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#04 未来のモビリティはもっとクリエイティブになる
2021.06.04 [PROMOTION]

#04 未来のモビリティはもっとクリエイティブになる
by 神保匠吾(オンライン・モーターマガジン『DRIVETHRU』ディレクター)

深刻な気候変動に際し、脱炭素の動きが世界中で加速している。近い将来、社会は大きく変わるはずだ。太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどの再生可能エネルギー、通称「再エネ」が社会を循環し、クルマはガソリンエンジン車からEVに変わり、電気は買うものではなく作るものに。そんな社会が理想とするのは、各家庭が発電システムを備えて自家消費する、「オフグリッドな暮らし」である。

オフグリッドライフのケーススタディを紹介する連載の4回目は『DRIVETHRU』ディレクターの神保匠吾さんが登場。自身のコンバートEVライフ、『DRIVETHRU』のオフグリッド・キャンパープロジェクトから、次世代のモビリティのありかたを考える。

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ファッションやカルチャーのエッセンスを取り入れる

子どものころから大のクルマ好きで、「将来はカーデザイナーになりたいと思っていた」というのは、『DRIVETHRU』ディレクターの神保匠吾さん。クルマ好きならきっとご存知であろう『DRIVETHRU』は、クリエイティブなモビリティを独自の視点で切り取るオンライン・モーターマガジン。モーターマガジンにありがちな新車のニュースやスペック、広告バナーなどは一切掲載しない。代わりにラインナップされているのは、オフグリッドキャンパーや電動化バイクなど、ユニークなプロジェクトの数々だ。

「カーデザイナーではなくてメディアを志すようになったのは、周囲にいくらカーデザインの素晴らしさを謳ったところで同世代の友人は誰も興味を示さなかったから。クルマ好きのパイを広げるためには、ファッションとかカルチャーとか、クルマとは異なる文脈のエッセンスを取り入れることが大事かな、そう思うようになったんです」

そんな神保さんをインスパイアしたのが、当時、イギリスで発刊されていたマガジン、『INTERSECTION』。ファッション誌が手掛ける自動車雑誌である。「これだ!」と感銘を受けた神保さんは一路、『INTERSECTION』編集部のあるロンドンへ渡った。

「ロンドンのアートスクールに通いながら編集部に出入りするようになりました。1年が過ぎたころ、『INTERSECTION』の日本版が出ることになり、その制作に携わるために日本に帰国したんです」

スペックよりもワクワク感を重視

神保さんが考える最強のコンテンツを揃えた『INTERSECTION』日本版は、リーマンショックの煽りを受けて広告収入が激減し、わずか3号で休刊に。「広告収入のような、いわゆる“大人の事情”に左右されないメディアを自分で作ろう」と立ち上げたのが、『DRIVETHRU』である。

「編集方針は、『こんなクルマがあったらいいな』と思わせるものを紹介すること。クルマにまつわるシーンは“大人の事情”優先であることがどうにも腑に落ちなくて、そのシーンを変えていきたいと思っています。旧車ばかりを扱うメディアと思われがちですが、魅力的でワクワクさせてくれるものであれば、新車だって紹介するんですよ」

ところで『DRIVETHRU』では、スタート当初からEVを扱っていた。

「『DRIVETHRU』を始める前に日産の『テクノロジーマガジン』の編集に携わっていて、初代リーフの開発者たちを掘り下げたりしていました。この初代リーフがとにかく面白いクルマだったんです。時代背景もあって“エコ”や“スマート”という視点に振られがちでしたが、これをクルマとしてきちんと表現していったら面白いことになるな、そんな手応えを感じていました」

当時はバッテリーや充電インフラも開発途上にあったが、それでも「EVこそ未来」と確信させてくれた瞬間だった。

愛車をEVにコンバート

大学生のころに乗っていたBMW3シリーズ(E21)を、「いつか最新のエンジンにスワップしよう」と目論んでキープしていた神保さん。ところが、『日常に寄り添うモビリティ』にしたいと思っていた彼にとって、最新のBMWはそこまで魅力的に映らなかった。

「そんなとき日産本社にある急速充電スタンドで、コンバートEVで知られる<OZ MOTORS>に出会ったんです。古いクルマが充電エリアにいたので『間違えて入ってきちゃったんだな』と思ったら、おもむろに充電を始めて。『なんだ、これは!』と衝撃を受けて、声をかけたのがお付き合いの始まりでした」

<OZ MOTORS>との出会いを経て、BMWをコンバート。乗り心地はしごく快適だ。


EVにコンバートする前のBMW3シリーズ(E21)

「仕事柄、さまざまなクルマに乗っているので、コンバートしたところでさほどの違いはないだろうと思っていたのですが、とんでもない。感激の乗り味でした。とにかく走りのキレが違う。EVならではの加速もそうですが、エンジンがなくなったことでフロントの車重が軽くなり、操作性が格段に向上ました。エンジンがなくなってもBMWな走りに違いはなく、遜色ないパフォーマンスを見せてくれます。

航続距離を考えてエアコンはつけていないのですが、エンジンがないから車内が暑くならないんですよ。夜に窓を開けて走ると、風と静けさが気持ちよくて。ドライブ中に感じる自然との一体感、それはいままでになかった体験でした」

オフグリッド・キャンパーで、ロードトリップをもっと楽しく

この経験を踏まえ、『DRIVETHRU』で手掛けたプロジェクトの一つが、「POD(ポッド)」。オフグリッドキャンパーの製作とそのレンタル事業である。

「世界中をキャンパーで旅した経験をお持ちのとあるインテリアデザイナーから、『日本でも同じようなロードトリップをしたい』という相談を受けたことがきっかけです。いわゆるバンライフに、一歩先の快適さをキャンピングカーで実現したいという希望を聞いて、かねてよりアイデアを温めていたオフグリッド・キャンパーを製作することにしました。

車重のあるキャンピングカーの駆動に電気を利用するのは無理がありますが、エアコンや室内灯など、居住スペースの電力なら十分、リチウムイオンバッテリーで賄えます。日中は快適にドライブでき、夜は家族みんながぐっすり眠れる環境を作り出すことができました」




「POD」での気づきは、オフグリッド環境では使える電力に限りがあるということだった。

「近い将来、EVは広く社会に普及するはずだが、そのときにこれまでのような使い方をしていたら、確実に電力不足に陥る。スイッチをひねれば電線から無尽蔵に電気がもたらされるという、これまでの考えは改めなくてはいけません」

バッテリーに充電されている電力のみ、という制約のあるなかで、何に、どう電力を使うのか。どうすればロスをなくし、効率よく豊かなひとときを過ごせるのか。いわば、バックキャストの思考が必要なのである。

「未来の社会では、発電施設を拡充するよりも、一人ひとりがソーラーで発電した電力をスマートに蓄え、賢く使うことが重視されるようになるでしょうね。そういう制約があればこそ、想像力を働かせる余地があるように思います」

夢は、ガソリンスタンドのコンバート

そんな未来を思い描く神保さんの夢は、ガソリンスタンドをエネルギースタンドに作り変えて、モビリティのハブとなる場所を整備することだという。

「いうなれば、EVのサービスエリアです。充電設備がありますが、既存の電力供給システムには頼らず、ソーラーパネルで自家発電し、大容量のバッテリーに蓄えるんです。送電線から解放されれば、たとえば僻地にだってこういう施設を作れます。そういう地の利をいかして、その場所ならではの体験ができる施設や、その土地のいいものを買える売店も設けて……。そういう次世代スタンドを、ドライバーのために各地に作っていけたら」

「自分たちが信じるものだけを、読者やユーザーに届けたい」と神保さん。その純粋なエネルギーが、未来のモビリティをクリエイティブに変えていく。

神保匠吾
『DRIVETHRU』ディレクター。福岡県出身。大学卒業後、雑誌『INTERSECTION』にあこがれて渡英。ロンドン滞在中に映像編集を学ぶ。帰国後、『INTERSECTION』日本版に関わった後、『DRIVETHRU』を立ち上げ。現在に至る。
HP:https://drivethru.jp
Instagram:@drivethru.jp
@shogojimbo

Photo by DRIVETHRU®_Yuya Shimahara(BMW e21)/DRIVETHRU®_Tomohiro Mazawa(POD) Text by Ryoko Kuraishi supported by Yingli Solar