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#26 めぐって、かんじて、あじわう、五感で旅する西伊豆戸田
2023.08.30

#26 めぐって、かんじて、あじわう、五感で旅する西伊豆戸田
by 原康太

ガイドブックやメディアに載っていない自分だけのロードマップを作る旅。この連載は、そんな“自分らしいクルマ旅”のススメを、多拠点生活をおくる人や、地方在住者、移動が日常にある人など、日本のさまざまな土地で根を下ろす人々に聞くもの。今回はオフィス設計やグラフィックなど、デザイナーでありながら、編集者としても活動する原康太さんが西伊豆の戸田を紹介してくれる。

ガイドブックには載っていない旅のススメ| 連載「自分らしいクルマ旅」記事一覧

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伊豆の辺境地をエモーショナルに味わう

原康太/デザイナー・編集者

area:西伊豆

オフィス設計やグラフィックなど、デザイナーとして幅広く活動する原康太さん。仕事柄、定期的に価値観のアップデートを求めて、気になっている街やお店、ホテルを巡る旅に出るという。これまで訪れた数々の土地の中で、人、場所、食などすべての魅力が詰まっていると感じたのが、西伊豆の海岸線に位置する静岡県沼津市戸田(へだ)だ。西伊豆は熱海や伊東と比べて観光目的で訪れる人が多くない、“知る人ぞ知る”と言われる穴場スポット。戸田は、古くから漁業の町として賑わい、海越しに望む富士山の絶景や駿河湾から水揚げされる世界最大のタカアシガニや深海魚が有名な港町だ。

「西伊豆は、東伊豆の更に山を越えた先にある、秘境のような雰囲気のあるエリア。だからこそ、歴史と現在が融合し、今もなお土地独自の表情が強く残っています。戸田は、三方を山に囲まれ、駿河湾に向けて真っ直ぐと開けた土地。陸の孤島と言われるだけあって、訪れるには必ず山越えをしなくてはならず、それが町に入る時に「感情の切り替え」を起こさせる独特の空気感を醸し出しています」

そんな戸田に一目惚れした原さんは、家を借り、クルマを購入し、千葉県との2拠点生活をスタートさせることに。以来、忙しい合間をぬって毎週戸田へ足を運ぶ暮らしを送っている。

「2拠点といいつつも、感情の軸足は戸田にあります。「何もないから全てある」、と地元の人が口を揃えて話していることにも通じるように、この町は感情が震えたり、喜ぶ瞬間を与えてもらうのではなく、「見つける」ことを楽しむ町です。だからこそ、日々見逃してしまうような春の菜の花の香りや果実の実り、毎日違う夕日の色合いなど、感情の琴線に触れる瞬間に敏感になれる感覚を取り戻せます」

今回、原さんが提案してくれたのは「西伊豆戸田への1日の旅」。戸田でしかできない「コト体験」を重視して、めぐる、感じる、あじわうをキーワードに五感を刺激するスポットを紹介してくれた。

“初めて戸田を訪れた際、昔も今も変わらないような風景とゆっくりとした時間、まるで家族のように迎えてくれる地元の人の温かさと、歴史文化・自然・人の魅力的要素が詰まった町であることを感じ、こんなところが日本にあったのかと衝撃を受けたのを今も鮮明に覚えています。たまたま辿り着く土地ではないからこそ、ここでしか出合えない体験や風景、食や人が待っていると思います。訪れた先で、その街や土地の表情を五感を使って感じたい人の参考になれば嬉しいです“

静岡県沼津市

01.達磨山

伊豆の三景観を望む絶景スポット

西伊豆戸田へ向かう途中にあるスポット。富士山と駿河湾、そして戸田の特徴ある地形を見渡せます。駿河湾に伸びる岬を持つ戸田の特徴ある地形がはっきりと見え、目的地までの期待感を膨らませます。達磨山は伊豆が半島になった後、約100万~50万年前に噴火を繰り返し形成された陸上火山。伊豆半島ジオパークのジオスポットにもなっており、多くのハイキングや登山者の方が訪れます。お家からコーヒーを淹れて持ってきて、ここで一休みしたり、軽くハイキングに出かけて広い空と爽やかな風を感じたり、様々な植物との出合いを楽しんでみるのもおススメです。

住所
静岡県沼津市戸田

 

静岡県沼津市

02.戸田塩作り体験

昔ながらの製法で作られる塩づくりを体験できる

戸田では古くから駿河湾の海水を利用した塩づくりが行われており、地元の方たちで組成された「NPO法人戸田塩の会」により、塩づくりの歴史・伝統が守り続けられています。設立約27年。戸田塩のおススメの食べ方はシンプルに塩むすび。それを持って海の傍で食べる時間は至福の時間です。戸田塩は日本一深い海“駿河湾”から汲み上げられた海水を使用し、塩釜で13時間焚き上げ作られており、その工程の中の貴重な「塩すくい」を体験することもできます。戸田の好きな場所や昔の風景・暮らしの話など、塩すくいを行いながら戸田塩の会の方たちと話す時間は、ただ町を巡るだけでは出会えない「戸田の新たな一面」を知ることもできます。

住所
〒410-3402 静岡県沼津市戸田3705-4
営業時間
8:30~15:30
休業日
毎週水曜日、また荒天・強風時
URL
npo-hedashio.jp

 

静岡県沼津市

03.まるさん

新鮮な魚介をいただくならココへ

お腹が空いた、海鮮を食べたい!そんな時に訪れてほしいのが〈まるさん〉。沢山あるメニューの中でも特におススメが「アジのたたき定食」。食事が提供されると、誰もが「わ!すごい!」と歓声を上げます。初めて食べた日の感動が忘れられず、私もこれを目当てに訪れています。ひぃおじいさんがやられていた民宿まるさんという名前を引き継ぎ、昭和60年から海鮮料理屋を営業されています。味も見た目も満足すること間違いないのでぜひ訪れてみてください。

住所
〒410-3402 静岡県沼津市戸田376-8
営業時間
9:00~17:00
定休日
木曜日

 

静岡県沼津市

04.御浜岬

透き通る戸田湾の水や美しい風景に癒される

戸田を象徴する天然の砂嘴(さし)。風雨や波などが周辺の山々を浸食し、それによる土砂が川の流れや海流に運ばれ、長い年月をかけてこのような形の岬となったそう。海は高い透明度を誇るため、浜辺を歩いていると沢山の海の生き物に出合えます。私は夕方、仕事に一区切りをつけ、身体を深呼吸させによく海を訪れます。岬があるため、湾内は波がとても穏やかで、疲れた脳と身体を癒してくれます。また、駿河湾に面した場所から眺める夕日は驚きの美しさ。1日1日、全く違う色、グラデーションの夕空を眺めることができ、心が洗われます。自然の美しさを感じ、「生きる力」のようなものを感じられるスポットです。

住所
〒410-3402 静岡県沼津市戸田

 

静岡県沼津市

05.The Old Bus

廃バスを改造したチルアウトスペース

戸田から沼津の街中へ抜ける途中にある西浦という集落の海沿いにある古いバスをリノベしたチルアウトスペース。元々横浜でバーとして営業していた廃バスを現オーナー夫婦が譲り受け、クラウドファンディングでバスの移動費やリノベーション費用を集め、西浦で営業を始められました。横浜の時も、そして新しい地「西浦」でも沢山の人に愛される場として存在しています。カウンター越しの車窓から富士山と駿河湾の景色を眺めながら、美味しいチャイラテを頂く時間は最高です。一人で自分とゆっくり向き合いたい、友達とゆっくり語らいたい、誰かとお話したい、そんな時に訪れたくなる、様々な人にとっての居場所となっているお店です。
※現在は予約制での営業となっています

住所
〒410-0243 静岡県沼津市西浦久料
URL
theoldbus.net
Instagram
@theoldbus

 

原康太 (はらこうた)
デザイナー。京都出身、現在は週の半分を千葉に住み、半分は静岡県沼津市戸田で暮らす。オフィスの企画設計や食品ブランドのブランディングデザイン、静岡では街の案内誌や周辺店舗・物販のデザイン、企画などを行う。二拠点生活の実体験をもとに都市―地方との繋がり、コミュニケーションデザインに情熱をもつ。趣味は、SUP、釣り、ラン二ング、自然の中でのコーヒーブレイク。
IG:@ko.ko.u