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セカンドライフとクルマ#04 クルマとファッション、カルチャーが交錯する カーライフの現在地
2025.04.23

セカンドライフとクルマ#04 クルマとファッション、カルチャーが交錯する カーライフの現在地
by 小雄一郎 (G.F.G.S.創業者)

丸目・角目のカワイイクルマが大集合するカーミーティング『GFGS Car Life in Yahiko』って?イベントを主宰する、新潟県加茂市のボーダーカットソーのメーカー、〈G.F.G.S.〉代表の小栁雄一郎さんにインタビュー。

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新潟県加茂市を中心に広がる、ユニークなカーコミュニティがある。〈GFGS CARLIFE〉というこちらは、加茂市の商店街で、ボーダーカットソーを完全受注生産する〈G.F.G.S.〉から生まれたサイドプロジェクト。

「広大な新潟県を移動するには、燃費が良かったり機動力があったり、機能性重視のクルマ選びがメインストリーム。でも、お気に入りのファッションや音楽を選ぶように、自分のライフスタイルや好みを重視したクルマ選びがあってもいいじゃない。〈GFGS CARLIFE〉は、そんな思いから生まれたものです」というのは、主宰者である〈G.F.G.S.〉代表の小栁雄一郎さんだ。

もともと燕市で刃物を製造するメーカーに勤務していた小栁さんが〈G.F.G.S.〉をスタートしたのは、両親が営んでいた縫製業が、リーマンショックの煽りを受けて傾いたことがきっかけだった。両親の事業を清算し、負債を背負って始めた新規事業。選んだ商品が「ボーダー」だった。
ファストファッションの代名詞と思われていたボーダーTシャツを、オーガニックコットンを使い、加茂市の自社工房でいちから仕立てる。作った分だけ売り切る受注生産システムで、大量生産・大量消費があたり前という既存のアパレル産業のありかたにNO!を突きつける。小栁さんの反骨魂が炸裂した〈G.F.G.S.〉は、トレーサビリティやサステナビリティを意識したビジネスの先駆けだったといえるだろう。


受注生産のボーダーカットソー。生地から織り上げるため、生地の厚さやデザイン、サイズ、袖丈の長さ、ボーダーの幅や色の組み合わせ……細かなオーダーが可能。


〈G.F.G.S.〉のボーダーを編み上げる織機。

そんな〈G.F.G.S.〉にクルマ部門が立ち上がったのは、まったくの偶然からだ。

「隣の三条市で、燕三条地域のものづくりメーカーが工場を開放する『工場の祭典』という一大イベントがあります。このなかに全国の選りすぐりのメーカーを一堂に集めるキュレーションコーナーがあって、新潟県代表として出展することになったんです。いろいろなメーカーや企業の方が足を運んでくださいましたが、とりわけ強い関心をもってくれたのが、日産のデザイナーさん。クルマと全く関係のない業種ですが、ボーダーのみで勝負していること、地元に工房を構え、完全受注生産でビジネスをしていることに共感してくれたようです」


初代「G.F.G.S.号」。

そんな縁から生まれたのが、〈G.F.G.S.〉の社用車を日産モータースポーツ&カスタマイズ(株)(以下、NMC)と協働で作る「G.F.G.S.号プロジェクト」。ベースとなるNISSAN・CUBEZ11を、NMCのデザインでオリジナルの架装に仕上げた。小栁さん自身、夫妻揃って“カワイイ”クルマ好きで、これまでオペル・ヴィータ、ホンダ・シティなどを乗り継いできた。とはいえ、クルマはまったくの門外漢。

「でも、こんなクルマがあったらいいな……という漠然としたアイデアを出し合って、それが形になるさまを見るのが本当に楽しかった。それで、同じデザインでNV100を架装したG.F.G.S.2号も制作しました。これが2023年にたちあげた〈GFGS CARLIFE〉につながっていきます」

〈G.F.G.S.〉は“Good Feel, Good Style”をもじったもの。 “Good Feel, Good Style”というタグラインに込めたのは“いいもの・好きなものを長く愛用し続けよう”というメッセージだ。そのフィーリングをそのままクルマにも落とし込んだ〈GFGS CARLIFE〉は、オリジナル架装のカスタムカー製作からスタートした。
〈GFGS MOTORS〉第1弾として、まずはフォルクスワーゲン・ゴルフⅡの純正カラーでオールペイントしたNISSAN・CUBEZ11をローンチ。コンパクトカーなのに広々とした車内空間とカワイイ見た目から、“名車”の誉高いCUBEの魅力や価値をあらためて見直し、オリジナル架装を施して現代に甦らせる。このGFGS CUBEは発売まもなく新しいオーナーのもとに旅立ったが、〈GFGS MOTORS〉ではその後も継続的にオリジナル架装の車両制作を進めている。


前回のイベントでお披露目した〈GFGS MOTORS〉第2弾のNISSAN・Be-1。架空の〈GFGS MOTORS SPORTS〉レーシングカーをイメージし、1988年製造のBe-1をFIAT仕様の2トーンのグレーにリペイント。イエローのアクセントカラーを施している。デザイン原案は、NISSAN・CUBE Z11型のエクステリアデザインを手がけた桑原弘忠さん。こちらは近日発売予定。価格は「購入ご希望者の意向に沿いながら」応相談。

それと同時に、こうしたクルマを愛するカーオーナーたちの交流の場として『GFGS Car Life in Yahiko』というイベントをスタート。新潟県西蒲原郡弥彦村で開催しているこちらは、丸目・角目にこだわった、2000年代前後に製造されたカワイイクルマを一般から募り、会場に展示するもので、こうしたクルマを眺めながら、DJ陣によるライブBGMや県内人気飲食店のフードやドリンクを楽しめる。


昨年6月に開催された『GFGS Car Life in Yahiko vol.1』には、オーナー自慢の丸目・角目の愛車が勢揃い。

「2000年代前後に製造された、丸目・角目のカワイイ車を中心に、ヴィンテージから現行まで、僕たちの基準に沿って“カワイイ”を選定させてもらっていますが、毎回、捌ききれないほどのエントリーが集まります」

ものは試し、と開催したプレイベント(vol.0)には、大した宣伝も告知もしていないのに、会場収容量ギリギリの50台がエントリー。来場者も500名を集めるなど大成功を収めた。続く『クリスマスミーティング』は、雪国・新潟で12月のイベントは無謀とささやかれるなか、まさかの好天に恵まれ1300人を超える来場者を集める。そのあとはvol.1、vol.2とうなぎ登りに注目度が上がり、来場者数もエントリー車も増え続けている。


イベントごとのテーマに沿った選曲を楽しめるDJプレイも。次回のテーマは『もし僕が彼女とドライブデートするなら…』。

来場するのはヤングタイマーやマニアックなクルマ好きばかりではない。小栁さんが独断と偏見で選んだ“カワイイ”クルマのラインナップは、たとえクルマに詳しくなくとも、“こんなクルマがあったら毎日が楽しそうだね”“こういうクルマでドライブに出かけるなら、こんなBGMを選びたい”と、愛着を抱けるクルマのある未来をイメージさせてくれる。小栁さんがいうように、クルマとカルチャーが交差する場になっているのだ。


〈G.F.G.S.〉の近くで運営するカフェ『BBC』には、小栁さんの好きなものが詰まっている。


小栁さんの妻が毎朝手作りする、『BBC』自慢のドーナッツ。ふかふかの自家発酵生地のおいしさを味わえる。

「結局、〈GFGS CARLIFE〉でやりたいのは“クルマのレコード化”なんだと思います。CDやMDが出た時、レコードは一気に下火になりましたが、変わらない音質や、紙ジャケットの独特の質感など、レコードでなければ表現できないものが再評価されるようになりました。クルマも同じで、新しい・古いに関わらず、センスのいいクルマはずっと残っていくはずです。それを伝えるイベントにしていきたいと思っています」

当日は『BBC』のドーナッツほか9つのフードのベンダーと、4つのアパレル&ライフスタイルショップ、2つのカーサービス事業者が出店。

来る4月26日、27日には『GFGS Car Life in Yahiko vol.3』が開催される。2日間総計80台のクルマが集まる予定で、会場には〈MATCH BOX〉ブランドのノベルティ配布や京商(株)によるミニカーの販売、同じ加茂市でバンライフを提案するキャンイングカーキットブランド〈FAIRGROUND〉の実車展示、〈GFGS MOTORS〉第2弾、NISSAN・Be-1のデザインを手がけたデザイナーの長澤隆彦さん(NEXTAK Design & Craft代表)によるトークショー、DJ陣による『もし僕が彼女とドライブデートするなら…』をテーマにしたプレイなど、コンテンツが盛りだくさん。なお、トークショーには『noru journal』編集長の村松亮も登壇予定だ。


イベントのノベルティ。


イベント用に制作された、赤、黒、ブルーのトリコロールカラーのボーダーTシャツも今後発売予定。

ゴールデンウィーク直前の週末、会場でお会いしましょう!

 

イベント概要
開催日:4月26日(土)、27日(日) 10:00〜15:00(両日)
会場:ヤホール(新潟県蒲原郡弥彦村弥彦)
URL:gfgscarlife.net/gfgs-car-life-in-yahiko-vol-3

小栁雄一郎 (おやなぎ・ゆういちろう)
新潟県加茂市生まれ。サラリーマンとして会社に勤務したのち、燕三条の刃物工場で職人として働く。2013年に〈G.F.G.S.〉を創業。その他にもマガジンの発刊、現代音楽レーベル、クリエイターとのコラボアイテム、車とボーダーのある日常を発信するなど、好きなものを追求し続け独自のG.F.G.S.カルチャーを創出。20年には加茂市土産物センターをリニューアルし、ドーナツとコーヒーを提供するカフェ兼土産物店の〈BBC Kamo Miyagemono Center〉をオープン。加茂市駅前の商店街に活気を生み出している。
@gfgs_oyanagi

G.F.G.S.:gfgs.net
IG @gfgs

GFGS CARLIFE:@gfgscarlife

photo: Midori Yamashita text: Ryoko Kuraishi