クルマ+探検で富士山をもっと身近に感じるドライブルート by佐藤厚明
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クルマ+探検で富士山をもっと身近に感じるドライブルート by佐藤厚明

佐藤厚明 (ネイチャーガイド/〈ジュカの森〉アクティビティ責任者)
» Fuji Hokuroku , Yamanashiguide map

富士山登山や〈FUJI GATEWAY〉で行われるアクティビティ体験プログラムツアーなどでネイチャーガイドとして活動する佐藤厚明さん。佐藤さんがナビゲートするのは、富士山麓のユニークな自然を巡るルートだ。

なお、今回の取材は富士山麓に拠点を構える〈アミューズ〉がプロデュース・運営するレーベル、〈Under the Tree Club〉の協力のもとに実施された。〈Under the Tree Club〉では、さまざまなカルチャーを媒介に、都市と自然をシームレスにつなぐコンテンツを制作している。

地質から紐解く富士山麓の見所

「富士山麓ならではの地質や自然環境を観察できるポイントをピックアップして、ガイドの観点でドライブルートを考えてみました。地形・地質や動植物など自然の営みに触れることで、いつもと違った視点で森をみることができるはずです」
青木ヶ原樹海というと『怖い』と感じる人もいるかもしれないが、森の中のトレイルはよく整備されており、コンパスも効くので心配ご無用!

04-A青木ヶ原樹海

約1200年前にできた美しい原生林

864年に起きた貞観大噴火では、富士山の北西に位置する長尾山から流れ出た溶岩が富士山北麓一帯を焼き尽くしたが、その上に再生された森が青木ヶ原樹海だ。面積はおよそ3,000ヘクタール、ツガ、ヒノキといった常緑針葉樹を中心に、ミズナラ、フジザクラ、カエデなどの広葉樹が生い茂る。溶岩上にできた森は世界的にも珍しく、また、溶岩の上に堆積した土壌はたった十数センチしかないため樹木は地中深く根を張ることができず、一定上の高さに成長することができない。同じような高さの樹木が群生する様子がまるで海のように見えることから『青木ヶ原樹海』と言われるようになったそう。

「青木ヶ原樹海は、富士山の噴火の足跡を刻んだ、生きる歴史書といえるでしょう。溶岩によってリセットされた土地に、新たに森が生まれ、そこから少しずつ遷移していくさまを観察できます。溶岩が流れたところとそうでないところでは植生がまったく違うので、意識して歩いてみてください。また、溶岩が作りだした洞窟が点在しますが、玄武岩の洞窟は世界的にも珍しいんです。青木ヶ原樹海ならではの洞窟探検もおすすめです」

住所
〒401-0300 山梨県南都留郡富士河口湖町鳴沢

 

04-B紅葉台

クルマでアプローチできる絶景スポット

360度の大パノラマが広がる眺望スポット。富士山の裾野から広がる青木ヶ原樹海を一望できる。ここから眺める青木ヶ原の森は、まさに樹木の“海”のよう。

「青木ヶ原樹海には富士山の噴火の歴史が刻まれていると言いましたが、その様子を上から眺められるのが紅葉台。富士山のような大型の火山の場合、山腹からの噴火によって側面に小型の火山ができることがあります。寄生火山といいますが、富士山の山腹にはこのような寄生火山が70以上もあり、長尾山は代表的な寄生火山のひとつ。紅葉台からは寄生火山から噴火した様子もよくわかります」

住所
〒401-0332 山梨県南都留郡富士河口湖町西湖

 

04-C陣馬の滝

溶岩層のすき間から湧き出す水の神秘

富士山に降った雨や雪解け水は玄武岩で濾過されながら地下に浸みこみ、30年から50年かけて伏流する。五斗目川にかかる陣馬の滝を流れ落ちる水も、そんな富士山の伏流水だ。

「富士山麓の湧水の仕組みを垣間見ることができるスポットです。僕が生まれた頃に富士山に降った雨が、いまこうして滝となって流れていると思うと感慨深いですよね」

源頼朝が富士の巻狩りで近くに陣を張ったことから、陣馬の滝と呼ばれるようになったという逸話が残る。

住所
〒418-0108 静岡県富士宮市猪之頭

 

04-Dジュカの森 (富士すばるランド内)

子どもたちの力を森が引き出してくれる

〈富士すばるランド〉園内にある、子どもたちのための学びの森。佐藤さんが体験型教育プログラムの開発および実施を担っている。ここで体験できるのは、たとえば夜の森の散策や、自分たちだけの秘密基地づくり、倒木を丸太や薪に加工して火をおこすこと。日常生活ではなかなか味わえない冒険により、自然科学や環境の知識、いざというときに役立つサバイバルスキルなどを楽しく身につけることができる。

住所
〒401-0301 山梨県南都留郡富士河口湖町船津 字剣丸尾6663-1 富士すばるランド内
IG
@juka_no_mori
URL
jukanomori.com

佐藤厚明 (さとう・こうめい)
山梨県富士吉田市出身。アウトドア好きの父の影響で、幼い頃から野山を駆けめぐって育つ。25歳のとき、キャンプ場スタッフとして働きながらネイチャーガイドに転職。2019年、英語のスキルアップのためニュージーランドへ。専門は子ども向けの自然教育や自然体験で、帰国後は〈ジュカの森〉を中心に活動中。そのほか、夏の富士山登山や富士山麓のガイドを務める。鉄砲の免許をもつ猟師の顔ももつ。
IG:@comee2236
https://jukanomori.com

Photo by Kenichi Muramatsu / Text by Ryoko Kuraishi / Edit by Mariko Ono / Cooperation: AMUSE ADVENTURE