column
結果ではなく、過程にフォーカスすると
移動そのものが“ストーリー”になる
村松:さて、本日のゲストは、プロデューサーの渡邊桂志さんにお越しいただきました。 桂志さんとは、2週にわたって隔週更新でお届けしていきます。 よろしくお願いします。
渡邊:お願いします。
村松:まず、渡辺桂志さんのプロフィールをご紹介します。 1995年立教大学卒業後、株式会社伊勢丹に入社。 2003年〈トランジットジェネラルオフィス〉に参画し、ケータリング事業を立ち上げる。 2008年には同社にてイベントやクリエイティブの企画を行うトランジットクルーを設立し、代表取締役に。2020年、〈株式会社ongo〉を設立。 現在は、ランドクルーザーハイエースのトップディーラーである〈FLEX〉の新規事業である、〈Moving Inn〉のプロデューサーを務めるほか、都市と自然をつなぐさまざまなプロジェクトの開発を行っている。というプロフィールでございます。
渡邊:はい。
村松:そんな桂志さんに今日お越しいただいたのは理由がありまして。先日、長野県の川上村の〈ist -Aokinodara〉というキャンプ場を舞台に、noru journalのコミュニティイベント「NEST CARAVAN 2025」を行いました。

STORY|noru journal初の読者参加型イベント「NEST CARAVAN 2025」アフターレポート
前編では、その会を振り返れたらと思います。実はもともと桂志さんは、2年前に開催した「NEST CARAVAN」立ち上げの相談役みたいなことでもありました。今回で言うと、協賛もいただいたMoving Innさんのプロデューサーという立場でもあったので、トークショーにも登壇いただいたりしました。プロフィールでもちょっとご紹介したMoving Innについて、簡単に説明いただいていいですか?
渡邊:はい。Moving Innは、FLEXの新規事業として、キャンピングカーとトレーラーハウスを使って原生自然に近い自然の中で、より快適に過ごせることを提案している宿泊サービス・事業になります。キャンピングカーやトレーラーハウス、車輪が付いているものを使うことによって、建物が建てられない場所にいろいろな設備を据える。それによって快適に過ごしながら、自然を心置きなく体験できるというサービスを提供しています。
村松:僕も一度、北海道にお邪魔して1泊させてもらったことがありますけれど、これはコロナ後に参画したんですか?
渡邊:そうですね、自分が参画したのは、2020年の10月からなので、コロナが始まった年の半年後。コロナが始まったのが多分、2020年の春ぐらいからだんだん、みたいな形だったと思うので、その半年後ぐらいの秋から参画しました。FLEXがもともと、クルマを売るだけではなくて、クルマを持つ理由や持った後の楽しみ方、みたいなことを提供するために、自分が参画する約1年前の2019年ぐらいから、事業としてはプロジェクトベースで始まっていたものになりますね。
村松:うん。今、結構全国的にコンテナホテル的なものが多いですけど、割と走りではあったんですかね。時期的には。
渡邊:多分スタートの時期で言ったら、かなり走りだったと思います。トレーラーを使った、そういう設備サービスを行うっていうのは。
村松:Moving Innさんとnoru journalの繋がりなんですけど、もともと僕が20代後半の頃から、桂志さんと繋がりがあって始まったんです。年に1回、Moving Innのバンをクリエイターの方々に数週間乗っていただいて、北海道を自由に車中泊で旅してもらう。そこで切り取った写真や映像を、noruの方で連載として文章と共にお届けするというのを2023年から毎年やってきました。今回、「NEST CARAVAN 2025」のディナーの時間に、その旅の当事者たちに登壇いただいて、スライドや映像を見ながら、トークしていただきましたね。オンラインで発信してきたものを、リアルな場でまとめるっていうのは、今まであんまりなかったので、よかったなっていう感じでした。桂志さんは結果、今回の「NEST CARAVAN 2025」は登壇もしつつ、楽しみつつ、2日間しっかり参加いただきましたが、どうでした?


渡邊:なんか、すごく普通に言えば、すごく楽しかった。登壇した人たちは、もともと知っている人たちばかりだったので、あれですけど。今回参加してくれた方々も同じようなライフスタイル、同じような思考、そういったものを持った人たちが結果的に集まって、自然の中でみんなでご飯を食べて喋って。自分は朝、何人かで走ったりもしたんですけど、こういったことができたっていうのがすごく、改めて、ライフスタイルの楽しさみたいなものを感じられる2日間になったなというふうに思いました。
村松:翌朝走ってましたね、そういえば。
渡邊:そうなんですよ。今回のイベントの前に違う案件で、長野で出会ったご夫婦がたまたま今回の参加者の中にいて。その2人もトレイルランをやっていて、自分もトレイルランをやるので、せっかくだったら朝一緒に走ろうということで、10kmほど走りました。
村松:結構走りましたね。
渡邊:結構走りました (笑)。自分が思っていたより走りました(笑)。

村松:そうなんだ。10km走ってたんだ〜…。じゃあその後シャワー浴びたんですか?
渡邊:うん、帰ってきて。istの借りて。川上村のキャベツ畑?レタス畑?の中を走ってすごく気持ちよかった。
村松:今回はちょっとアクティビティまでは入れられる余裕がなく、参加いただいた10組30名近い参加者の皆さんは、istのキャンプ場のフィールドの中で、いろいろ楽しんでもらったんですけど。来年以降、ローカルを知るという意味では、地域のフィールドをアクティビティを通して楽しんでもらえたらなと思うので、今回、自然発生的にそれをやっていた方がいたのもいいですね。 10kmか〜。なんか、前日チラっと明日の朝、走るよって言ってたじゃないですか。僕、道具ないからやめときますって話でしたけど、あっても、あの翌日の朝に10kmは辛そうだな。
渡邊:(笑)。まあ、そこそこ。さっきも言ったけど、思ったよりは走りました。何回も言いますけど(笑)。
村松:(笑)。僕は今回印象深かったのは、ランチとディナーを振る舞ってくれた山梨県の北杜市を中心に活動されている〈四季とジビエ 山祇〉さんのごはんとトークでした。これまで食べてきたジビエの中でも、抜群に食べやすくて美味しかったのもあるんですけど、代表の田邉真也さんに話していただいたトークショーの内容が、結構印象深くて。初めて罠にかけたシカの命を絶つ時に、森で何時間も躊躇してしまったっていう話もリアルで。割と参加した皆さんもいろんなものを持ち帰ってくれたのかな? とは思いますけど。どうでした?



渡邊:そうですね。自分も今、東京と山梨で二拠点をしていて。山梨の富士北麓、山中湖のほとりの山の上に半分住んでるんですけど、そこでいろいろな人たちと知り合うんです。もちろんその中に猟師もいて、ジビエの料理人もいて。その猟師の人に狩りの様子を見させてもらったりとかもしているので。今回の件に関して、お話としては、自分自身も体験しているような内容ではあったんですけど。なんていうのかな、ただただ移動して、ショートタイムでその場にとどまっていると、なかなかそこまで深く知れないと思う。

そういう意味では、これからの活動で自分もやりたいなと思っているのは、ただただショートタイムで、移動しながら土地を体験、体感していくのも大事なんだけど、その体験・体感度合いをどう深くできるか。イベントなり何か施設なり、ツアーなりで改めて企画していきたいなっていうふうに感じました。思っていたこともあるのでそれを改めて、こういうことだよなっていうものを、実感できた夜だったなとも思いますね。
村松:うん。確かに、あそこまで時間をつくって話してもらって、みんなにしっかり聞いてもらわないと知れないこととか、踏み込めない領域の話もあると思いました。そういう意味では、山祇さんの話はすごくローカルのリアルな状況と、ご自身の体験を披露していただいた上で、料理も作っていただけたのはよかったなと思いますね。
そのうち桂志さん罠猟とか資格取りそうじゃないですか?
渡邊:いや、なんかね。自分はもう血がダメなんで。奥さんの出産にも立ち会えなかったぐらい血がダメなんで。ちょっとそこは、見るだけで十分です。
村松:僕も今自宅は長野県、東信エリアですけど、面識はないですけど〈罠ブラザーズ〉とかの活動もすごい気になりますし。日常の割とすぐそばにありますよね、ジビエとか。
渡邊:うん、そうそうそう。本当にジビエなんで、料理だから、食べることが体験にはなるんだけど、その裏にというか、奥に隠されているストーリー的なものも一緒に感じられる体感・体験できるとよりその深みが増すよね。なので、「NEST CARAVAN」ってもともとは、いろんな土地にみんなを集めて、キャンピングカーを利用することによって土地を汚さずに、かつフットワークの軽いキャンピングカーというモビリティを利用することで来た人たちが土地を移動することによって、いろんな体験とかができるというのを特徴としてスタートしたいね、みたいな話を昔してた思うけど。キュレーション性というか、食べてもらうとか、何かを見てもらうとかっていうことプラス、それを通して何を知ってもらうかというところを、もっともっと突き詰めていくと、企画としても面白くなるんだろうな、というのを改めて感じたかな。

村松:そうですね。今回は、開催したのは長野ですけど、東京の方とか長野の方とか、それ以外の隣県の方も参加していました。告知期間も短かったので、割と地域の人たちにも声かけて参加してもらったんですけど。結構みんなそれぞれのテーブルでトークのネタを持ちよって盛り上がる、みたいなのが見ていてよかったなと思いました。まさに山祇さんの話の後のディナー中に、茅野ローカルで元マウンテンバイカーの檀拓磨さんと話していて、「命をいただくって動物たちに対してすごくイコールな言葉だけど、野菜も野草も命をいただくわけだから、なんかそこをフラットに考えられるといいよね」みたいな話で盛り上がったんですよ。むしろそこでだいぶキューっと入って、お酒を飲みすぎて後半のトークショーがグズグズになるっていう感じでしたけど(笑)。
渡邊:(笑)。

村松:あとはMoving Innで旅した三者がそれぞれ旅の目的が違っていて、トークショーではそこまで掘り下げられなかったんですけど。サーフカルチャーのローカリズムをテーマにしながら改めて自国の自然やコミニティを見つめ直したNachosさんと田岡さんの旅。次が一緒に旅に行ってそれぞれが同じ風景を見ながらどう感じるのか、その違いはなんなのかを確認し合った船山兄弟の旅。まだ連載がスタートしていないのでこれからの公開になりますが、写真家の根本絵梨子さんとフィルマーのエリナの旅は、ロングトレイルを歩くという目的はありながらも、実はローカルの人々に会いにいく旅でもあった。三者それぞれ旅の目的だとか、移動する意味が違ったことで描かれる北海道の景色も違うっていうのを再確認できたのも良かったなって思いますね。



今年は無理やりエイヤッで一旦形にしたんで、来年以降はもう少ししっかり準備したいなと思っています。さっき桂志さんが言ってくれたように、もともとは、ローカルの物語とかコンテンツに自分の巣=ネストであるクルマで、みんながある種何もないところにも集まって、そこで何かしら地域の人たちと触れ合って、物語に触れて帰っていくキャラバンをやりたいっていうのが目論見なんで。もう少し拡張していったり、広げられるといいなと思いますけどね。
渡邊:だね。トークショーでも言ったんだけど、今、多分なんかいろんなメディアとか本とか見ていても、移動するといいよみたいなことをテーマにしているものが結構増えたなと思うんだけど。改めて考えるとやっぱり移動って、結果よりも過程にもっともっとフォーカスされていくべきなんじゃないかなとは思ってて。移動って、言うなれば……何かが変わっていく過程とか、ストーリーにもなり得る。今まで野生で暮らしてた動物が罠にかかって解体されて、料理になって、で、それが食べる人の口から入って消化されていってみたいな。それも、すべて移動、ではないんだけど、なんか概念的に繋がるような気がしていて。

今までって、移動は目的地により安くとか、早くとか、効率的にたどり着くことを求めて、いろんな乗り物ができていろんなシステムができたわけだけど。なんかここに来て、別に早くなくても、安くなくてもいいじゃないみたいな。それよりも、どこを経由して、どういう気持ちで、何をしながら、目的地にたどり着くか、みたいな、その過程の部分がすごくフォーカスされてきた。だから改めて今、移動の価値がこれだけ見直されているのかなっていうのを思うと、すべての変化に対しての過程にどういうストーリーがあるかっていうところを掘り下げるのって、すごく面白いなと思う。し、移動をテーマにして活動している自分だったり、発信しているnoruだったり、そういった人たちがそこの面白さをもっともっと発信できていったら、すごく面白いことになるんじゃないかなという期待感はありますね。
村松:うん。確かにコロナも経て、移動みたいなことをトピックにしたり、切り口に話をすると、伝わったり、共通言語で盛り上がったりできるようになりましたね。それは僕らとしてもすごくやりやすいというか、いいことだなと思っています。

立ち止まったり、とどまることの大切さを知れた一方で、今桂志さんが話してくれたように、誰かがA地点からB地点場で物理的に動くと本人のテンションにも気持ちにも変化があるし、その移動によって関わりのあるヒトモノコトに何かしら影響がある。移動することしないことそれぞれの意味を知れたり見つめなおせた期間だったなって思うと、まさに落ち着いてきた今、移動することによって意味や意義があるっていう。なんかそれを見出し直してるようなムードはすごく高まっていると確かに思います。なので、移動をテーマに後編は話せたらいいなと思います。
渡邊:はい。
では、続きは後編でお届けしたいと思いますので。 一旦、桂志さんありがとうございました。
渡邊:ありがとうございました〜。
渡邊桂志 (わたなべ けいし)
1995年立教大学卒業後、株式会社伊勢丹に入社。2003年〈トランジットジェネラルオフィス〉に参画し、ケータリング事業を立ち上げ、2008年には同社にてイベントやクリエイティブの企画を行うトランジットクルーを設立し、代表取締役に。2020年、〈株式会社ongo〉を設立。 現在は、ランドクルーザーハイエースのトップディーラーである〈FLEX〉の新規事業である、〈Moving Inn〉のプロデューサーを務めるほか、都市と自然をつなぐさまざまなプロジェクトの開発を行っている
IG:@kcwtnb
photo by Eriko Nemoto