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幼稚園のプレスクールに通うのに、家からちょっと遠かったんです。最初は自転車で送り迎えをしていたんですが、やっぱりクルマがあったほうが良いよねということになって。湘南エリアなので電車が走っているエリアではあるんですが、やはり都心のようにはいかないんですよね。
それで7年前にクルマを買おうということになったんですが、湘南って狭い道が多いんです。妻が一番乗ることになると思ったので、小さくて小回りがきくクルマということで、トヨタのディーラーに行ったら、このパッソがあってほぼ即決でした。
荷物もぜんぶ積めるし、子どもが寝ても抱っこしなくて良いし、こんなにクルマって便利だったのか!と。
でも、そもそも夫婦ともにぜんぜんクルマの運転って好きじゃないんです。なんなら自動運転が早くできないかなってくらいで。特に妻はペーパードライバーだったので、最初はそれこそ運転も命がけです(笑)。ヘタクソなのでミラーとか吹っ飛ばしたり、数々の粗相を繰り返しました(笑)。
イラストレーターになる前はドラマの制作進行をやっていたんですが、その時に1・5トントラックを運転していろんなロケ地に行ってたんです。寝ずに運転したりするので、ヒヤッとすることが何回かあって、そこから運転が怖くなってしまって。そういうトラウマみたいなのがいまだにあって、日常使いはほとんど妻に運転してもらっています。
特別なエピソードというのはそんなにないんですが、僕はサービスエリアグルメにハマりました。実家の栃木に帰省する際に、サービスエリアに寄りまくるので行くまでに4時間以上かかったり(笑)。
クルマではよくカラオケ大会をしてましたね。娘が歌って、親が合いの手とバックコーラスをいれて、映画スラムダンクのテーマとか家族で熱唱したりしたのも良い思い出です。
それと、娘がクルマだとしゃべってくれることってけっこうあるんだなと気づきました。楽しかったことだけじゃなくて、そのとき抱えていた悩みとかも。運転してるときって、相手の顔をまっすぐ見ないし、リアクションも控えめですよね。だから普段言いにくいことも話しやすいのかもしれません。子供の声を拾える場所だなと思います。
日常の中にクルマというある種、切り離された空間が加わるって良い事なんだなと思いましたね。どうやら妻は、独りになりたいときの避難所的な使い方もしていたようですが(笑)。
7年乗って、ようやくクルマの運転にも慣れてきたんでしょうね。湘南って風が強いのでもうちょっと横揺れに強いクルマが欲しいなとか、ようは目が肥えてきたのかもしれません。それで車検のタイミングで買い替えようという話になったんです。
そもそもが特にこだわりもなく買ったクルマではあるんですが、こうやって振り返ってみると寂しくなってきちゃうものですね。ただの車じゃないんだな。4人目の越井家の一員のように思えてくるんですよね。そういえば娘はこのクルマをオサムって呼んでました。ナンバーが630で後ろから読んでオサム。さよなら、オサムって、なんか人との別れみたいで切ないですね(笑)。
Illustration:Takashi Koshii
photo by Kenichi Muramatsu text by Takashi Sakurai