美瑛へ、戻ってきたかった場所
次の日の朝は、目の前の道の駅でさくっと朝ごはんを買うところから始まった。隣に道の駅があるなんて、なんて便利なんだろうと思いながら、まずはそこで玄米のおにぎりをひとつ。これが、とびきりおいしい。


そのあとモンベルショップとスーパーで、山の買い出しを済ませる。必要なものがすべて半径数百メートルで揃ってしまう感じも、旅人には心強い。
買い物を終えたら、今回の目的地のひとつだったレストラン〈SSAW BIEI〉へ向かうため、美瑛へ移動した。




ここも、2021年に初めて東川町に来たときに訪れて以来、「いつか必ず戻ってきたい」と思っていた場所だ。
初めて訪れた時のあの感動は、数年経った今でもはっきりと覚えている。お店へ続くアプローチとなっている白樺林の並木道、お店そのものの佇まい、落ち着いた空間とインテリア、テーブルに並ぶ器、そして料理。どれもが美瑛の風景とひと続きになっているようだった。


外のテラス席で食べていると、紅葉した葉っぱがふっと落ちてきて、「なんだこの演出は」とひとりで心の中で驚いた。店主で料理家のたかはしよしこさんの料理は、その演出を軽々と超えてくるおいしさで。
一人旅だったから、思わず声に出しそうになるのを飲み込むのが苦しいほどだった。
二人で囲む、やさしい食卓
そんな場所に、今回はエリナと一緒に来ることができたのが嬉しい。しかも、私たちは明日から山に入る予定で、これから5日ほど新鮮なものを口にする機会がほとんどない。ここでしっかり野菜を摂れることも、ひそかな楽しみだった。
緑に囲まれたテラスで、さっき畑から上がってきたばかりのような食材が、丁寧に料理になって目の前に届く。一皿ごとにパワーを分けてもらっているようで、目からも、口からも、肌からも癒されるような時間だった。

二人とも、本当にボロボロになるほど忙しい時期を乗り越えた直後だったこともあって、料理が体の芯まで沁み渡っていくのがわかる。「ちゃんと食べる」ことが、こんなにも心を落ち着かせてくれるのだと、あらためて感じた。
料理と人柄、風景がひとつになる
食事を終えて店を出る頃、よしこさんが庭で野菜を摘んでいる姿が見えた。
その姿があまりに自然で美しくて、思わずシャッターを切ると、こちらに気づいてふわっと笑顔を向けてくれた。料理には人柄が出る、なんて陳腐な言葉かもしれないけれど、本当にそうなんだろうと思う。よしこさんの笑顔と手つき、畑とお店とテーブルが、その一瞬の中でひとつにつながっていた。

たかはしよしこ(Yoshiko Takahashi):
生産者と食べる人の架け橋をテーマに、季節を追いかける料理と、自身が考案した万能調味料「エジプト塩」などで知られている。 2020年北海道・美瑛に移住し、白樺の森に佇むちいさなレストラン『SSAW BIEI』をオープン。北の大地の春夏秋冬の恵みを生かしたコースランチで、その土地ならではの風景と味わいを一皿に表現している。
IG:@yoyoyoyoshikoyoyoyo
あとからその写真を見返すと、場所も人も料理も、全部がぴたりとしっくりきているのがわかる。“あぁ、この旅のこのタイミングでここに戻ってこられてよかったな”と、写真の中の光景が教えてくれる。


根本絵梨子 (ねもとえりこ)
Photographer
2010-2011年 渡豪
2012年 都内スタジオ勤務
2014年 都内にてアシスタント
2016年 フリーランスで活動開始
HP:erikonemoto.com
IG:@neeemooo
Elina Osborne(エリナ・オズボーン)
映像作家。日本にルーツを持つ日系ニュージーランド人。世界中のロングトレイルを歩き、その様子を撮影したドキュメンタリー映像をYouTubeで公開し、日本を初め世界中のロングトレイルハイカーたちから絶大な信頼を得ている。
HP:elinaosborne.com
IG:@elinasborne
Photo &Text by Eriko Nemoto Produce by Ryo Muramatsu Cooperation by Moving Inn