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#37 脳裏に焼き付いた、出先で出合う景色たち
2024.07.09

#37 脳裏に焼き付いた、出先で出合う景色たち
by 半田明日香

ガイドブックやメディアに載っていない自分だけのロードマップを作る旅。この連載は、そんな“自分らしいクルマ旅”のススメを、多拠点生活をおくる人や、地方在住者、移動が日常にある人など、日本のさまざまな土地で根を下ろす人々に聞くもの。今回は神奈川県で花屋〈〉を営む、半田明日香さんが東京の地を巡る旅を紹介してくれる。

ガイドブックには載っていない旅のススメ| 連載「自分らしいクルマ旅」記事一覧

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クルマ旅=インスピレーションと出合う散歩のよう

半田明日香/烏 店主

area:東京都

神奈川県大磯駅近く、線路沿いを歩くと現れる花屋〈 (kalasu)〉。元々は文房具屋だった場所を改装した店内には、花はもちろんのこと、リトルプレスやレコードが並び、BGMには昭和歌謡が流れる。店主の半田明日香さんのセンスが散りばめられた、新しくもノスタルジックな雰囲気を感じさせる店だ。

花屋は仕入れや配達で様々な場所にクルマで移動することが多い。店でお客さんと直にふれあうことを大事にしながらも、外に出ることでインスピレーションが生まれるという。

「お店作りの参考になる場所がたくさんあって、どこかしらにそういった刺激を求めているのかもしれません。昔は目的のない“ただのドライブ”の意味がよくわからなかったのですが、自分でクルマを持ってからは少し分かった気がしています。運転している間はとてもパーソナルな時間を過ごしていて、思考が柔軟になったり、流れていく景色と同じ速度で頭が回転しているような感覚になったりします。脳内が活性化されるのか、良いアイディアが浮かぶことが多いのですが、運転中に咄嗟にメモをとりたい時って皆さんどうしているのでしょう? 気になります」

クルマ旅とは“インスピレーションがごろごろしているところへの散歩”という半田さんが今回オススメしてくれた旅のテーマは『仕事の先に見える景色』。移動時間以外は家や店舗で過ごすことが多い彼女にとって、クルマでの移動時間こそが “旅”のようでもある。

「挙げたスポットは場所やお店というピンポイントなものではなく、通りや景色ということが多いです。どのスポットも、何回も通り脳裏に焼き付いている、とても大事な風景です。これは都内に限って思うことなのですが、どこに行くにしても近い。23区内は特にそういう感覚に陥ります。気になったところをMAP上でチェックしておけば、何かのついでに行くチャンスが絶対に生まれるので、普段から人に聞いたり、Instagramで気になるところを見つけたりしたら、すぐにピンしておきます」

旅の後にも半田さん流の楽しみ方があるという。

「私がよくやるのは、その日帰宅してから、もう一度目的地までの道を思い出しながらGoogle MAPを見ること。ずっと気になっていたお店が実はすごい近くにあったとか、実は目的地の一本先の道は毎日のように通っていた場所だったとか。地図のように俯瞰で見ると、運転しているときに見えないことに気がつけたりしておもしろいんです」

 

東京都

01.半蔵門信号を右折、桜田濠越しに丸の内までを見下ろすスロープ

角張った丸の内のビルと国立劇場の桜と

昼も夜も何度も配達で通りました。遠くに眺める高層ビルは場所関わらず興奮します。丸の内方面のビルはどれもきりっと角張っていてスマートです。春、あのあたりだと千鳥ヶ淵の桜は名所ですが、国立劇場前の桜が印象的で、忘れられない風景の一つになっています。少し低めの位置、目線の高さあたりで咲くのです。

東京都

02.三田方面からみた東京タワー

やっぱり東京タワーが好き

東京タワーがずっと大好きです。仕事を始めてからは夜に運転することも多く、当たり前ですが暗いとよく見えるのです。朱色がかったオレンジに光る電波塔に何故だか安心して、いろいろな場所からの東京タワーを採集するように、見かけるたびに写真を撮っていました。中でも私が一番好きな角度は三田方面から見る東京タワー。三田方面から赤羽橋の方に向かって進み交差点手前、高速道路の架線下に差し掛かるとタワーの足元しか見えなくなるのですが、それも大きさを物語っており良いです。

住所
〒105-0011 東京都港区芝公園4-2-8

 

東京都大田区

03.大田花き

花、時々クルマ

毎週ここへ来ています。日本で一番流通量が多い生花市場。仲卸の人にようやく少しずつ顔を覚えてもらい、「烏」という名前も徐々に呼んでもらっています。いつ来ても活気があり、元気になれる場所です。そして、様々な車が集まるのも見所の一つ(私の中では)。ミニバンやハイエース、軽トラなどが多くはありますが、オープンカーや私と同じ初代のカングーで来ている方もいたりして、みんなそれぞれ相棒のような相方のようなクルマがあるのだなと思います。

住所
〒143-0001 東京都大田区東海2-2-1
URL
otakaki.co.jp
IG
@otafloricultureauction

 

東京都世田谷区

04.Indian Canteen AMI

寄り道して味わうインド家庭料理

世田谷区弦巻にあるインドカレーのお店。大田花きとは違う市場に行くこともあるのですが、余裕があるときに一瞬寄り道をするこちらのお店。店主の明るさが人を呼んでいるなぁと感じます。カレーはベジプレート(野菜)、ノンベジから選ぶタイプ。カレーが美味しいのはもちろん、盛り付けも付け合わせもワクワクするお店です。本当に、どこから食べたらいいのかいつも悩んでしまうほど。カウンターには店主のえみさんがインドに訪れた際についつい買ってしまうという花瓶や小さなオブジェがたくさん並びます。そして店内ではカセットデッキでテープを流しており、えみさんが作業の合間にさらりと裏返す、その一連の流れが格好良くていつも密かに見ています。Ami curryオリジナルの選曲で作られたカセットも販売されています(多分最後の一つを私が買いました)。

住所
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻2-8-15
営業日
金曜日〜火曜日
定休日
水曜日・木曜日
IG
@amicurry

 

半田明日香 (はんだあすか)
1992年生まれ、東京都出身。写真の専門学校を卒業後、都内の生花店に就職。2022年4月、神奈川・大磯町に花屋〈烏〉をオープン。生花だけでなく、鉢もの、リトルプレス、レコードなども並ぶ。
IG:@kalasu_h

Text by manmaru