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Endless water #02 北の大地が生み出すポテンシャル
2023.10.06

Endless water #02 北の大地が生み出すポテンシャル
by Nachos

ボードとカメラを片手に世界を旅するフォトグラファーNachosが、プロロングボーダーの田岡ナツミと旅した北海道のロードトリップを振り返るフォトコラム『Endless water』。

パンデミックの渦中、これまで目を向けてこなかった国内の魅力を再発見したNachosと田岡ナツミは、北海道を舞台にしたサーフドキュメンタリーの制作を決意する。この連載は、2023年の冬に行われた撮影のためのロードトリップの一片を、記録したものである。

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凍てつくような海と青空

寒い。それにしても寒い。同じ日本なのになぜこんなにも違うのか。昨夜はまだ見ぬ旅のあれこれを考えてワクワクして眠りについた。

朝、目を覚ますと外は時々みぞれ混じりの冷たい雨。寒さと戦いながらクルマの中では気圧配置図と波高を交互に睨めっこをする私たち。

「よし。やっぱり北を目指そう」

ちょっとやそっとじゃ辿り着かせてくれない北の大地。天気も気になるけれど、今から北の海に向かえば日没前には間に合うかも知れない。そう決めた私たちの行動は早かった。広大な平野の道をひたすら進んでいくうちに冷たい雨もすっかり上がり青空が広がっていた。周りの山々が壮大に見える一本道の終点までいけば海だ。

陽が傾きかけ空の色が少し優しい色になっていく。波を探しながら海沿いの道を走っていたその時、クリーンな水面に綺麗に割れる波が私たちの目の前に飛び込んできた。ガッツポーズをする私たち。自然のリズムに合わさった瞬間。高鳴る胸を抑え、海の様子を伺う。

晴れているとはいえ、オホーツクの海は恐ろしいほどに冷たい。あと少しで日が暮れる時間。

「よし、ここで入ろう」

何時間もかけやっと辿り着いたこの場所に入らない選択肢は無い。陽が暮れる前に。となつみが急いで着替え出す。とりあえず私はローカルの人々に配慮し様子を見ることに。

近年どんどん進化していくウエットスーツでも自然の過酷さは充分過ぎるほど伝わってくる状況。ドライスーツというウエットスーツを身にまとい、グローブ・ヘッドキャップをかぶってフル装備で海に向かう。夕日が輝いて海が黄金色に染まり、その中に浮かぶサーファーの姿を目に焼き付ける。これぞ日本の秘めたポテンシャルよ。

お風呂と食料問題

良い波に乗り海から上がってきたナツミと暗闇の中にポツンと光っていた温泉施設を見つけ駆け込んだ。

長時間の運転と寒さで強張った身体に暖かいお湯がじんわりと染み渡り私をほぐしていってくれる。「はぁぁぁぁ」と心から響く声がでた。私的にはこの日本のお風呂文化は世界に誇れるものだと思ってる。

そして身体も心も解された私たちに余韻を残さない速さで次の難関がやってきた。

そう、このあたりには何もない。温泉は閉館時間ギリギリに駆け込めたものの地図を見るとスーパーは1時間以上先にしかない。(しかももう閉店時間)ご飯屋さんもほぼない状態。あたりは真っ暗になり時間がどんどん過ぎていく。google mapでやってそうなお店を探し周り数件目。やっと開いている店を見つけて晩御飯にありつけた。

車内に戻り寝袋と寒さ対策のために準備した毛布にくるまる私たち。

「明日の朝も波は残るかな? どうかな?」

「それにしてもこの先、毎日波探しの他に食料問題・お風呂問題がプラスされるとは思ってもみなかったね。」なんて顔を見合わせながら笑い、眠りについた。

…とは言え、道の駅で野菜や手打ち蕎麦を買い、海沿いにある魚屋さんで新鮮な魚介類をゲットしたり、時には寒過ぎてガス缶が凍ってしまって使えなくなるアクシデントもあったりしたけれど、それでも楽しく美味しい時間を過ごした私たち。

あぁ北海道の食材のおいしさよ。万歳。

Nachos
“Beautiful Adventure”を自らのテーマに掲げ、ボードとカメラを片手に世界を旅するフォトグラファー。海、旅、女性にフォーカスした、ストーリーのある写真を撮る。また、動画撮影・編集、アートディレクション、執筆までマルチに活動している。
IG:@nachos.san

photo&text: Nachos cooperation: Moving Inn