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#30 自然への扉を開く、トレイルプロデューサーのクルマ旅
2023.11.17

#30 自然への扉を開く、トレイルプロデューサーのクルマ旅
by 千葉達雄

ガイドブックやメディアに載っていない自分だけのロードマップを作る旅。この連載は、そんな“自分らしいクルマ旅”のススメを、多拠点生活をおくる人や、地方在住者、移動が日常にある人など、日本のさまざまな土地で根を下ろす人々に聞くもの。今回はトレイルプロデューサーである千葉達雄さんが、トレイルヘッド(登山口)へ向かう旅を紹介してくれる。

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トレイルヘッドへ向かう旅

千葉達雄/トレイルプロデューサー

area:静岡/山梨/神奈川

Mt.FUJI100 (旧称:ULTRA-TRAIL Mt.FUJI) の共同代表を務め、〈IZUTRAIL Journey (伊豆トレイルジャーニー:略称:ITJ)〉の総合プロデュース、トレイルランやサイクリングなどアウトドアスポーツを楽しむ拠点〈ITJ BASE Shuzenji〉の運営も担う千葉達雄さん。山や森などの大自然の中をランニングするスポーツ『トレイルランニング』に関わる仕事柄、新しい風景・体験を求め、様々な土地を訪れるという。そんな彼にとって、クルマは大事な移動手段であるとともに、仕事場でもあり、寝る場所でもあり、緊急避難場所でもある“頼りになる相棒”だ。

「自分のプライベート空間をまるごと移動できることがクルマの魅力です。その時の気分や出会いで気軽に行き先を変えて新たな経験の旅へと出発することができる。自由きままな一人旅ができることこそ、クルマ旅の醍醐味です」

今回、千葉さんが紹介してくれたのは、『トレイルヘッドへ向かう旅』。伊豆半島出身で現在は伊豆箱根富士国立公園の中心部分に住み、そこを舞台とするトレイルランニングレースを仕事とする彼にとって『トレイルヘッド(登山口)』は身近な存在。
静寂の中、独りでトレイルヘッドへと向かうドライブは、時の流れと季節の移り変わりを感じ取り、多くの野生の生きものたちとの運命的な出会いを楽しむ、お気に入りの時間だという。

「トレイルランニングや登山・トレッキングを愛好する人にとって、トレイルヘッド(登山口)へ向かうドライブは自身を非日常へと誘ってくれる、一番ワクワクする時間だと思います。自然豊かな日本では、多くの人々が、自宅からクルマでわずか1時間足らずの距離に、トレイルヘッドを見つけることができるはずなんです。1日をまるまる使う行程も良いですが、1時間〜3時間程度の身近でお気に入りのトレイルヘッドを見つけて、自分のライフスタイルのアクセントとして楽しんでもらえると嬉しいです。もちろんアウトドアにはリスクもあるのでそこも知った上ですが」

 

静岡県伊豆市

01.天城山隧道(旧天城トンネル)

伊豆山稜線歩道の起点

川端康成『伊豆の踊り子』松本清張『天城越え』の舞台にもなった重要文化財・天城山隧道は伊豆半島のトレイルの要衝。富士箱根伊豆国立公園特別保護地区の八丁池や万次郎、万三郎(伊豆半島最高標高 1,406m)方面と遥か43km先の修善寺温泉まで繋がる伊豆山稜線歩道の起点となる。八丁池を回る約11kmの周遊トレイルも設定バリエーションは幅広い。
ここへ至る森に覆われた車道も未舗装林道が残されており往時を偲ばせる。

住所
〒410-3206 静岡県伊豆市湯ヶ島

 

静岡県賀茂郡

02.仁科峠

富士山、駿河湾、南アルプスを望む絶景ポイント

僕がプロデュースしているトレイルランニングレース〈伊豆トレイルジャーニー(ITJ)〉においても絶景ポイントとして知られ、熊笹越しに北側に続く長い山稜線の先には富士山、西に目を向けると駿河湾を望み空気の澄む冬季は遥か先に冠雪した南アルプスを望む絶景ポイント。クルマでアクセスできるポイントでバイカーやドライブの方が訪れる事が多いものの、公共交通機関がないためハイカーやトレイルランナーには不便な場所で修善寺温泉にあるITJのコンセプトカフェ&ゲストハウス〈ITJBASEShuzenji〉で実施している無料トレイルヘッドへの送りプランが一番人気に。僕は子どもの頃から当たり前に見ているけど、標高3,000mを超える山を海越しに見られるのは世界的にみても珍しいらしいよう。
また駿河湾は日本一深い湾で最深部は2,500mに達する。実は仁科峠から見える景観は高低差6,000mを超える大パノラマを一望しているのだ。

住所
〒410-3500静岡県賀茂郡西伊豆町

 

山梨県南都留郡

03.山中湖きらら

富士山も望める1DAYハイク・トレイルランニングにも最適スポット

富士山周辺を100マイル(160km)走破するトレイルランニングレース・『Mt.FUJI100』のエイドの一つとなっている山中湖畔にあるこの施設は富士山を望むトレイルの起点としては最適の場所。山中湖きららから明神山(鉄砲木の頭)〜山伏峠〜石割山〜大平山を巡るコースは随所に富士山を望み、1DAYのハイク・トレイルランニングには最適の場所でもある。
温泉やキャンプ場、カフェなども充実しリゾート感があるエリアでアフタートレイルも楽しい。

住所
〒401-0502 山梨県南都留郡山中湖


photo:NPO法人富士トレイルランナーズ倶楽部

 

神奈川県足柄下郡

04.箱根やすらぎの森

富士山や芦ノ湖も眺められる絶景ポイント

48kmほどの箱根芦ノ湖の外輪山のトレイルは関東にトレイルランナーに取って一度は挑戦したいコース。ただ日本屈指の観光地だけあって芦ノ湖周辺は当然ながら金時山周辺などのトレイルも混み合うエリアでもある。僕のお気に入りは家から40分足らずで到着する事ができ、人も少ない芦ノ湖の南側にある箱根やすらぎの森の駐車場。ここから外輪山のトレイルを登り、三国山を越えて湖尻峠から湖畔に降りて芦ノ湖西岸歩道で戻る約20kmのコース。伊豆からこの場所向かう県道20号線自体も富士山・伊豆半島・駿河湾を望むドライブコース自体も絶景で夜景も美しい。

住所
〒250-0521 神奈川県足柄下郡箱根町箱根381-4

 

千葉 達雄 (ちばたつお)
トレイルプロデューサー。2013年、伊豆における新しい旅行コンテンツの創造のため、〈伊豆トレイルジャーニー〉を企画・プロデュース。 伊豆市内に株式会社ソトエを設立し、 伊豆半島からアウトドアカルチャーの発信を目指している。修善寺にて〈ITJ BASE Shuzenji〉の運営も行う。
IG:@tatsuo_chiba

Text by Kouta Hara