忙しない年の暮れを駆け抜けたら、新しい年の始まり。年末年始は、挨拶回りや帰省に旅行などと、なにかと移動が多い。いろんな移動の間は、読書のチャンスでもありますよね。そこで今回は、移動時間で読み切れる(であろう)本を編集部で選書してみました。第2弾は、3時間以内編。近くはないけどそう遠くもない、1~3時間くらいの移動で軽やかに読み切れるエッセイ5冊。
色と形のずっと手前で/長嶋りかこ [完読時間 約3時間]
育児と仕事、母と社会。ふたつの間で立ち往生しながら書き溜めてきたメモをもとに綴られた、臨場感あるエッセイ
「広告業界の第一線を走ってきたアートディレクターの長嶋りかこさんが妊娠、出産、育児を機に書き溜めてきたメモをもとに綴られた本。母になりゆく体でデザイナーとして社会と対峙すること、仕事と育児の両立の壁、子どもを通して見ている世界と、仕事を通して見えている世界。そんなふたつの間で立ち往生しながら書かれた言葉たち。そんな言葉たちは、今年育児休暇を終えて仕事に復帰した私には臨場感があり、時に深く刺さり、時に温かく包み込んでくれました。通勤の電車の中で読みながら涙が溢れそうになったことも。育児と仕事のはざまで揺れる感情の波をともに漂ってくれるような1冊。デザインが効いた文字のレイアウトで、音や呼吸が聞こえるような読み味も印象的でした。(久恒杏菜)」
発売:2018年11月22日
出版社:村畑出版
価格:2,530円 (税込)
ページ数:240P
Recommender:noru journal編集・ライター:久恒杏菜
神奈川県・西湘エリアに暮らすリモート編集部員。田舎町に移り住んだことをきっかけに、ペーパードライバーを脱する。近頃は、秦野方面への近場ドライブが多めな一児の母。
IG:@anna_hisatsune
虎のたましい人魚の涙/くどうれいん [読書時間 約20分/各章]
何気ない日常の何気ない毎日
「23編からなるエッセイ集。著者くどうれいんさんの会社員と作家の両立、独立までのお話や、クスッと笑えたり、共感したり、ちょっとしたフレーズにハッとさせられたり。日々仕事をし生活していると見落としてしまいそうな何気ない日常の面白さや、角度が変われば立ち上がる新しい視点。移動時間に一編づつでも読んでほしいです。読んだ後、もっと自分の日常にもちゃんと目を向けようと思えるエッセイです。 (石川美帆)」
発売:2022年9月22日
発行:講談社
価格:1,540円 (税込)
ページ数:192P
Recommender:noru journal編集:石川美帆
都内在住、1995年生まれ。前職はグラフィックデザイナー。その後SHIKAKU incに所属しnoru journalの編集部員となる。休日は月に数回友達と目的のないドライブを楽しんでいる。趣味は温泉、お絵描き、美術館巡り。
IG:@ishi_mih0
それでも変わらないもの/椋本湧也[読書時間 約30分/各章]
旅先で読んでもらいたい。世界22ヵ国で暮らす30名の日本人が手紙に綴る、コロナ時代の生活をめぐる書簡集
「どんな時に喜びやくやしさや悲しみを感じるのだろうか、そんな自分の感情と向き合う時間を与えてくれる1冊。新型コロナウイルスの流行により、突如人との繋がりや移動を失った私たちの生活。当たり前だった生活が制限され、変化を強いられることで、私たちは逆に『変わらないもの』に目を向けることもできた気がします。世界22ヵ国で暮らす30名の日本人から届く、『あなたにとって大切なことは何ですか』。という言葉。大切な人からの手紙を開けるように、1つ1つゆっくりと手紙を読むことで、当たり前の日常が戻りつつある今だからこそ、改めて自分が何を想い、どんな感情のもとに生きているのか、思い返すことができます。旅先で自分が心動いた場所でぜひ手紙を開けてみてください。 (原康太)」
発売: 2022年11月9日
印刷・製本:シナノ書籍印刷
価格:2,200円 (税込)
ページ数:272P
柚木沙弥郎のことば/柚木沙弥郎 [完読時間 約3時間]
今年101歳の生涯を閉じた染色家、柚木沙弥郎の珠玉のことばたち
「民藝第一人者である染色家・柚木沙弥郎さんのことばは、民藝や染色に興味があるひとはもちろん、そうでない人にも、生き方へのヒントになるような金言がたくさんあります。柚木氏は文中にて、旅の醍醐味は『その土地にしかない、“暮らしかた”を垣間見られること』と語っています。インターネットや映像などで直ぐに色んな土地や風景を見られる便利な時代だからこそ、私自身『リアル感』を大切に生きています。現地を訪れ、土地の空気を吸い、現地の人と現地の食事を囲む。その土地の歴史・文化に触れ、自分の肌で感じるからこそ、記憶に残り、誰からに語りたいものになるのだろうと。年末年始、柚木氏のことばをクルマに載せて、旅先での新しい出会いを楽しみに出発してください。 (原康太)」
発売:2021年2月8日
発行:グラフィック社
価格:2,200円 (税込)
ページ数:192P
Recommender:デザイナー・編集者 原康太
京都出身、現在は週の半分を千葉に住み、半分は静岡県沼津市戸田で暮らす。趣味は、SUP、釣り、ラン二ング、自然の中でのコーヒーブレイク。
IG:@ko.ko.u
てくてく青空登山/安西水丸 [完読時間 約3時間]
低山歩きの豊かさが柔らかい感性で描かれた、イラストエッセイ集
「若い頃はガシガシ雪山なんかにも登っていたのですが、最近、冬場はもっぱら低山に行っています。体力の衰え、というよりかは低山の豊かさに気付いたというのが大きな理由で、動植物や地質、歴史なんかに目を向けると驚くほど多様な世界が拡がっているんです。そんな低山の魅力を上手に伝えているのが安西水丸さんの『てくてく青空登山』です。彼が好きな低山が多数紹介されているんですが、いわゆるガイド本ではなく、安西さんの柔らかい感性がとっても素敵なエッセイです。イラストも多数あるし、ちょっとクスッと笑えるユルさが最高。本書の中で彼が書いている“低いからといってあなどるなかれ。人間も身長の高低がすべてではない。問題はその中身にあるのだ”という言葉、大好きです。 (櫻井卓)」
発売: 2024年11月29日
発行:ミューレン編集部
価格:1,320円 (税込)
ページ数:128P
Recommender:ライター 櫻井卓
1977年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスのライターに。
30過ぎてから旅にハマり、最近はアメリカを中心に海外の国立公園をハイキングするのが趣味。好きなジャンルは、旅、登山、アウトドア、歴史、自然、野生動物、インタビュー。
IG:@sxuxb.sakurai