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#33 愛車と共に海を渡るカーフェリーのススメ
2024.01.29

#33 愛車と共に海を渡るカーフェリーのススメ
by 猿渡大輔

ガイドブックやメディアに載っていない自分だけのロードマップを作る旅。この連載は、そんな“自分らしいクルマ旅”のススメを、多拠点生活をおくる人や、地方在住者、移動が日常にある人など、日本のさまざまな土地で根を下ろす人々に聞くもの。今回はデザイナーの猿渡大輔さんが日本各地を巡る旅を紹介してくれる。

ガイドブックには載っていない旅のススメ| 連載「自分らしいクルマ旅」記事一覧

» 自分らしいクルマ旅

国内のカーフェリーを使ったクルマ旅

猿渡大輔/デザイナー

area:日本各地

ブランド戦略の企画立案、クリエイティブ制作、SNS・オウンドメディア運営、PRなど、幅広い分野で活躍するデザイナーの猿渡大輔さん。以前クルマに関わる仕事をしていたこともあり、クルマはとても身近な存在だ。これまで共に日本各地を旅してきた愛車が、時を過ごすほどに自分の肌に馴染んでくる感覚が心地良い。さまざまな場所へ足を運ぶことの楽しさに加えて、それを愛車と共に行うこと、愛車の窓から旅の情景を捉えることに魅力を感じると語る。

そんな猿渡さんの旅には、もうひとつ欠かせないものがある。

「祖父の形見の古いカメラを常に持ち歩いています。無類の旅好きであったという祖父とは、病気のせいもあって殆ど一緒に旅行ができなかったので、今祖父のカメラを使いながら自由に旅をすることに意味を感じています。僕にとってのクルマ旅とは、その感覚を得るためのものでもあるんです」

今回、猿渡さんがオススメしてくれたのは、カーフェリーを使ったクルマ旅。ワープ感を味わえるフェリー旅では、目的地までの時間が短縮されることで、現地での滞在時間を増やすことができる。フェリーを活用することで、クルマで走る行動範囲をより広く考えることが可能になり、ますますクルマ旅を楽しめるようになったそう。さらに、海を眺めながら移動できるフェリーは、旅の中で一度は海を見るというマイルールを持つ猿渡さんにとって、うってつけの移動手段と言える。

「フェリーで行った先のスポットには、飛行機や電車、現地でのレンタカーを使って行くよりも愛車で踏みしめたい場所、愛車の窓から見たい景色をピックアップしました。自分が一番心地よくいられる空間である愛車と一緒に船に乗り、いつもよりも遠くの土地に降り立ち、あとは好きに走る。その時間や出来事の幸福感をシェアしたいです。最近は新造船に切り替わる航路も出てきているので、子連れやペット連れでもより快適で楽しい船旅ができそうです。遠くへ旅をして家に帰ってきた後、汚れたクルマを見返して抱く愛着は、公共交通機関やレンタカーだけの旅では得られない感覚だと思います」

神奈川県横須賀港と福岡県新門司港を結ぶ

01.東京九州フェリー

所用時間21時間、関東と九州を結ぶ高速フェリー

神奈川県横須賀港と福岡県新門司港を結ぶフェリー。数年前にできたばかりの航路で船も新しく、食事やお風呂、部屋、その他設備も綺麗で快適なので、長距離のフェリー移動が初めての方にもおすすめです。関東と九州を結ぶ他航路よりも所要時間が大幅に短く、夜発夜着でスケジュールが立てやすいのも◎。行きはフェリーで福岡に渡り、九州を周った後、帰りは自走で中四国、近畿をうろつきながら帰ってくるというルートもとても魅力的で、僕自身何度も利用しています。

 

大分県日田市

03.小鹿田焼の里

国の重要無形文化財に指定された小鹿田焼窯元の集落

我が家で使っている食器の半分以上を占める小鹿田焼は、全てこの山間の小さな集落でつくられたものです。クルマでしか行けないような奥地であること、現地でたくさん購入して持ち帰りたいことなどを考えると愛車で九州にいるときに目指すのがベターです。真ん中を流れる川に沿って素朴な建物や登り窯が並び、川の流れを活用して陶土をつく唐臼のリズミカルな音が響く、心地良さと少しの緊張感が混ざり合った独特な場所です。夏の豪雨の影響で深刻な被害を受けてしまった地域でもありますが、遠くから応援しつつ、また伺いたいと思っています。

 

熊本県阿蘇

02.大観峰・その他周辺

愛車で駆け抜けたい、阿蘇を代表する絶景スポット

メジャーなスポットではありますが、愛車で走るのはまた別の趣や喜びを感じます。他のどこの土地とも違う質感で、ゆるやかな起伏がずっと続く草原、外輪と内側の急な高低差…。初めて愛車のフロントウインドウからそれらを見た時は圧倒されて息をするのも忘れるような感覚だったことを覚えています。

 

茨城県大洗港と北海道苫小牧港を結ぶ

04.商船三井さんふらわあ

快適な船旅で首都圏から北海道へ

商船三井さんふらわあの茨城県大洗港と北海道苫小牧港を結ぶ運航ダイヤ。クルマで北海道に上陸することだけはまた違う、少し格別な感覚になります。同じ首都圏発の航路でも、九州へ向かうのとは異なる空気や海の気配の移り変わりを眺めるだけで気持ちが高まります。夜発、お昼過ぎ着の便があるのでスケジュールも組みやすく、苫小牧に到着後、明るいうちに支笏湖や札幌に向かうこともできます。ペットと泊まれる部屋やドッグランも新設されたそう。

 

北海道上川町

05.層雲峡・愛山渓

ダイナミックな景色を味わいつくす。山間の秘湯にも立ち寄って

北海道らしいスケールの大きい山々や崖に囲まれた渓谷を石狩川に沿ってひたすら走る。運転席の窓からは全貌が掴めないような断崖絶壁に挟まれての印象的なドライブができます。廃墟となった商店やドライブインなどの施設がたくさんあり、昭和の観光ブームの頃には大いに賑わったことが想像できます。人の営みの勢いが後退して時間が止まったような風景が続きますが、それが周りの自然の迫力や荒々しさを強調するようで、何度も車を止めて景色を確認したくなったのを覚えています。

 

猿渡大輔 (えんどだいすけ)
千葉県出身。ファッションやモビリティの業界でデザイン、PR、ブランドディレクション等に携わった後に独立。専門分野はブランディング支援とグラフィックをはじめとするクリエイティブ制作。現在はインディペンデントなブランドや地域に根ざした中小企業・商店を中心に、幅広いフィールドで裏方として事業を支援している。
Instagram:@endlw

Text by nao katagiri