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#32 都会の喧噪を離れ、瀬戸内の美に触れるクルマ旅
2024.01.11

#32 都会の喧を離れ、瀬戸内の美に触れるクルマ旅
by あかしゆか

ガイドブックやメディアに載っていない自分だけのロードマップを作る旅。この連載は、そんな“自分らしいクルマ旅”のススメを、多拠点生活をおくる人や、地方在住者、移動が日常にある人など、日本のさまざまな土地で根を下ろす人々に聞くもの。今回は編集者・ライターとして活動しつつ、岡山県にて本屋〈aru〉を経営されるあかしゆかさんが瀬戸内の地を巡る旅を紹介してくれる。

ガイドブックには載っていない旅のススメ| 連載「自分らしいクルマ旅」記事一覧

» 自分らしいクルマ旅

瀬戸内・児島発。海と山、心と向き合うクルマ旅

あかし ゆか/編集者,ライター,本屋

area:瀬戸内周辺

ウェブ・紙問わず、フリーランスの編集者・ライターとして活動するあかしゆかさん。2020年より東京と岡山の二拠点生活をはじめ、2021年より瀬戸内海にて本屋〈aru〉を営んでいる。岡山での彼女の拠点は岡山県最南部に位置する児島。瀬戸大橋で四国に繋がる本州の玄関口である町で、古くから海運業や製塩業、繊維業が栄えた。国産ジーンズ発祥の地であり、今や世界に誇る『ジャパンデニム』の中枢を担うエリアとしても有名な場所。

月の3分の2を東京、残り3分の1の1週間程度を岡山で過ごす彼女。都会での生活は楽しい一方で、情報量の多さに少し疲れてしまうことがあるという。そんな時、岡山に帰るといつでも変わらぬ自然が出迎えてくれる。どこか優しさを感じる岡山の自然を眺めていると、不思議と穏やかな自分に立ち戻れる。自然と向き合い、深呼吸する、その時間の必要性を岡山を訪れ強く感じ、もっと瀬戸内の大自然に触れたいと愛車「三菱・パジェロミニ」を手に入れた。

「クルマの価値は『自分だけの空間が確保される』こと。そして、『今ここに集中できる』こと。
電車やバスでの移動も好きなのですが、移動する時にひとりになることはなかなか難しいです。けれどクルマは、ひとりになることができます。その環境だからこそ、考えることに集中ができたり、リラックスして自分と向き合うことができます。泣きたい時には泣いてもいいし、笑いたい時には笑える。包容力が大きい移動手段だな、といつも思います。」

自分の人生にとって大事なものが「ある」と感じた土地に、本屋〈aru〉を構えたあかしさん。自分が「何かありそうだ」と思えることに素直に、楽しく、軽やかに乗っかっていきたいと活動する彼女は、新たな「何かありそう」という直感を求め、クルマ旅へと出掛ける。

「クルマは大勢で乗るよりも、1人か2人で乗ることが好きです。ひとりでいる時は自分自身と、2人の時は、ゆっくりその相手と話すことができる。ドライブだからこそ話せることがあると感じています。まだ見ぬ景色に出逢わせてくれ、自分と向き合える時間を与えてくれるもの。それが私にとってのクルマ旅です。」

今回、あかしさんが紹介してくれたのは、彼女が二拠点生活を送る岡山県倉敷市児島を起点とし、海、山、心と向き合うクルマ旅。都会では味わえない海や山、生い茂る草木や花、広い青空を全身で体感する時間を過ごして欲しいという。

私が二拠点生活をしている岡山県倉敷市児島は、瀬戸内海が目と鼻の先にあるエリアです。波の音で目が覚めて、穏やかな多島美に心奪われ、海と共にある日々を過ごしています。そして岡山は海だけではなく、北に行くと山の景色も美しい。周辺には独特な土地柄を活かし、作品と自然、建築が一体となった素晴らしい美術館も多々あります。

岡山にいると、自然を感じ、内なる心と対話する機会が自ずと増えているような気がします。この土地をクルマで移動することは、私にとって自然を通して自分と向き合う手段のひとつ。ぜひみなさんも、瀬戸内の地を訪れ、旅をしてみてください。都会で生活をされている方や、自然に触れて少しゆっくりしたい、自分自身について考える時間がほしいなと感じている方などにぜひ訪れて頂きたいです。

岡山県玉野市

01.王子が岳付近

雄々しい岩々の迫力と山頂から望む瀬戸内海の美しさ

山のあちこちに出現する雄々しい岩々でも有名な『王子が岳』。児島駅から王子が岳に行くまでの海岸線沿いのドライブが大好きです。さらに山頂までクルマを走らせ、そこから見る景色は、何度見ても色褪せない美しさがあります。淡い色合いの瀬戸内海に、木々の緑、岩の色のコントラストは唯一無二の景観です。王子が岳の中にあるカフェ〈belk〉やフレッシュジューススタンド〈MarugoDeli Ojigadatake〉に立ち寄るのもおすすめです。

住所
〒706-0028 岡山県玉野市渋川4丁目

 

岡山県倉敷市

02.瀬戸大橋

瀬戸内海の上空を飛んでいるかのようなドライブコース

児島から、瀬戸大橋を渡ってすぐの場所にある高松。友人が住んでいることもあり、よく遊びに行きます。その高松へのルートを繋ぐ瀬戸大橋は瀬戸内海の真ん中を通り、1988年に初めて四国と本州を陸路で結んだ橋。先日はじめて瀬戸大橋をクルマで渡り、驚きました。前も後ろも下も、見渡す限り全部瀬戸内海!ぜひ贅沢な海の上のドライブを体験して欲しいです。うどんを食べて、街を少し巡って帰ってくるだけでも十二分に満たされる。児島からの日帰り旅行にもおすすめです。

住所
岡山県倉敷市児島~香川県坂出市番の州町

 

岡山県勝田郡

03.奈義現代美術館

名建築家・磯崎新氏作、自然と一体化したアート作品

児島から車で2時間半ほどの場所にある奈義町。海側の景色とは一変し、山道のドライブはまた違った空気感があり、心と体をゆっくりと深呼吸させる時間を与えてくれます。
奈義現代美術館は、建築家・磯崎新氏設計の、1994年開館の美術館。『月』『太陽』『大地』と名付けられた3つの空間が、それぞれひとつずつ独立した作品となっています。空間を贅沢に使用し、その土地の自然と一体化したアートは全身全霊を使って感じる稀有な体験。隣にあるピザ屋〈La gita(ラジータ)〉のピザも絶品なので、ぜひ味わってほしいです。

住所
〒708-1323 岡山県勝田郡奈義町豊沢441
営業時間
9:30~17:00 (入館は16:30まで)
休館日
毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は開館)および祝日の翌日
URL
town.nagi.okayama.jp/moca/index.html

 

岡山県玉野市

04.8WIRE

瀬戸内海を目の前に、特等席で味わうハンバーガー

児島から20分ほどにある『宇野』という街は、港があり瀬戸内の島々への発着地点となっています。宇野に到着するまでの車道から見える海の美しさはもちろんのこと、宇野には美味しい飲食店もたくさん。中でもお気に入りは〈8WIRE〉のハンバーガー。皮が焼けたふわふわのバンズに大きなパティ、新鮮な野菜もたっぷり。海沿いにあるお店なので、ぜひ脇にクルマを停めて、海を眺めながらベンチで頬張ってみてください。

住所
〒706-0011 岡山県玉野市宇野1-7-3 東山ビル1F
定休日
日曜日/月曜日
営業時間
火曜日〜土曜日10:00-15:00
Instagram
@8_wire

 

香川県小豆郡

05.豊島美術館

自然の光、風、音、空の美しさが浮かび上がる、体感型美術館

8WIREでハンバーガーを食べた後は、フェリーに乗って瀬戸内海の島々へ。私は特に豊島が大好きで、何度も足を運んでいます。
豊島のシンボルとも言える豊島美術館は、日本の美術家として有名な内藤礼氏による『母型』という作品。気づけばいつも何時間も経っているほど、時を忘れさせてくれる空間が広がっています。“地上に存在することは、それ自体、幸福であるのか”。内藤礼さんの作品に通ずるこのテーマが、自然の光、風、音、空の美しさと共に浮かび上がってきます。

※豊島へは宇野に車を停めていただき、フェリーで豊島にお越しください。

住所
〒761-4662香川県小豆郡土庄町豊島唐櫃607
URL
benesse-artsite.jp/art/teshima-artmuseum.html
Instagram
@benesse_artsite

 

あかしゆか
京都出身、31歳。大学時代に本屋で働いた経験から、文章に関わる仕事がしたいと編集者を目指すように。 現在はウェブ・紙問わず、フリーランスの編集者・ライターとして活動をしている。2020年から東京と岡山の二拠点生活をはじめ、2021年4月、瀬戸内海にて本屋〈aru〉をオープン。

IG:@akyskaa

Text by Kouta Hara