column

オンラインモーターマガジン〈DRIVETHRU®︎〉創刊から10年。
あの頃描いていたのは“もっとすごい未来”
村松:さて、本日のゲストは、オンラインモーターマガジン〈DRIVETHRU®︎〉のディレクターである神保匠吾さんにお越しいただきました。よろしくお願いします。
神保:よろしくお願いします。ありがとうございます。
村松:案外、神保さんにちゃんとインタビューするのって初めてかもしれない。編集として立ち会っていることが多いんですけど、インタビュアーは別にいて横で聞いてるっていう事が多かったかもしれません。今日初めてちゃんと伺います。
神保:ありがとうございます。いいですね。
村松:でははじめに神保さんのプロフィールを簡単に紹介します。1982年生まれ、福岡県出身。大学卒業後、ロンドン留学を経て、ファッション誌を出版する〈カエルム株式会社〉へ入社。2014年にオンラインモーターマガジン〈DRIVETHRU®︎〉創刊。ディレクターとして現在に至る。〈POPEYE〉、〈UOMO〉など他媒体へのエディトリアルや連載など幅広く活動中。2021年にコンバートEVにてグッドデザイン賞を受賞。目下「モバイルSS」の普及に向けて奮闘中。とのことですけれども、〈DRIVETHRU〉が2014年創刊なので、10年目?
神保:そうなんですよ。10年経ってしまいましたね。やばいですよね。しまった、みたいな(笑)。ちょっともう恥ずかしいぐらいですね、10年も経って。早いなみたいな感じですけどね。
村松:その恥ずかしいという、その心は?
神保:やっていることが進歩しているのかな、みたいなのと、10年前とやっていることは一緒だなっていうので。もうちょっと〈DRIVETHRU〉を始めたときの10年後って考え方がガラッと変わったりするかなと思っていました。けど、良いのか悪いのかあんまり変わらないんだなって。基本、自分の興味本位があって取材して回ったりとか、モビリティカルチャーみたいな世界をみているんで、10年後はもっとすごい未来が待っているのかなみたいな。ドラえもんの未来じゃないですけど、そういうのがあるのかなみたいなのをぼんやり思ってましたけど、10年経って、プロジェクトで完成させたものとかは増えてはいますけど、そんなに変わらないんだな、みたいな。
村松:じゃあ神保さんが思っていたよりも世の中が変化してないって感じ?
神保:変化しているとこは変化しているかもわかんないですね。10年前の〈DRIVETHRU〉を始めたときはEVのイの字もいってない中、僕はEVとかのニューウェーブなところにずっと興味があったので、それが今や、家に帰って夜テレビのニュースでEVがどうのこうのっていうような時代にはなったので。それは変わったなというのありますけど、10年ってこんなにすぐやってくるんだなという感覚はありますね。
村松:もうちょっと早くシフトチェンジしているイメージでいたんですね、当時は。
神保:もっと面白いっていうか、欲しくなるクルマとかがいっぱいあるのかなとは思ったりはしていましたね。でも、モーターショーの規模が小さくなっていくみたいなのは考えもしてなかったですよね。もっと取材するのが大変になっていくのかと思ったら、ネタがないみたいな(笑)。
村松:(笑)
神保:っていうのもあったりしますけど。良かったり悪かったりなんですかね。でも10年続けられているのは良いことだと思わないとだな、と思いますけど。
村松:長く続けるつもりで始めたんですか?
神保:長く続けるというか、アウトプットするものとしてメディアが必要だなという感じではあるんで。広く紹介したいというか、役に立てるような仕事にするならメディアにするのがいいな、と。あんまり長くとかは考えてなかったですよね。
村松:気づいたら10年経ったなーぐらいの感じですよね?
神保:そんな感じですよ。
村松:〈DRIVETHRU〉のことは後編にたっぷり聞きたいなと思っているんですけど、プロフィールでも紹介させていただいた、コンバートEVでグッドデザイン賞受賞っていうのがあります。そのコンバートEVについて、前編では伺っていきたいなと思っています。簡単にコンバートEVについて説明してもらってもいいですか。
神保:はい、コンバートEVですね。コンバートEVは簡単に言うと、ガソリン車のエンジンを取り除いてEVの電気のモーター(バッテリー)を載せて、パワートレインをEVにそのまま変える、コンバートするということですね。というのが、簡単に言うとコンバートEVです。基本的に今コンバートEVをやっているクルマは、古くて簡単なシンプルな構造のクルマ。エンジンを下ろしてEVのユニット乗っけるみたいな。エンジンスワップみたいな形で電気にコンバートするっていうのが簡単に言うとコンバートEVですね。
村松:神保さんはそのご自身の愛車をコンバートEVされていますけども、これを実際行ったのが2021年ってわけじゃないんですよね? 受賞したのが2021年で…
神保:グッドデザイン賞では、僕はディレクションの方で名前が書いてありますけど。〈OZ MOTORS〉っていうショップがコンバートEVを10年ぐらいメインでやっていて、僕はそこでお仕事を一緒にしながらもっと広く伝えたいっていうので、ああしよう、こうしようみたいなのを一緒にやっていたんですけど。僕のBMWはコンバートEVで、〈DRIVETHRU〉のタイアップみたいな感じで〈OZ MOTORS〉と一緒にやりました。結構長くかかってて、何年にできたのかな、今2回車検を受けているので、多分車検にナンバー取ったのはコロナのタイミングとかでしたね。
村松:じゃあ2020年ぐらい?
神保:ですかね、25年だから。去年2回目の車検なので。ナンバー付けるまでに4、5年かかっていたと思います
村松:そうなんですね。
神保:コンバートするのが大変というよりも、僕が学生の頃に乗っていて、イギリスに留学するのにあたって車のナンバーを切って福岡の実家とか友達の駐車場だったりを転々と置きっぱなしにしてたんで、まあボロボロになってたんですよね。
村松:うん。
神保:関東に持ってきて、いざ始めようと〈OZ MOTORS〉に入庫してクルマを持ち上げたらやっぱアンダーフロアとかグサグサで、さすがにそのEVになるとトルクが低速から発生するんで、ボディが歪んじゃうよ、みたいな。で、ちゃんと板金しないと無理みたいなのでボディーのリペアが結構時間がかかりました。
村松:へえ。
神保:それも〈イスズスポーツ〉、いすゞの旧車屋さんの知り合いのところに入れて、手の空いたときにお願いしますと。通常、手なんか空くわけないんですけどそういうお店は(笑)。ちょこちょこいつ出来上がりますかね? みたいなのを言いつつ、休みのときにやってもらったりしてました。コンバートEVの部品は割とすぐ揃うんですけど。BMWの純正のパーツが時間かかってましたね。ブレーキやら、何か1個足りないみたいな。全て揃わないと作業が始まらないんで。〈OZ MOTORS〉もいろんなお客さんと新しいカスタムとか開発があるから全部優先順位が1番高いわけじゃないので。あとは、今もですけど、後になればなるほど技術革新があるので、バッテリーだったり、いいものが出てくるわけなので、急いでつくったからいいってわけじゃないなと思った。日々、いろんなものを取材だったり、見て回っているから、あんまり急いだからといっていいものはできないなとは思いました。〈DRIVETHRU〉立ち上げる10年前ぐらい前からコンバートEVはもうやるつもりでいたんで、〈OZ MOTORS〉の古川さんとは話していて。そのときはリチウムイオンのバッテリーでコンバートEVまでできる時代じゃなかった。全然加速感とか走りの乗り味は、僕が求めているものとは全然はまらないから、もちろん待った方がいいよと言われていて。それから5年後ぐらいですかね。ようやくリチウムイオンバッテリーのニーズとかのリユースのやつを調整して使えるようになってきたのがその頃って感じですね。今はさらにもうちょっと良くなっていますけどね。
この投稿をInstagramで見る
村松:じゃあクルマも治り、リチウムバッテリーの進化もある程度いったところで、クルマは完成してナンバーを取って、それが4年ぐらい前?
神保:って感じですかね4年前ですか? 4年か5年。
村松:うん、4,5年前。そこに行くまでにスタートしてから4年くらいかかっている?
神保:そうですね。スタートするのには結構かかっていたと思います。初めからわりとBMW
のやつはだいぶ前から準備していましたね。だから、あの新羽のスタジオとかも、もうオズの近くにあって1番都合がいいからっていう。たまたま見つけたみたいな。
(HOXTON STUDIO 横浜市新羽町:Nippa SA HPから引用)
村松:そうなんですね。
神保:スタジオでも使えると思ったから。
村松:あのスタジオいいですよね。
神保:あそこはね、光も。ちょっと夏暑すぎるんですよ。
自身にとってのドリームーカーであったBMW E21が
コンバートEVというソリューションで蘇るまで
村松:元々〈DRIVETHRU〉立ち上げる前からコンバートEVは気になっていた、やるつもりでいたって感じですか?
神保:気になっていたし、コンバートEVに限らず、何かモビリティのソリューションになり得ることで世には出てないことがたくさんあるなっていうのを取材したり、気づいたりしてました。いろんな媒体が取り上げて紹介するというのはあったとしても、継続的に何か紹介しないとリアリティが証明できない。たとえば、何かのクルマ特集で1回紹介されて、「いいな、こういうのもあるんだな」ってなっても、それがどうランニングしているかはわからないじゃないですか。その中でも数名気になればずっと追うかもわかんないですけど、よほどそのことに興味がない限りは追わないので。継続的にできるプロジェクトにしたいなっていうのが、〈DRIVETHRU〉始める前とかすごくあって。
村松:うん。
神保:今またいろいろ「モバイルSS」でやっていますけど、ルーメットでトレーラーとかもプロジェクトにして、その1台でどういうふうに今も何かで使われていることを発信していくためにはどうしたらいいかなと思い、考えついたっていうのは〈DRIVETHRU〉。何か解決策みたいな感じですかね。メディアにして。
村松:今のBMWはロンドン留学に行く前に1回車検切って実家に戻しているんですよね?
神保:学生の頃、僕福岡で、クルマが好きだったので中古車屋さんでバイトしていたんですよ。BMWのディーラー卒業したOBの人たちがやっているお店だったので、BMWが中心になってて。ドイツ車とかその他のいろんなクルマとかも扱っているお店で。今のBMW E21っていうんですけど、21が欲しいとは言ってはいたんですけど全然見つからないし、クルマとしての完成度も高くないから、お店のその先輩たちは現役時代にE21を新車で売っていたけど、もうあんなクルマ捨ててたよっていう(笑)
村松:そうなんですね。
神保:「欠陥車みたいなクルマだよ」みたいなのをよく言われていて、その次に出たE30って名車の方はギリギリ乗れるから「神保も乗るなら、とりあえずE30ならみつかるから下取りがあったら、それに乗ったらいいんじゃない」みたいなので。結局E30すぐ見つかったんですよね。E30さすがやっぱ名車だから、僕もそれ乗って九州いろんなとこ行ったりとか、サーフィンばっかりしていたんで福岡から宮崎行ったりみたいなのもしょっちゅう繰り返していたんです。たまたまその新車のBMWのディーラーの奥の駐車場に、E21の逆スラントっていう先っちょがとんがってる顔だけが見えて、「わ! 21がある!」と思って、バイトしていた社長にそのディーラーに21が絶対あると思うんで、今電話してください、ここでって聞いて(笑)。電話してもらったら、本当に21が下取りで入っていて、「どうにかそれを売ってもらえないですかね」って聞いてもらったら、もう誰もこんなクルマ欲しくないから売ってはもらえそうよ、みたいなので。そのまま横流ししてもらったのが僕の今の21なんです。
結構そのときはドリームカーではないけど、すごいこの夢が叶った! ぐらいな感じでした。納車といってもバイトをしていたんで、自分で登録行っておいでみたいな感じで、陸運局に行くときにはじめて運転したら、あれこんなもんなのみたいな(笑)
村松:(笑)
神保:デザインは素敵ですけど、いろんなクルマをそのときもあーでもないこーでもないって乗っていたんで、いざ乗ってみたら、あれ、こんなもんなんだというかちょっと物足りないというか。
村松:乗り味が?
神保:乗り味というか、やっぱ古いクルマだ、みたいな。本当におじいちゃんみたいな感じですよね。でもそのときはエンジンの調子もあんまりセッティングできてなかったので、その後いろいろやってもらったら、割とパリッと走るようになったんですけど。学生時代に1年間2年E21乗ってサーフィン行ったり、友達と遊んだりしていたときの記憶はすごく鮮明で、ただ面白いなっていうのはあったんですけど、走りに関してはもうちょっとどうにかなりそうだなと思っていました。
その頃インターネットでググったりするのが新しい感覚で、遊ぶ時に自然と「BMWE21」とか検索していたら世界中のいろんなE21がバーって出てきた。カスタムしている人たちたくさん見て、E30のエンジンを載せたり、もっといいM3のエンジンを載せたりするのを見て、なるほどと。そのときは学生だったので、稼ぐようになったら現行のエンジンを載せたら面白そうだなと思って。走りはいまいちでしたけど、クルマとしてのキャラクターが好きだったので、これは手放さずに保管しておこうと思って、友人や知り合いの先輩の駐車場の空き地みたいなところに何とか置かせてもらっていました。最初は中古車屋さんのバイトしてたところに停めてたんですけど、さすがにボロボロになりすぎてたから「もうこれも捨てていいよね?」っていうふうに聞かれて(笑)、先輩や友達の駐車場に避難させました。
村松:へえ〜(笑)
神保:福岡に里帰りしたときとかにちょくちょく見に行ってはいましたけど、これは大変なことになってきたなと思いながら、ボロボロになっていたんで動かせないので大変でしたね。最初はBMWの現行のエンジンを載せたい、みたいな結構マッチョな考え方でした。
その後、いろんな仕事しながら日産のテクノロジーマガジンみたいなのを、プロジェクトマネジメントのアシスタントとしてやっていたことあって。ちょうど日産リーフが量産し始めのとき。日産のリーフの開発者たちを取材して回るというのがあって、どういう思いでつくられてるということだったり、EVでできることみたいなのを、一通り取材していって、もちろんリーフも乗ったりしている中で、これ、普通に楽しいクルマでしたし、全然違うなっていうのが直感的にわかったというか何か見えた気がしていて。
BMWにそのままモーターを載せたらすごいことになるんだろうなみたいなのをぼんやり思ってたんですよね。思い始めてから結構すぐに〈OZ MOTORS〉の古川さんとは出会いました。日産のGHQって横浜の本社のバレーパーキングみたいなところの真ん中に「CHAdeMO」があって、そこでは大体リーフが充電されているんですけど、そこにダットサンの古いフェアレディが入ってきたのを見かけて、「あれ間違えたね、あの人」と思っていたらそこで充電し始めて。
村松:へ〜ダットサンの。
神保:ダットサンのフェアレディっていう、Zになる前のやつですね。で、入ってきて「CHAdeMO」で充電し始めて、あれコンバートEVだ!と思って、駆け下りて仲良くなったのが始まりですね。
村松:へえ。
神保:そのときは〈DRIVETHRU〉の構想はまだなかったですけど、表に出ていないアンダーグラウンドにある日本のクルマづくりのカルチャーがあるなとは、ちょいちょい感じてました。そういうのをきっかけに、ピンホールから光が灯っているようなのを全部追っかけていったらいいだろうなって思ったのもひとつですかね。
でも、コンバートEVはわりとパーソナルというか、個人的なクルマにするソリューションだと思うので。その当時は、みんながクルマにある程度興味を持ってもらわないと、言っても意味がないだろうなと思っていたので、10年前の〈DRIVETHRU〉を立ち上げるときにコンバートEVをやっていてもそんなに響かなかったんじゃないかなって。
村松:早すぎた?
神保:早すぎたというか、今古いクルマにもうちょい若い世代の人たちとかがフォーカスしてるじゃないですか。
村松:うん。
神保:10年前ってどちらかというとカスタムバイクとかの方が、まだみんな興味を持ってたなっていう感じがあったんで、幸い良かったのかもっていうのはありますけどね。
村松:コンバートEVに興味を持ち始めてやろうと思ったときに、じゃあ福岡にあるE21をコンバートEVしようと思ったんですね。
神保:どうですかね、E21があったからコンバートEVっていうのに強く惹かれたのかもわかんないですし。
村松:どっちが先だったかわからない?
神保:わかんないですね。あのクルマを置いていなかったらあんまりそんなにコンバートEV自体にものすごくのめり込んでたかどうかわかんないですね。
村松:実際、どのぐらい実例があるんですか? コンバートEVって。
神保:コンバートEVは多分50もないんじゃないですかね、おそらく。
村松:50もない?
神保:登録するのが大変なので、「ビートル」のコンバートEVが多いとは思うんですけど国内だと。
村松:そうですね、なんかそんな印象かな、確かに。
神保:国内は少ないですけど海外は全然多いですよ。
村松:そうですか。
神保:アメリカとかは日本みたいに車検が厳しくない。それと、アメリカには「SEMA SHOW」ってカスタムカーのイベントもあったりして、一昨年取材に行きましたけど、エンジンスワップのカルチャーがあるんです。全然柔軟にV8に載せ換えるみたいな感じでEVに載せ換えたり。馬力がすごいだろうみたいな感じで載せ替えるっていうのですよね。そういうことにあんまりアレルギーがないのはありましたね。
村松:いわゆる旧車をEVにコンバートできるって、ある種わくわくするようなものがあって、もちろんちょっとお金はかかるんでしょうけど、もうちょっと日本で実例が増えてもおかしくないなと思います。50ぐらいしかまだ実例がないっていう理由はどの辺にあるんですか?
神保:費用もあるとは思うんですけど、やっぱり登録なんじゃないですかね。構造変更の部分で、BMWの車検にもエンジンのところは電動機になってたり、とちゃんとグレーなところはなく構造変更かけるんで、主にバッテリーの認証みたいなのにノウハウがあるんですよね。だからその辺〈OZ MOTORS〉とかがきっちりやってはいるんですけど、やっぱりそれが大変というか。通常のクルマみたいに陸運局さっといって取れるわけではないので、書類や事前のやり取りがかなり綿密にされているなっていうのもあります。〈OZ MOTORS〉ももっといろんな整備士さんができるようにキット化を進めてはいましたけど、なかなか大変そうですよね。っていうのがあるんで、どんどんEVが進化していったら法律も一緒に厳しくなっていくわけなんで、その辺が簡単ではないですよね。
村松:僕も実際乗らしてもらったことありますけど、E21のエンジンにどこが物足りなさを感じてたところをEVにコンバートして、今の走りは気に入ってるんですか?
神保:今の走りは、本当に気に入っているってかもう毎回乗るたびに鳥肌までは言い過ぎかもしれないですけど、びっくりしますよね。フロントヘビーというか、エンジンがなくなってモーターになっているんで、ハンドリングがものすごくしなやかになったりとか、加速もだったり、いい意味での違和感が常にある。基本今は新羽に僕のBMWを置いていて、今日は別のクルマ乗ってますし、いろんなクルマをテストしたりしますよね。っていうことはですよ、BMW E21を取りに行くときはガソリン車に乗っていくわけなんです。そこから出すエンジンってか、ONにして走り出してハンドルを切った瞬間にもまた全然違うから。あ、こいつだみたいな(笑)毎回驚くみたいな感じですね。
村松:フル充電でどのぐらい走るんですか?
神保:フル充電でものすごくエコな走りをしたら100kmいくみたいですけど100もいかない。いつも乗っているわけじゃないんで、踏んじゃうから、全然50いくいかないぐらいな感じだと思いますけどね。
村松:新羽って、あそこが今オフィス?
神保:スタジオですね。スタジオ兼ミーティング部屋みたいな感じで、誰かと会ったり、ゲストへの案内したり。通常は野沢のHOXTONに僕はいるんで。野沢と新羽まではもう全然、全然減らないんですけど。
村松:そうですか。電気代?いわゆる光熱費的なものはどうなんですか?
神保:燃料代みたいなことですよね? 気にしたことがないんですよね。今でも特に『モバイルSS』もやってるので移動中電気のやつは。あれからも充電できるようになったので、ちょうど今新羽に置いていますけど。モバイルSSの方は今ソーラーで、檜原村は、あの場所谷底みたいだったんであんまり発電してなかったんですけど。新羽のスタジオはわりと日当たりが良くて、1回も系統電力に繋いでなかったりするんで、ちょっとこのBMW充電したりしてたんでなんかあのサイクルができると本当にこれ0円だなっていう感じですね。
「EVをもっと普及するには」その問いから始まったプロジェクトたち
村松:そうですよね。モバイルSS、ちょっとその説明もぜひしてていただければと。あれは移動式で、かつソーラーで充電しつつ、中にバッテリーがあるトレーラーハウスみたいな感じですか?
神保:そうですね。取材していただいたときに「コンバートEVみたいに、古いガソリンスタンドを充電スタンドみたいにコンバートしたくって、その企画を実現できないかいろいろ探っている」みたいなことを言ったのを今思い出しましたけど。
村松:言っていましたね。そうそうそう。
神保:あれさすがになかなかできなくて。ガソリンの給油は5分もかかんないのに、充電ってどうやっても30分ぐらいかかって、なおかつ、電気代がそれに比べたら全然安いからマネタイズでも無理があるので、興味本位でできるレベルじゃないなと。何か法的にだいぶ淘汰された時期があって。ガソリンのタンクをガソリンスタンドが洗浄しないといけないみたいな法規制があった後。その頃にいろいろなガソリンスタンドさんがなくなっちゃって今生き残っているところはある程度ちゃんとやっているところなので、あんまり誤魔化しきかないっていうのがあります。実現するのはなかなか難しそうだなって思っていて、自分たちでスタンドをつくるしかないかなというところまで考えてたんですけど、つくるなら、檜原村を拠点にするのが面白いだろうなと思ってて目をつけてたんです。
この前お越しいただいたビレッジって、コワーキングスペースがいちから新築でつくるみたいな構想があったんでそこに乗っかった方が広がるな、みんな知ってるわけなので。たまたま一緒にやっていたオフィスキャラバンっていうモバイルオフィスをやってるルーメット、トレーラーがあったんで、もういっそのことモバイル充電器にしてしまった方がいいんじゃないかなって思いついてしまって、そもそもコンバートEVに対する感覚や、面白かったりするのは、「EVをもっと普及するにはどうしたらいいかな」が始まりなので、航続距離とかインフラがないという問題に対して、充電器自体が動けば解消できるじゃないかと思い始まったのがモバイルSSって感じですね。
村松:まだ1台ですか?
神保:まだ1台ですね。まだ1台というか(笑)今企画がどんどん広がっているから面白いんですけど、モバイルSSつくったはいいけどEV充電してんの自分だけだなと思って(笑)
村松:(笑)
神保:何人かいらっしゃいますけど基本普及してないものだから、まだこれ以上つくってもね、みたいな。発電した電力を使って仕事をしたりといったことでも、単純なことなんですけどすごく気分がいいんで、僕以外にもコワーキングのヴィレッジにおられる会員さんたちがモバイルSSの中で仕事するとリアクションが良くて。もう、EVが普及するまで置いといて、もっと違う使い方にしていこうかと。電気がある方が役に立つんで、いざってときにも。
モバイルSSは別の方向にもっと広げるために動き始めて、今最近リスニングバーみたいなやつを路上でやっています。それもコワーキングで僕も檜原に行ったら、モバイルSSの中で仕事した方が集中したりとか、ポッドキャスト録音したりとか、遮音性もあって、音も元々良かったんですよね。Bluetoothのスピーカーとかで聴いていて、ちゃんと音響入れたらすごいことになりそうだなと思って。ヴィレッジの代表の清田さんが小松音響の小松さんと仲良しで、小松さんに真空管アンプで設計してもらったらいいんじゃないすかねみたいなので、あれよあれよですぐリスニングルームができました。6畳ですかね、中は。で、リスニングルームができたってことはリスニングバーだなと思って、バー部分は今やっているって感じですね。
この投稿をInstagramで見る
村松:SNSで見ましたけど、あれはつまり緑のMINIの中がバー仕様になってて、そのクルマでモバイルSSの中がリスニングルームになっていて、各地移動しながらゲリラ的にバーもやりつつ、ルーメットの中で音楽も聴けますってことですか?
神保:そうですね。本当にMINIがバーカウンターになっているような感じでそこでお酒を注文して、ルーメットでモバイルSSの中に入ったら、リスニングルームになってるんで今んとこ僕が大音量で会話ができないぐらいかけてますけどみんなそこでいい気分になって帰っていただくみたいな感じですね。
この投稿をInstagramで見る
村松:〈DRIVETHRU〉というか神保さんのやられていて面白いところって当然取材もされてますけど、コンバートEVしかりモバイルSSしかり、自分発信でプロジェクト化してコトを起こして、そんなイメージですよね。
神保:そうですね。取材して、もちろんその取材したものも紹介するんですけど、もう一歩自分で何かやっちゃうんですよね。頭の中ではこういうことができたらもっと面白いんじゃないのかなとは考えていて、面白いことを記事化して紹介したいとなると、自作自演な感じで、これやってみましょうというのをどんどんつくってきている感じなんですよね。自分が動くところは自分で動きますけど、プロフェッショナルな人を見つければその人にどんどんやってもらう。
村松:お願いしたりして。
神保:うん。ていう感じですかね。
EVは「ガソリン車とは別の生き物」。今後の動向は?
村松:ちょっとEV事情についても伺いたいですけど何か神保さんが捉える今のEVって、どんな状況で、これからどうなってくっていうふうに思ってますか。
神保:EV事情ですよね。EVシフトって一昨年ぐらいが1番すごかったですかね。でもさすがに無理があるよねというところで、今トーンダウンしてるっていう印象はあるんですけど、ただ、いろんなメーカーさんも後にはもう引けない状況にはなってるんで、EVやめますとも言えないんじゃないかなと思っていて。一方で、日本のメーカーさんもハイブリッドがやっぱり良かったよね、とは言えないと思うんですよね。多分ここ数年はちょっとハイブリッドでいけるかもわかんないんですけど。無理なんじゃないですかね。ただもう事を複雑にさせてるのは、トランプさんになって、ちょっとまた本当に掘るのかなみたいなところだったりとか、ああやってはいるけど実は結局、テスラがどうなるかまだわかんないんで難しいよなっていうのと。その隙に中国勢が浸透するのかどうかっていうのはあると思うんですけど、アメリカに中国車は入ってはないんで、逆に日本から向かって反時計反対周りにどんどん中国のクルマが増えていくんだろうなっていうのはあります。何とも難しいですよね。全部EVになるってことはないと思いますけど。割合が変わっていくんだと思いますけど、極端ですよね、日本の普及の低さ。
村松:ちょっと日本全体もトーンダウンして、メーカーさんは言わないまでも、ハイブリッドもいいんじゃないかムードになると急にみんな安心したように、ブレーキ踏んだ。そんなムードありましたよね。
神保:そうですね。でも電気のね、ガソリン車とやっぱ別の生き物なので。クルマって停まってる時間の方が長いので、ガソリン車はガソリンを入れに行くのも行為じゃないですか。でも、EVは止まってるところに充電器があれば、別に行くことはないんですよ充電しに行くことなんて。
村松:エネルギーを補給しに行く必要がない。
神保:ないんですよ。だから新羽に今止めているこのBMWとかも、停まってるときに充電するんで、特に出先で充電するってことはもうないんですよね。なので、その考え方が浸透しないとかな。っていうのと、iPhoneも出先で赤く表示されているのを、ちょこっと充電してせめて緑ぐらいにしたい、ぐらいはわかりますけど、満タンにはしないじゃないですか。あの感覚なんだと思うんですよね。
村松:寝るときにすればいいみたいな。
神保:みたいな。それがガソリンを満タンにする感覚で常に考え始めるとなかなか難しいなっていうのはありますね。
村松:確かに確かに。面白いな。
神保:EVは興味ありますか、村松さんは?
村松:EVは、興味ありますよ。僕、長野じゃないですか自宅が。会社は東京なんですけど。今住んでる町は御代田で、そこまで雪が降るわけでもないんですよね。だから、案外多分テスラでも、ほぼほぼ2月とか3月の雪降る時期とかは道によってはやっぱりちょっと怖いけど、多分ほぼ暮らせるんですよ。家族で話したこともあるので、2台目は考えたりしたこともありますけど、とはいえ仕事柄、結構山の中にロケハン行ったりとか、やっぱり雪山に撮影に行くこともあるんで、ちょっと怖いですよね。
神保:じゃあ、サイバートラックとかでしょうね。
村松:(笑)
神保:パワーウォールとかあるから、家にバッテリーつけて、そこから充電を溜めといて、みたいなやつは使えそうなんで。
村松:そうですね、そのエネルギーのことだけで言うとすごい興味ありますね。今乗っているクルマも古いんでやっぱ燃料費すごいかさみますし。
神保:あ、長野はそうですよね、ガソリンが高いんですよね。
村松:長野県ね、ガソリンめっちゃ高いんすよ。
神保:給油場が遠いからなんでしたっけ。
村松:そう言われてますね。多分その通りなんだと思いますけど、だから群馬とか週末行くと絶対入れますよ。
神保:群馬も遠そうですけどね、そうでもないんですね。
村松:今住んでいるところは1時間ぐらいかな。
神保:群馬もなんか給油場が。
村松:ああ。でも全然違うんです。
神保:違うんですね。長野県大変そうですよねそうすると。絶対にクルマ必要ですよね。
村松:絶対クルマ必要ですね。結構街でも見ますけどね、テスラ。やっぱり一軒家が多いから太陽光の普及も多いですし、V2H的な考え方は、いっときはすごく気にしていましたね。
神保:理想ですよね、割と。
村松:理想ですね。本当に屋根の上にあれを載せたくないっていうところぐらい。
神保:ソーラーパネルっぽくないのもありますよね。
村松:出てきましたね。
神保:っていってもちょっとクールすぎる感じだったりはしますけどね。
村松:個人的にはどうパネルを家の敷地内に置くか、みたいなことがちょっと解決できるとそこは割とひとつ超えられそうだなというか。一応今の家にも外にそのときのため用に引いてるんすよ、電源を。
神保:そうなんですね。
村松:もしかしたら
神保:もしかしたら、いいですね。
村松:っていうので、もう建てたときにそれは一応、屋外に電源を出してるんで、いつか2台目っていうのはありますね。
神保:200ボルトとかはすぐ引けますからね。
村松:うん。さて、今日の話を簡単にまとめると、いつか自分もと憧れのあるコンバートEVについて話を聞きました。それと後半はガソリンスタンドのコンバートの話も出ましたけど、聞いていて思ったのは、改めて僕らは今何年かかけて行っていくだろう、エネルギーシフトの真っ只中にいて、きっとおそらく初期段階なんでしょうけども、そういった転換期を体験できるということを考えると、やっぱりもう少し日々の変化や新しいものへのトライアンドエラーをしないといけないなと思った次第です。神保さん、ありがとうございました。
神保:ありがとうございました。
神保匠吾 (SHOGO JIMBO)
1982年生まれ、福岡県出身。大学卒業後、ロンドン留学を経て、ファッション誌を出版するカエルム株式会社へ入社。2014年にオンラインモーターマガジン『DRIVETHRU』創刊。ディレクターとして現在に至る。POPEYE、UOMOなど他媒体へのエディトリアルや連載など幅広く活動中。2021年にコンバートEVにてグッドデザイン金賞を受賞。目下「モバイルSS」の普及に向けて奮闘中。
IG:@shogojimbo