Wayfindingというフォントからはじまった
制作真っ只中の2019年夏、アートディレクターの米山菜津子さんが”Wayfinding”という名前のフォントを提案してくれた。この聞きなれない単語には、”道しるべ”という意味があるという。フォントそのもののデザインも、その言葉が持つ意味も、このメディアにぴったりだ、とすぐに採用が決定した。
道しるべ/道順を見つける能力/ルートを見つけること…のちにWayfindingとは様々な意味を持つ言葉であることを知った。
写真で表現されたWayfinding
立ち上げ直前となった2020年3月。編集部は新型ウイルスの感染拡大を考慮し、取材をストップさせた。その直後、フォトグラファーの兄(村松賢一)から新作の写真を見せてもらった。
クルマの走行中にフロントガラスから道路の行く先を撮影したもので、特徴的なのは写真のシャッタースピードが、およそ30秒から最大30分近いものまであったこと。それは「移動そのものを写真に収めた」というと言い過ぎかもしれないが、コロナ禍によって、先が見えない、もやもやとした不安が日常に蔓延し始めていた頃だったこともあって、これからの道順を見定めなければならない社会そのものを、この写真が捉えているように思えた。
補足だが、撮影時は安全面を十分に考慮し、特機でカメラを車内に固定し、リモートでシャッターを切っている。
(Kenichi Muramatsu / Wayfinding (2020))
交錯するWayfinding
そしてnoruの立ち上げコンテンツのひとつとして、『僕らの時代のWayfinding』というタイトルの証言集をスタートすることにした。緊急事態宣言が全国に拡大し、日本国民みんなの行動が制限された中でこそ模索できる、これからの暮らし、働き方、移動について、様々な業種の人々にオンラインでインタビューしていくことにしたのだ。
この未知なるウイルスとの戦いは、きっと僕たちにとって大きな分岐点となるのだろう。これからどんなルートを進んでいくのか、あるいは戻るのか。この連載がそっと誰かの道しるべになってくれたらいいなと思う。
Photo by Kenichi Muramatsu Text by Ryo Muramatsu