グランドツアー
クルマ好きからは賛否両論。だけど世界一笑えるクルマ番組。
クルマで遊ぶ、おじさんたちの豪快な悪ふざけ
イギリスBBCで放送されてきた老舗カーショー『トップギア』。『グランドツアー』は、その人気パーソナリティーだった3人のおじさんと名物プロデューサーがBBCから離れ、2016年にAmazonのオリジナル番組として始まったもの。芸能人によるタイムアタックや新車紹介など、バラエティ豊かな小コーナーもありながら、メインコンテンツは世界を股にかけた3人のクルマ旅。クルマ好きでなくとも純粋にコメディとして楽しめる番組だ。
「この番組に出てくるクルマは、古今東西多種多様。希少な旧車から、最新の電気自動車、時には戦車に乗り、歯に衣着せぬ3人がそれらを愉快痛快に批評します。最新のスーパーカーを紹介して正統派のエンスージアストを楽しませたかと思えば、クルマを爆発させたり、海に沈めたり、水陸両用にしたり、ジェットエンジンをつけるなんて魔改造をしたりと、やりたい放題。世界の雄大な自然や美しい街を舞台に、おじさんたちがおバカな争いを繰り広げます。日本じゃ真似できないスケール感も魅力で、観ていたら小さな悩みも吹っ飛びます。(鈴木純平)」
出演：ジェレミー・クラークソン／リチャード・ハモンド／ジェームズ・メイ
プロデューサー：アンディ・ウィルマン
公開： 2016年〜
配信：Amazonプライム・ビデオ(2023年12月現在)
アーミッシュ︎in NY
この機会にいっき観したい社会派リアリティショー
無垢な若者たちがNYで自由に出会う
移民当時の生活様式を重んじ、北米で昔ながらの生活をしている、キリスト教アナバプテストの宗派であるアーミッシュとメノナイト。ディスカバリーチャンネルが2012年に制作した『アーミッシュin NY』は、宗教的な理由で現代文明と距離を置いてきた5人の若者たちが、夢を追うためにニューヨークに引っ越し、現代的な生活と出会う様子を切り取ったリアリティショー。コミュニティとの生活を投げうって、家族との縁を切る覚悟までして大都会に出てきた彼ら。その行く末に待つものは希望か絶望か？
「僕はカナダ滞在中にメノナイトの人の暮らしに触れる機会があり、それから北米のアナバプテストの暮らしに興味を持つようになりました。ただし、文明と距離を置いている彼らはカメラに撮られるのを嫌うため、彼らのライフスタイルが観れる映像自体が希少です。この作品では彼らの生活の一部を紹介しながら、夢を追って外の世界に出た若者たちの葛藤とニューヨークの狂気を対比。ただの色恋沙汰ではなく、宗教観との摩擦を描くリアリティショーに昇華しています。クルマではなく馬車で移動をしていた彼らが、宗教という敷かれたレールから逸脱し、自分の人生を歩み出す姿を観る……。“乗ること”を通して人々の生き方を捉え直す、noru journal読者におすすめの作品です。(鈴木純平)」
出演：ジェレミア・レイバー／ケイト・ストルツ／エイブ・シュマッカ／レベッカ・シュマッカ／サブリナ・ハイ
監督：エリック・エヴァンジェリスタ
公開：2012年〜2014
配信：YouTube (2023年12月現在)
Recommender：編集・ライター 鈴木純平
ニッチなことや新しいモノ、ローカル文化に心惹かれる編集・ライター。アウトドアライフスタイル誌の編集を経て独立したのち、海外を旅して暮らすなど自由を謳歌。長野への移住を検討している。
BEEF
他人同士の激しい怒りの応酬を描いた奇作
収集がつかなくなった報復の連鎖、その先には？
2023年4月から配信されているNetflixのオリジナルドラマシリーズ。物語の主人公は、業績不振に苦しむ工事業者のダニーと、複数の事業を経営しながらも大きなストレスを抱える実業家のエイミー。ダニーが運転するピックアップトラックがエイミーの運転するSUVにぶつかりそうになったことをきっかけとなり、お互いが長期間にわたる報復の応酬に身を投じていく。
「ありがちな衝突未遂が壮絶なあおり合戦に転じ、当事者の怒りがその家族や友人にも波及して……というダークコメディー。小さな怒りを発端に、嫌がらせが過激にエスカレートするなかで、自分たちの中にある対処できていない問題や不安が表面化して、それぞれのミッドライフクライシスも相まって収拾がつかなくなっていく。そのさまは面白くもあり、おかしくもあり、悲しくもあり。というか、こんなに長い間怒りの炎をたぎらせ続けること自体がすごい。こんな熱量、どこにもない。また、懐かしいエンディング曲の数々がど真ん中すぎて、ダニー＆エイミーと同世代には刺さるはず。(倉石綾子)」
出演：スティーブン・ユァン／アリ・ウォン／デヴィッド・チョー／ジョセフ・リー／他
脚本：イ・サンジン／キャリー・ケンパー／ジーン・キョング・フレイザー／アレックス・ラッセル
監督：イ・サンジン
公開：2021年
配信：Netflix (2023年12月現在)
ベーリング海の一攫千金
正月はカニ漁を観ながらカニ鍋をつつく
荒波に揉まれる漁師たちの人生譚
ディスカバリーチャンネルで2005年から放送されている人気のドキュメンタリー。毎年死者が出る程に過酷で、世界一な仕事と言われる『ベーリング海のカニ漁』。その漁師の年収は1億円を超えるということで、一攫千金を目指す漁師たちにもそれぞれの思いがある。同シリーズは彼らの仕事とくらしに長期密着したもので、2023年時点でシリーズ19まで制作されている。
「過酷な漁場でのカニ漁師たちの仕事に迫る、超ロングランシリーズ。私の実家では、正月にディスカバリーチャンネルで同番組をキャッチアップしながら、カニ鍋をつつくのが恒例行事になっています。みどころは荒れた極寒の海上で繰り広げられる、漁師たちの人間ドラマ。10数年出演し続けている船＆クルーもおり、もはや釣果のゆくえを見まもる私たちも親戚気分です。シーズン後に放映されるシリーズ総集編では、漁船に乗り込むカメラクルーたちの成長も見もの。ひどい船酔いで半死半生だった若手が、大シケ＆凍結した甲板で機材を担いで撮影できるようになっていて、これまた親戚気分で安堵しています。(倉石綾子)」
脚本：T・J・スコット／デビット・ヤング
監督：T・J・スコット
公開：2005年〜
配信：ディスカバリーチャンネル／U-NEXT／YouTube (2023年12月現在)
Recommender：フリーエディター/ライター 倉石綾子
コロナ禍に東京ー長野県宮田村の2拠点生活をスタート。南アルプスを中心に縦走したり、伊那谷のグラベル＆トレイルをグラベルバイクやマウンテンバイクで走っています。
IG:@ryokokuraishi
ペンションメッツァ
長野の山の中で繰り広げられる癒し系ドラマ
ゆったり流れる時間がここちよい
2021年にWOWWOWプレミアムで公開された、全7話のオリジナルドラマ。長野の別荘地に佇む『ペンションメンツァ』を営むテンコ(小林聡美)のもとに、個性的なお客が訪れ流というストーリー。1話完結形式で毎話異なるゲストが登場し、名優小林との２人芝居が繰り広げられる、その独特の世界観に惹き込まれる。
「登場人物たちは色んな理由でこのペンションにたどり着き、大切なことに気づいていきます。またテンコ自身もお客さんと同じように、人々と対話する時間の中で少しずつ成長していく。人ってそれぞれに異なる物語があって、それを誰かに聞いてほしいと思う生き物。このドラマは自分と他人との対話を通して、登場人物の感情、生き方を描いています。人それぞれにスっと心が軽くなる瞬間があると思いますが、そんなシーンが詰まっている作品です。大貫妙子さんが歌う“空を飛ぶ猫〜♩”というエンディングのフレーズが頭から離れなくなるので、あしからず。(小野真理子)」
出演：小林聡美／役所広司／山中崇／もたいまさこ／他
脚本・監督：松本佳奈
公開：2021年
配信：WOWOWプライム／U-NEXT／hulu／FODプレミアム／Netflix／TELSA (2023年12月現在)
ちょこっと京都に住んでみた。
暮らすひとの目線から見た、古くて新鮮な京の町
地元の空気感が落としこまれた不思議なドラマ
2019年、テレビ大阪製作の『年末スペシャルドラマ』として放送され、2022年には連続ドラマとして続編が描かれた人気作品。ドラマ×ドキュメントという一風変わった手法で、『観光地に一切行かない京都案内』、『住んでいる人しか知らない京都』を描いている。主人公は東京で暮らす江東佳奈(木村文乃)。一作目では看病のために、続編では関西出張のために京都にすむ大叔父(近藤正臣)の家に滞在し、大叔父におつかいを頼まれることに。そして佳奈はそのたびに“秘密の京都”と遭遇。いろいろな場所や人と出会う中で大叔父の真意を知ることになる。
「京都に滞在して日本の伝統や人々に触れることで、佳奈の心に刺さったトゲが次第に解され、京都に対する新たな感情が芽生えていく。みんなで自転車を漕ぎ炊事場に立ち食事をする。うつろう人間関係や感情が静かに描写されていて、観ていて心が落ち着きます。京町に惹かれる私にとっては、憧れる空気感。それに京町家と赤色のルノー4も印象的。年の瀬にゆっくりとしたい人におすすめです。(小野真理子)」
出演：木村文乃／古舘寛治／玉置玲央／徳永えり／他
脚本：横幕智裕
監督：吉見拓真
公開：2019年〜
配信：U-NEXT／Hulu／Amazon プライム・ビデオ／FODプレミアム／Lemino (2023年12月現在)
Recommender：noru journal 編集 小野真理子
東京在住・長野県出身。
メディア「mark,onyourmark」「perfectday」の編集スタッフとして携わったのち、フリーランスで活動。ヨガインストラクターとしても日々勉強中。移動は主に自転車。
IG：@marik.ono
illustration by by Rui Nakamura / text by Junpei Suzuki / edit by Mariko Ono
