTP(tischtennisplatte[卓球台])を定点観測した作品集。変わらぬ視点から見る、違った景色の妙

「モノや風景の捉え方、視点の気づきを得られる1冊です。新型コロナウィルスが落ち着き、暮らす場所や働く場所、訪れる場所など前のように『自由』な生活が戻ったなと感じています。移動できる時代に、あえて定点観測された記録に触れることで、同じ風景でも注意深く見ることで気づく風景があること、時間や季節が変われば一つとして同じ風景がないことなどを改めて感じさせてくれます。作者のたゆまぬ好奇心の結果生まれたTTPは人間の行動から滲む習性やユーモアを写真に写る1台の卓球台を中心に垣間見ることができます。改めてモノや風景を捉える視点への気づきを得ることで、旅先で見える風景がいつも以上に増えるのでないでしょうか。ぜひ年末年始、旅の道中でも写真を開いてみてください。(原康太)」

発売:2018年5月18日
出版社:MACK
価格:6,105円 (税込)
ページ数:260P

 

Recommender:デザイナー・編集者 原康太

京都出身、現在は週の半分を千葉に住み、半分は静岡県沼津市戸田で暮らす。趣味は、SUP、釣り、ラン二ング、自然の中でのコーヒーブレイク。
IG:@ko.ko.u

ナショナル ジオグラフィック日本版 2024年4月号[読書時間 約1時間]

毎号驚きのナショジオ雑誌版。菌類が織りなす、神秘の世界に夢中

「移動中に読むとなると、やはり特集完結する雑誌が外せないと思います。『ナショナルジオグラフィック』は定期購読しているんですが、毎号驚きを与えてくれます。2024年の中で選ぶとすると4月号の菌類特集。実は菌類って未発見のものがまだまだ眠っているんです。だから、もしかしたら今後見つかるキノコでガンが治る可能性もあるし、いまではキノコを使ったキノコレザーなるものも登場しています。まだまだ未開拓だからこそ可能性を秘めた菌類の世界に夢中です。ちなみに菌類系の本だと『マザーツリー』というのもオススメなんですが、こちらは500ページ越えの大作で、移動中に持ち運ぶとそれだけでバッグが超絶重たくなるんで、家でじっくり、が良いですね。(櫻井卓)」

発売: 2024年3月29日
出版:日経ナショナル ジオグラフィック
価格:1,300円 (税込)
ページ数:136P

 

Recommender:ライター 櫻井卓

1977年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスのライターに。
30過ぎてから旅にハマり、最近はアメリカを中心に海外の国立公園をハイキングするのが趣味。好きなジャンルは、旅、登山、アウトドア、歴史、自然、野生動物、インタビュー。
IG:@sxuxb.sakurai