column
世界遺産・知床半島へ
波を探し駆け回る日々の中、2日ほど天候と波のコンディションが悪い日々が続いた。
“北海道に来ているなら、この機会に知床半島を回ってみようよ”となつみが言う。
実は世界遺産検定を持っているなつみは、一生に一度は知床半島にいってみたいという密かな夢を抱いていたのだ。旅における出来事や予定は流れや気持ち的にもやるべきタイミングがあるんだと思う。今がこのタイミングだったのか。もしかしたらもうこんな機会は無いのかもしれない。
クルマを走らせ知床半島に入り、ウトロ側から半島の反対側の羅臼まで出ようとするが、雪が残る春先はまだ峠の道路が開通していないために来た道を戻り大回りすることになってしまった。でも私たちには時間がある。途中でゆっくり休憩できる大きなクルマのお家=バンもある。そして、道中に直火OKの車中泊スポットも見つけることが出来たなら結果オーライだ。
羅臼側に周り、どんどんクルマを走らせていると、道が行き止まりになり、もうこれ以上進めない日本の最東端に辿り着いた。
空にはどんよりとした暑い雲が覆い、油断していると飛ばされそうなくらいの強風の中、クルマを降り外に出た。すると粉雪が舞いはじめた。流石にこの季節はあまり人を見かけない。
その後、羅臼の道の駅でウニイクラ丼を食べ、食堂のおばさんに、この辺りは波が割れますか? サーフィンできますか? と問いかける。波が割れる? サーフィン? この辺りじゃ見たことない。店のおばさんたちが一瞬ざわついた。
そのうちの1人が、もうすこし南下した川の橋のあたりでサーフィンしている人を見かけたことがある。と話していたのでそのポイントを教えてもらい、帰り際にチェックした。
なるほど、うねりが入ればサーフィン出来そう。ここでも新しいポテンシャルをいくつか見つけた。
暗闇の晩餐で起きたハプニング
今夜の寝床は行きの道で見つけた海沿いにポツンとカフェがある広い敷地が今宵の車中泊スポット。“まだ車中泊スペースを作る途中なのだけど、ここなら直火もOKだから何でも好きなようにしていいよ”と、この場所でカフェを営みながら車中泊スポットの管理をしているオーナーさんが教えてくれた。
「今夜はお肉とワインとチーズで乾杯!」
数日前に川沿いで採ってきた行者ニンニクで醤油漬けを作り、通りがかりに見つけた小さな商店でお肉を買い、今夜の晩餐は2人ともやる気満々。
周りに明かりがほとんどない。というか何もない。目の前は海。真っ暗になってしまう前に急いで準備を始める。今夜も容赦無く吹き付ける寒風のおかげでお肉も野菜も焼いて1分も経たないうちに冷たくなってしまう特典付き。天気予報では明日は雪が降るかもと出ている。寒いわけだ。
そんなことを話していると急にみぞれが降ってきた。
慌てて料理を移動するも真っ暗で何も見えない。とりあえず料理を避難させようとテーブルを持ち上げた時に足が外れて、そのまま私たちの晩餐料理は見事に地面に流れ落ちていった。。。
オーナーさんがいるカフェに駆け込んだ。 大丈夫?と笑いながら迎え入れてくれる。
クラフトビールをいただきながら少しカフェで暖をとらせてもらい、おしゃべりはほどほどにクルマに戻り寝袋にくるまった。車中泊ってお酒も飲めてすぐ寝ることが出来るし最高!
「明日はどこまで行こう?波はどうかな?」
いろんな空と自然の循環
――夜が明ける頃、目が覚めた。
外に出て空を見ると、時折みぞれ混じりのどんよりとした空が広がる。
波と天気に振り回されながら無情にも時間はすぎていく。
どうしようか? と2人会議をしていたその時、ローカルの人が連絡をくれて一緒にサーフィンをすることになった。着いたばかりは “う〜ん”と思っていたけど、少し待機しているとどんどん綺麗な波が割れ始めだした。
よし!行こう!
私はカメラを。なつみはボードを持って海へと歩き出す。
気がついたら冷たい雨はいつの間にか上がり晴れ間を見せ、最後には綺麗な虹まで見せてくれた。
なつみもいい波に乗って満足そうな顔をして海から上がってきた。そのタイミングでまたシトシトと雨が降りはじめた。
いろんな空を見せてくれる北海道の自然の循環に合わせながら私たちの旅は進んでいく。
Nachos
“Beautiful Adventure”を自らのテーマに掲げ、ボードとカメラを片手に世界を旅するフォトグラファー。海、旅、女性にフォーカスした、ストーリーのある写真を撮る。また、動画撮影・編集、アートディレクション、執筆までマルチに活動している。
IG:@nachos.san
photo&text: Nachos cooperation: Moving Inn