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#17 日常の延長にある自然、その入り口に。新感覚のキャンプフィールド『ist』の魅力〈前編〉
2025.09.05

#17 日常の延長にある自然、その入り口に。新感覚のキャンプフィールド『ist』の魅力〈前編〉
by 興泰明

noru journalがおくるPodcast番組『窓がうごく』では、旅すること、移動することが暮らしに根付いている人々をゲストに迎え、さまざまなお話を伺います。
今回は、“自然とともにある”を理念に、暮らしと自然がシームレスにつながる場所を目指しているキャンプフィールド『ist』の事業責任者・興梠泰明さんをゲストにお招きしています。西に八ヶ岳を擁する長野県川上村の青々しく木々が茂る谷あいにある『ist -Aokinodara』に家族と訪れての収録。独自の理念のもと、従来のキャンプ場とは違ったアプローチをしている『ist』の魅力について、木々に囲まれながら、蝉の鳴き声をBGMに語り合いました。

注目のキャンプフィールド『ist』を形作る上でやってきた、足し算引き算とは?

ここでは音声コンテンをまるッとテキスト化してお送りしていきます。


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大切にしたのは“気軽さ”と“日常の営み”があること

村松:さて、本日のゲストは、『ist(イスト)』の事業責任者である、興梠泰明(こうろきやすあき)さんにお越しいただきました。興梠さんのお話を2週にわたって隔週更新でお届けしていきます。興梠さんはみんなからジョンくんって呼ばれていますので、今日は親しみも込めて、僕もジョンくんと呼ばせていただきます。ではでは、よろしくお願いします。

興梠:よろしくお願いします。

村松:今日は実は外で収録しています。ist事業責任者と言いましたけども、istをご存じない方もいると思いますので、簡単に僕から先に紹介させてもらいます。長野県の八ヶ岳エリアにあるキャンプフィールドで、広大な土地に贅沢に区切られたキャンプサイトと、レセプションとカフェバーが併設したラウンジがあって、さらに『Hut(ハット)』と呼ばれるキッチン付きの宿泊棟が点在しています。キャンプ場とも言い切れない、新しい場のあり方となっております。

村松:そんなistの事業責任者であるジョンくんに、今日は来ていただいておりますので、まずはプロフィールを簡単に紹介します。

滋賀県出身。幼少期から自然に囲まれて育ち、学生時代はアジアを中心に国内外を旅して2017年、株式会社Backpackers’ Japanに入社。カンボジアでのホテル事業を経験したのち、2021年より、長野県川上村の旧青木の平キャンプ場の運営代行を開始。2022年9月にistの事業責任者として『ist – Aokinodaira Field』を開始。2024年、新潟県の佐渡島、『ist – Sado』をオープン。istでは“自然とともにある”を理念に、暮らしと自然がシームレスにつながる場所を目指している。ご自身の趣味はサーフィンと渓流釣り、トレイルランニング。

ジョン君は普段、このistをどんなふうに皆さんに紹介しているんですか?

興梠:そうですね。今ご紹介いただいた通りで、istっていうのは、八ヶ岳の麓で『ist – Aokinodaira Field』と、新潟県の佐渡島で『ist – Sado』、この2拠点をキャンプ場として運営している状況です。なので、ひとくくりに言うと、キャンプ場っていう紹介にはなるし、そういう表現の方法になってしまうんですけど。従来のキャンプ場と少し違ったコンテンツやモノを用意した形態として運営しています。

興梠:代表的なのが受付を兼ね備えたカフェバーラウンジが場内の中央にあったり。あとは『Hut』って呼んでいる小屋。それを宿泊棟としてゲストに提供している。かつ、宿泊以外にも森の中に気軽に入れるような入り口として、イベントを定期的にやったりとか。年に1回『Weave』っていうフェスをやっています。キャンパーであったり、この森の中で泊まりたいっていう需要以外のところも拾えるようなコンテンツを幅広く設けながら、身近な自然を気軽に感じてもらえるような場作りっていうものをやっているのが『ist』ですかね。


引用:ist – Aokinodaira Field

村松:やっぱり一番夏が混みますか?

興梠:そうですね。今絶賛繁忙期ですね。8月9月、10月もシーズンになるので、この3ヶ月が1年の中でも一番お客さんが多い時期ですね。

村松:都心からのお客さんがやっぱ多い?

興梠:そうですね。東京、あとは名古屋もちょうど2時間半、3時間ぐらい来られる距離感なので、名古屋、東京、県内のお客さんがかなり多いかなってイメージです。

村松:このistにまつわる記事を今回色々と拝見してきたんですけど、“日常の延長線上にある自然を身近に感じてもらいたい”っていうようなフレーズが目に留まりました。言い換えると、自分の生活に持ち帰ってもらうっていうことにも繋がるのかなと思ったんですけど。非日常じゃなくて、日常の延長として自然を感じてもらうことを目指す上での仕掛けだったり、『Hut』と呼ばれる小屋の空間作りに生かしていることを、ちょっと聞いてみたいです。

興梠:そうですね。キャンプ場として運営していると、カフェバーラウンジなんていらないよねってなると思っていて。経済的なところも考えたら、そこの人件費を払うよりかは、ただキャンプ場として最低限の人数で回してる方が合理的なんですよね。

村松:うん、確かに(笑)。

興梠:キャンパーさん以外でも一般の方が利用できるように、カフェバーラウンジとして開いている要素としては、コーヒーだったり、ビール、食事って、日常の中のひとつの営みのものだと思っていて。そういったものを森の中、川沿いでいただくことで感じる自然の美しさだったり、心地よさみたいなところがあるんじゃないかなっていうところが、まずひとつあります。

あと僕自身もサーフィンをやったり、渓流釣りしたり、トレランやったり、かなり自然の中で遊ぶことが多いんです。でも、誰かに森の中や川、海行こうよって誘ったとしても、やっぱりどうしても連想するのはアクティビティ。山登りだったり、走るとか、サーフィンとなると道具が必要になるじゃないですか。少し専門性があるものになる。そういうものじゃなくて、もっと気軽に森の中や山の中に誘えるものってないかなと思った時に、ラウンジという空間があることで、別にアクティビティに精通しない人でも、コーヒーだったり、ビールを飲みに行こうよ、というふうに気軽に来れるんじゃないかなって思って。それで、あのラウンジを設けました。

興梠:Hutは、Aokinodairaには今7棟の宿泊棟があって、それぞれデザインも平米数も異なります。なるべく2、30平米の小さな小屋として宿泊棟を建てようっていう計画からスタートしていて、大工さん達とすべてひとつひとつ丁寧に作ってきたもの。どうしても建物っていろんな要素を中に入れると、どんどん広くなりがちなんですけど、ここにおいては別にそんなに広くなくてもいいよなと思っていて。2、30平米の小さな空間だからこそ、外に広がる自然のよさみたいなものが室内に取り込まれるし、お客さん自身が必然と窓の外に意識や目を向けるのかなと思っています。そういうところを工夫して作ってきたものがHutです。これって日常の中にもあるなと思っていて、窓を開けると風が入ってくるし、その風で揺らめくカーテンがある。なので、なるべくここの自然と普段の日常っていうものに境界線をつくらずに、いかに日常の中にある自然を心地よく感じてもらえるかっていうものをベースにものづくりだったり、コンテンツを用意している感じです。

村松:かつての古き良きキャンプ場には、コテージっていうものがあるけど、ちょっとコテージとこのistのHutはなんか似て非なるものだよね。

興梠:そうですね。僕もキャンプをやってきたなかででコテージにも宿泊したことがあるんですけど、その時に感じたものをここのHutに反映しています。まず、多くのコテージって、かなり空間として広い。1泊2日で、こんなに広すぎるスペース要らないなって、個人的には思ったんです。この空間の中でどう自分が腰を落ち着かせてゆっくりするか、みたいな想像があまり膨らまないから。あとは、せっかく素敵なコテージに泊まっているのに、寝る時はあの薄いキャンプのマットと寝袋か〜っていう、ちょっと残念な気持ちにもなったりして。だったら、ここで作るHutに関しては、僕たちが普段の生活で必要なものが最低限揃った状態で宿泊していただいて、その窓の先に広がる自然はいつもと違うような見え方になるようにしたい。その土地の地形に合わせた建物の角度の位置を決めたり、それに合った窓の切り取り方みたいなものを意識して、場内のいろんな場所に宿泊棟が点在しているような作り方にしました。

村松:なるほど、面白いですね。こういう自然の中に、キャンプだったりで例えば都市生活者が訪れた時って、当然日常とは違うから非日常で、その非日常を楽しんでまた日常に戻るっていうのが今もあるし、まあ、昔もあった形で。今ジョン君が言ってくれたような istがアプローチしているところって、なんかすごく似ているようでさじ加減が違うっていうか。

非日常に行くけど、その中に少し日常を残しておく、みたいな。その話すごく面白いなと思いつつ、今回の話をする上でもいろいろ過去のistの記事で、大工の小竹将通さんとジョン君の対談でも、Hutを作っていくコミュニケーションの中で、“より小さく不便なままを留めておく“っていう話がありました。まさに今のコテージの話に通づる。より小さく最小限に留めながらも、その中に日常も残していかなきゃいけないから、寝床はマットレスと寝袋ではなくて、逆に質の高い布団で、みたいな。そこのさじ加減が空間作りとか、ものづくりとか、場作りでもかなり絶妙なバランスで作っているんだろうなと。それはすごく面白いなと思ったし、多分その絶妙なバランスがistの魅力を作っているんだろうなと思いました。

興梠:そうですね。

村松:そのジョン君と小竹さんの対談の中で、建築家の中村好文さんの小屋作りにすごくインスピレーションがあったみたいな話があったと思うんですけど。僕もいい機会だから、少し中村さんの本を読み直して今日来たんです。彼は“小屋が人の営みの最小単位”という話をしていて、限られた空間の中で、自分にとっての本当に大切なものや本質的なものが見つめ直せる、それが小屋、みたいな話をしていたのが印象的で。小竹さんとジョン君が作ってるハットもそれに通ずるし、noru journal的に言うと、多分バンライフとかもすごくそれに近い。

興梠:確かにそうですね。

村松:日常の延長で離れていった時に、限られたミニマムな空間の中で、自分や一緒に行った人たちとの本質を見つめ直せる場所、みたいな。なんかすごいその辺が通じていて面白かったな、と思ったりしました。Hutのこだわる所とマイナスする所と、そのさじ加減じゃないですか。

興梠:うん、うん。そうですね。足し算すれば引き算もあるしっていう。

村松:ここは譲らないけど、何をやらないみたいなことだと思うんですけど。今istにも7棟Hutがあって、どういう綱引きで作っていったのかっていうのは聞けたらいいなと思います。

興梠:そうですね。それぞれ設計もデザインも違う。場所も、いろんな場所に建っている。同じ建物を同じ場所で量産するっていうことができないプロダクトなんですよね。で、それこそ経済的なことを考えたら、同じエリアに同じ建物を5棟密集して建てた方が、絶対的にコストパフォーマンスはいいんですよね。インフラもそこにしか伸ばさなくていいし、建物の設計デザインにかかる費用も1棟で済むじゃないですか。でも僕たちがやっているのって本当、それの全く逆で。もう全部非合理的なやり方でやっていて。

なんでそのやり方かっていうと、『ist – Aokinodaira』の土地って、大体約7ヘクタール。6万9000平米っていう、もう本当に広い敷地の中でやっているんです。その広い敷地の中に建物が密集してるって、やっぱちょっと気持ち悪いなって僕は思っていて。川沿いにずっと縦長で続く谷間の場所に、場内が位置しているんですけど、散歩してるといろんなところでいろんな景色が見られるんです。時間帯によっても違った景色が見られるし、いろんな自然の移ろいを感じる。そういう美しい景色がこんなにも広がっているのに、同じエリアに建物を作るのってやっぱりもったいない。


引用:ist – Aokinodaira Field

村松:うん、うん。

興梠:だったら分散させた方がいいよねっていうので、Hutは全ていろんな場所に立っています。そのひとつひとつを大工さんたちと一から考えて作っていく。1棟作り終わったらまた一から建てる場所を決め、どの方角に建物を振るか、そこから見える景色に合わせて窓の位置を決める。そういったことを、実際に現場に立って、想像しながら、会話しながら1棟ずつ作ってきたんですよね。CGとかそういうパースは一切なくて、簡単な図面と棟梁の小竹さんのスケッチで作るやり方をずっとやってきました。

なので、この足し算引き算、何をやって何をやらないか、みたいな話がそれぞれのHutに本当に色んなエピソードがあるなと思っているんですけど、まあひとつ。『Hut』は今6棟あって、プラス2棟『Nutshell(ナッツシェル)』っていう上の線路沿いにある三角屋根の小屋があります。あれは小竹さんがずっと作りたかった小屋で、長年の構想が実現したのがあの2棟の『Nutshell』なんです。10平米の限りなく山小屋に近いような宿泊スタイルで、1階にリビングがあって吹き抜け、ロフトに寝室があるような作りになっています。ロフトの方は山小屋スタイルなんで、当初は、キャンプのマットと寝袋だけでいいっていう計画で進んでたんですけど、Hutを作っていく中で僕の解像度も高くなってきたのと、istとして伝えたい体験、思想みたいなところを考えると、やっぱりキャンプのマットと寝袋じゃなくて、ちゃんとした寝具を用意したいと。やっぱり普段の生活をそのままそこで営んでもらいたい。そうすることで、窓の先に映る自然をよりよく感じられると思っているので。

そういう建築面のハード的なところでのやるやらないもあるし、完成してからオペレーションを回していく中でのソフト面でのやるやらないも結構あります。例えば、この焚き火ひとつ取っても。焚き火したことある人からすると、火をつけるのって簡単なことですよね。ある程度焚き付けができて、風の通しを考慮して薪をくべれば火がつく。けど、それを知らない人って結構いるんです。買っていただいた薪がチェックアウトの時に綺麗なまま残ってるんですよね。頑張って火をつけたなっていう痕跡はあるけれど、薪に火つかなかった。その状態がきれいに残っていることがある。


引用:ist – Aokinodaira Field/Nutshell

村松:なるほど(笑) あ~、ありそう、ありそう。

興梠:それがかなり続いた時があったんです。で、スタッフの中では、せっかくこういう場所に来たなら火をつけて焚き火まで楽しんでもらいたいから、じゃあガスバーナーを設置しようかみたいな話とかもあるんです。とはいえ、なんか焚き火におけるガスバーナーって、僕はチートだなと思っていて。

村松:うん(笑)。

興梠:火をつけられる人は別に使ってもいいと思うんですけど、火をつけられない人がガスバーナーを使っちゃうと、それまでの過程、工程を1回スキップして楽してるんで。ここの過程にやっぱり良さがあるし、いろんな学びもあるじゃないですか。ひとつ、それは啓蒙活動的なものかな。なので、やっぱガスバーナーはistとしては絶対にHutには設置したくないと。火をつける体験に意味があるし、価値がある。つかなかったら、なんでつかなかったんだろうって自分の頭で考えて調べてやると思うんですよね。そこのステップが絶対的に必要だと思うので、オペレーションの中で言うと、そういうスタッフ同士の議論はありますね。

村松:へー、面白いな。そういう細かな話が至るところであるんでしょうね。

興梠:そうですね。

村松:宿泊施設ってなるとどうしても快適であればあるほどみんなに喜ばれるっていう、割とそういう価値観で進んできていると思うので、そこでマイナスしていくっていうことがね。

興梠:そうですね。なんか“足るを知る”だと思うんですよ。今あるもので満足してもらいたいというか。Hutに関しては本当に暮らしを営む中での必要最低限のアイテムしか取り揃えてない。ここに泊まっていただくと分かると思うんですけど、これだけでいいよね、この広さで十分だよねって感じてもらえると思うんです。それこそが“足るを知る”だと思っています。生きていく中で、暮らしていく中で、そんなに物って必要ないんだよっていう。物が少ないから豊かとかそういう話じゃなくて、そういう生き方もあるという提案ができるような場所でもあるのかなって思っています。

「営巣本能」をくすぐられる秘密基地
『Hut -glow-』で宿泊してみて

村松:今日の収録は、istの中にある『Hut -glow-(グロー)』っていう新しくできたばかりのHutのデッキで、後編は、この中で収録しようと思っているんですけど。昨日から僕は家族とこのglowに滞在させてもらって、一夜明けて朝から今収録をしています。glowはistの中でも唯一浴槽があって、サウナも付いていて、少しプラスアルファの設備が多いですよね。

興梠:そうですね。

村松:せっかく一晩家族と過ごしたんで、感想を言いますね。まず、すごい、秘密基地みたいな建物で、子どもも入っていくと、ワーって喜んではしゃいでました。入り組んでいて不思議な造りでした。例えば今、僕らがいるこのデッキで火をおこしていると、すぐ後ろにリビングがあって、窓越しで会話できるぐらいの数10センチの距離になっていたり、とか。サウナがあって、浴槽があって、その浴槽を抜けると外気浴できる水風呂がある、だとか。通常サウナしていると子どもとコミュニケーションするって、一連の中であんまりないんですけど、そういう仕掛けによって自分がサウナ中に、子ども達がお風呂入っててちょっと会話が生まれたり。なんか至るところの境界線がすごい希薄で、まさに秘密基地みたいで、各所で誰かとコミュニケーションができる。

村松:1階と2階も、風通しのためなんでしょうけど、隙間があるじゃないですか。寝室のところに屋根裏部屋みたいな。そこでちょっと会話が生まれたりとか、ワクワクするような場所がすごい、意図的なのか、空間の必然なのか、仕込まれている感じなのでそれを感じましたね。

村松:それこそ、先ほども話した建築家の中村さんが書籍の中で、「営巣本能」について書かれていて。営巣って巣を営む本能。男の子は木の上や森の中に秘密基地を作るし、女の子は人形の家でおままごとの延長で家を作る、みたいな。その話自体は中村さんの話じゃなくて、また違う海外の方の言葉ではあったけれど、なんかそういう小屋作りのベースには人間の営巣本能みたいなのがあって、子どもの頃にはあったワクワクする感覚とか、秘密基地とか段ボールで家をつくるとか、そういう延長に小屋作りがあるって彼は話していて。自覚したことはなかったけど、そんな子ども時代を過ごしていたからすごい共感したし、こういうHutみたいなところに来て、特に今回のglowみたいな秘密基地のような環境で家族と過ごすと、なんかめちゃめちゃその営巣本能をくすぐられたっていうか。

興梠:本当ですか(笑)。

村松:確かに、なんかワクワクする感じは小屋とかこういう中にすごい含まれていて。この大自然の手付かずの中にこういう小屋があって、そこでのんびり過ごすっていうのは、すごく唯一無二の体験なんだろうなと思いながら過ごさせてもらいました。ちょっと、言葉にしたことないことを言葉にしてるから。だらだら話しましたけど……。すごい、よかった。

興梠:ありがとうございます(笑)。

(滞在中、子どもたちがインスタントカメラで撮影した雑感写真たち)

興梠:いや、嬉しいなぁ。そういう感想って、お客さんから直に聞くことって、まあないので、僕ら。だから嬉しいですね。そういう見方、過ごし方があるんだっていう。

村松:昨日もさ、チェックインして森を案内してもらって、ラウンジで生ビールでも飲もうみたいな話をして別れたけど、なんかやっぱ夕暮れすごい気持ちいいじゃんHutの中が。だから、全然出れなかったんですよね(笑)。

興梠:ですよね(笑)。分かります。しかも昨日のね、西日も綺麗でしたもんね。

村松:これ出たらもったいないな、みたいな(笑)。時間の流れも違うし、もちろん森の中だからっていうのもあるんだろうけど、家族で来たけれど、いつもと違う環境にポンって置かれるとみんなそれぞれのコミュニケーションとか時間の使い方も変わるから、そういうのもいいですよ。

興梠:うん、うん、うん。

村松:どうですか、『Hut -glow-』は始まったばかりですけど、どんなところにこだわって作ったんですか?

興梠:いや〜それを話すと多分結構長くなっちゃいますね。これが5棟目のHutなんですけど、2年越しの新しい棟が、5棟目のこの『Hut -glow-』で。これまでの4棟のHutの思想的なものを継承しつつも、これまでのHutでできなかったことを全部集約して反映させたものなのかな。

村松:へ〜。

興梠: それまで4棟のHut、Nutshellを2棟作って、それ以外にもラウンジやトイレ炊事場のリノベーション、新しいシャワー棟を建てたり、と大工さんたちとは2、3年の付き合いになってました。膨大な工事の量と長い時間、期間かけて大工さんたちとやってきたので、僕たちのコミュニケーションの質量も蓄積された中での、この『Hut -glow-』っていうのと、僕自身、その2年の間でいろんな土地を訪れて、いろんなホテルを泊まり歩いて、いろんな景色いろんな人と出会ってきました。自分の中でこれがいい! これだったらistに落とし込める、これをistで作ることによって、より暮らしと自然の境界をなくしていけるものになるだろうな、みたいなものの解像度も高くなっていった。

という中で、設計当初からも施工をしながらも、大工さんたちとずっといろんな話をしながら進めていきました。ここの壁の色をどうするか、ここの階段の角をどうするかとか、そういう本当細かいところを2、3ヶ月話しながらやってきたので、こだわったところは本当にたくさんあります。建築以外にも今回はやっぱり内装のデザイン。什器だったり、食器だったりカーテン。これまでのHutももちろんこだわってきたんですけど、よりアップグレードされたのかなと思ってます。

村松:このカーテンも特注って言ってましたけど、

興梠:そうです。オーダーメイドで作っていただきました。

村松:どういうところにこだわって特注するんですか? カーテンって。

興梠:そうですよね(笑)。まず、今までのHutってカーテンを一切つけてこなかったんです、一貫して。ていうのも当時の自分は窓枠いっぱいに外の景色を美しく切り取りたいっていう意志がすごく強かったんですよ。で、カーテンをつけることによって、この枠の両サイドにカーテンの束ができるじゃないですか。それすらも排除したかったんです(笑)。

村松:分かる、分かる。その感覚は分かります。

興梠:でも、半年前に僕、神奈川県の葉山の方に引っ越したんです。海の近くにはあるんですけど山の中腹ぐらいに家が建っていて、海の南風が山の上を吹き抜ける同線に建物があるので、ちょうどいい風が入ってくるんですよね。その風に揺らぐカーテンがめちゃくちゃ綺麗だなって。そのカーテン越しに見る外の景色も、時間帯によっていろんな見え方をする。なんかそれもいいなと思って、じゃあ、次のHutでカーテンをつけたら、どういう体験を提供できるんだろうっていうところから想像が膨らんだんです。

村松:なるほど。

興梠:もちろんカーテンなしで窓枠いっぱいに広がる自然もそれはそれで綺麗なんですけどね。風の動きを可視化できるのって、カーテンのひとつの特徴だなっていうのと、今回の glowのカーテンって淡いピンクと淡い黄色がリビング側のカーテンで、一方で寝室ってちょっと薄いブルーの色味なんです。

村松:そうだね、確かにいま見ても違うね。

興梠:リビング側は2枚のカーテンになっていて、それぞれのカーテンだけでもやっぱり外の景色、色味って全部変わるんですよね。ちょうど西日が入ってくる時間とか、本当にカーテン自体が少し輝くような時間もあったりして、なんかそれすらも美しい。
これを作ってもらったのは京都の方で、ご縁があって紹介していただいて。最初ご依頼した時は会ったことなかったんですけど、Hutでどういうカーテンを作りたくて、どういう体験を提供したいか、みたいなものをZoomでずっと話して、この色をご提案していただいて、設置しているっていう背景があります。

村松:へ〜、確かに。風は見えないですからね。

興梠:風は見えないですね(笑)。葉の揺らぎだったり、このカーテンの揺らぎで、「あ、風が吹いてるな」っていうものが可視化できますよね。そこにいろんな想像が膨らむと思っていて。なんかそういうきっかけを作りたいな。

村松:ist自体が目指している“日常の延長線上で自然を感じてもらいたい”っていう意味では、このglowにはお風呂もあるし、サウナは日常にないけど、唯一カーテンがあったり、日常の暮らしに極限まで近づけたHut、みたいな考え方も出来そう。あんまりキャンプや、外で過ごすってことがない人たちにこそ、まず1発目で来てもらえると、いい場所かもしれないですね。

興梠:そうですね。キャンプが苦手な人でもHutであれば行ける! っていう人結構いるので。キャンプしてみようとか、じゃあ次登山してみよう、みたいな入り口としてこのHutが機能すると僕たちとしてはすごく嬉しいなと思っています。

村松:快適にしようと思えば、いくらでも快適にできるもんね。

興梠:できます。それこそ、そこは本当引き算で。物を置けば置くほど、どうしてもやっぱり意識が中に向くと僕は思っていて。

村松:ああ、そうか、そうか。

興梠:僕はどうしてもやっぱり意識をこの外に向けていただきたい。

村松:うん、窓の外にね。

興梠:はい。だってこんなに綺麗な景色が広がっているのに、ずっと携帯を見ているのも惜しいなと思う。なので、中のものは本当に必要最低限なもので、かつ外に意識が向くような壁の色味だったり、窓の方角だったり、みたいなものを計算して作っています。

村松:あとはタオルも良かったし、やっぱ食器も良かった。セレクトもね、やっぱすごいこだわっているから。

興梠:そうですね。今回本当にこだわりました。

村松:うん、それもすごい良かった。

興梠:ポンチョ着ました?

村松:あ〜妻は着てた。

興梠:ポンチョの着心地半端ないです。

村松:そうなんだ(笑)。

興梠:まじで(笑)。肌触り半端ないです。

村松:それは次回だな。

興梠:(笑)。

村松:はい、さて、そろそろお時間なので、今週はここまで。この話の続きは2週間後の金曜日にお届けします。今日の話を簡単にまとめると、istの場づくりだとか、小屋作りというのが、一見パッと見気づけないんですけど、今日ジョン君の話を聞くと、改めて日常の延長線上にどう、この自然や、環境を感じてもらえるかっていうのが、至るところにこだわり抜いて設計されています。もちろんキャンプで来てくれた方も感じ取れると思いますし、 Hutに泊まっていただくと、よりその仕掛けだとか、こだわりを感じられるかなとも思いましたので、ぜひ今日の話を聞いて面白いなって思った方は、〈ist – Aokinodaira Field〉に一回アクセスしてみてください。
ではでは、ありがとうございました!

興梠:ありがとうございました!

興梠泰明 (こうろき やすあき)
滋賀県出身。幼少期から自然に囲まれて育ち、学生時代はアジアを中心に国内外を旅する。2017年、株式会社Backpackers’ Japan入社。カンボジアでのホテル立ち上げを経験したのち、2021年より長野県川上村の旧青木の平キャンプ場の運営代行を開始、2022年9月に〈ist〉の事業責任者として〈ist - Aokinodaira Field〉を開始。2024年、新潟県の佐渡島で〈ist - Sado〉をオープン。istでは“自然とともにある”を理念に、暮らしと自然がシームレスにつながる場所を目指している。ご自身の趣味はサーフィンと渓流釣り、トレイルランニング。
IG:@ysakjohn


photo by akari kuramoto / Moe Kurita