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2018年から見よう見まねで始めた、自分色のバン作り
村松:さて、本日のゲストは引き続き、〈VANCAMP JAPAN〉代表の小濱潤平さんにお越しいただいています。
小濱:よろしくお願いします。
村松:お願いします。 前編では、バンキャンプって、そもそも何? っていうところから、小濵さんが代表を務める〈VANCAMP JAPAN〉の活動について、お話を伺いながら、バンキャンプ全般について、いろいろお話しいただきました。後編は、バンを持つことで暮らしにどんな良いことがあるのか、バンそのものの魅力を少し深掘っていけたらなと思います。
小濱:はい。
村松:ということで、後編も引き続き海岸沿いにバンを停めてバンの中で収録しています。クルマの音とか風の音はガンガン入ってくると思いまーす。そもそも、バンとの出合いっていつですか?
小濱:2017年か2018年ですね。もともと1台目のバンを買う前はジムニーに乗っていたんですが、仕事で使ったり遠出する上で手狭だったんですよね、ジムニーだと。
村松:僕も一時乗ってましたけど90年代のジムニー。結構高速ツラいですよね。飛びません?むしろちょっと(笑)
小濱:(笑)。確かに、そうそう。
村松:跳ねてるぞ、みたいな(笑)
小濱:(笑)。可愛くて愛着のあるクルマですごく好きだったんですけどね、ジムニーも。だけど新車で買って2年経たないぐらいで売って、バンに乗り換えましたね。だから、結構必要に駆られてというか、2台持ちはあまりメリットないかなと思って。バンライフっていうものを知ったのは2018年で、その年に買い替えたって感じですかね。
村松:じゃあ、いわゆるバンっていうサイズ感みたいなところが魅力で買い替えて、そこから中をいじったり、バンキャンプを始めるに至るには、買った後に何かしらのインスパイアがあったんですか?
小濱:買う前から。
村松:あっ、買う前から?
小濱:そう、買う前からです。車中泊をしたいな、車中泊できたらすごい移動が楽になるなっていうところから入った。車中泊するにはジムニーだと手狭だから、ちょっと広め、大きいクルマを探し始めて、そうするとやっぱね、だいたい流れとしてはハイエースとかキャラバンになってくる感じだと思うんですけど…。ネットで調べててもあんまりピンとこないというか、自分がやりたい理想の車中泊スタイルみたいなのが全然なかったんですよ。で、だったら、自分が理想とするものをもうちょっと追求してみようと思い、ハイエースとかキャラバンじゃない形、違うアプローチができるようなクルマを探し始めた。それが当時買った三菱のスペースギアだったんですけど、バンじゃなくて、乗用車でしたね。
村松:あれは商用で、確かなんか送迎車か何かに使われていた?
小濱:そうです。
村松:すごく特徴的でしたよね。
小濱:特徴的でしたね(笑)
村松:鼻が長いんだけど、後ろがすごく…ドーンと空間があって。
小濱:そうですね。いわゆるスペースギアってもっとイカついというか、ゴツい感じのシルエットなんですけど。10人乗りのロングタイプだと、ちょっとヨーロッパっぽいというか、曲線が生かされているようなフォルムで。それが中古車屋さんで30万で出てたんですよ、その当時。
村松:めちゃいいですよね。
小濱:もう見つけたその日か次の日見に行って、即決して帰ってきましたね。
村松:じゃあ、車中泊しながら移動したり旅したりっていうのが魅力だと思って探して、買い始めたのが2018年。そこからグググっとハマっていくんですか?
小濱:そうですね。 買うって決めている時点で、海外のバンライフっていうものに影響を受けているというか、それを知った上でバンを買いたいと思ってたので。買ってすぐ、床と天井の板張りに取りかかった感じです。
村松:なるほどなるほど。
小濱:その当時日本だとそこまで情報を発信している人はいなかったから。クルマの内装は、板張りにするっていうことをやっている人、いたんだと思うんですけどSNSで発信している人たちはほとんどいなくて。だから、見よう見まねで自分だったらこうするかなっていうのを考えながら、YouTubeで海外の作っている人たちを見たり、インスタで見たりしながら、ちょっとずつやってた感じですね。
村松:そうですよね。やっぱりインスタの影響ありますよね。『#VANLAIFE』でいろいろ出てきますよね。ちょうど10年前の2015年に、バンライフ自体の火付け役になったフォスター・ハンティントンの写真集の日本版が出たんですよ。当時フリークス(freak’s store)さんが、多分、個人で数ロット卸して日本語版を出した時があって。そのプロモーションのタイミングで、前職でやっていた『mark』っていう雑誌で取り上げたんです。本人は来日しなかったからメールとかリモートの取材でしたけど、当時の記事をちょっと今朝、久々に読み直してて。写真集は『HOME IS WHERE YOU PARK IT』って、日本語で言うと“駐車したところが我が家”っていうすごいストレートのタイトル。ミニマムにシンプルに暮らすみたいなことが割とメッセージとして出てたんですけど、当時、そのフォスター・ハンティントン自身が別のプロジェクトで、〈The Burning House〉っていうサイトも運用してて、それが“家が火事になったら何持って逃げる?”みたいな問いをいろんな人に投げかけて、その持ち出すものの物撮りと一緒に、その人のエピソードを紹介していくっていう。 結構「現代人は多くのモノを持ち過ぎていますよね」っていうことに対するメッセージとしてバンライフっていうのが彼の中であった。なんか僕もそれが面白くて、取り上げた雑誌の『mark』は、スポーツとかライフスタイルの雑誌だけど、これはあるなと思って記事にしていたんですよね。 その辺はやっぱり共感するところがあります? シンプルライフ的なところと。
小濱:ありますよ。正直僕は、フォスターに影響を受けてバンライフを始めたというわけではなくて、後からそういう人がいたんだ、バンライフの大元ってこの人なんだって知ったんですけど。だけど、考え方として僕自身はキャンプの延長で始めたんですね。その当時は、山も登っていたし、今UL(ウルトラライト)って過熱してきてるけど、結構前の段階からモノを減らして山に登るとか、軽くして山に登るとかしていて。キャンプもできるだけミニマムに、ものを持たずに行けるっていうところから、車中泊だとテントも張らなくていいし、言っちゃえばコップ1個あればいい(笑)。何でもできるっていう考え方で始めているから。だから、今の車内の内装作りもできるだけ収納を作ったりしないで、いつでも下ろしたり、載せたりできるようにというのを意識しながらやっている。そういう意味で言うと、近いものはあるんじゃないかなとは思いますけどね。
村松:そうですよね。 ちょっとさっき小話で出ましたけど、小濵さんは結構娘さんとか、ご家族でバンキャンプするじゃないですか。
小濱:はい。
村松:親子のコミュニケーションにも、このミニマム空間は活きてそうだなと思ってますけど、どうです?
小濱:ね〜…。活きてるんじゃないかな(笑)?わかんないけど! でも、妻も娘も車中泊は全然苦じゃなくて、うちの妻も家より寝れるかもっていうぐらい慣れてるんですよね。娘も3歳ぐらいからかな。 ずっとキャンプと車中泊しているので、今10歳だから結構歴は長い。
村松:長いですね。
小濱:今は、ほぼ毎週個人でイベントの出店もしてるから、毎週のようにいろんなところに出かけて泊まってっていうことをしてる。そういう意味でいうと、家族3人がこの狭い空間で、近い場所にいるっていうのは、わりとコミュニケーション取れているし3人とも仲良いから、いい影響なのかもしれないですね。
村松:なんかありますか?そのいい影響を感じられるエピソード(笑)
小濱:(笑)あるかな〜…。クルマの中での仲良いエピソードって難しいなぁ。難しいけど、でも、今の3人、家族を見ていると、今のまんまが映し出されているのかなっていう気はしますけどね。
村松:うちも子どもがまだ1歳になる前ぐらいからキャンプ行ってて、最近はあんまり行ってないですけど、やっぱり時期と場所を選ばないとまあまあハードじゃないですか、キャンプは。
小濱:確かにね、そうですね。
村松:だから車中泊はそういう意味では結構、お子さんにとってはいいですよね。
小濱:めちゃくちゃいい。 子どもにとってもいいし、僕たちだけかもしれないけど、親にとってもハードルが下がる。僕ら子ども生まれる前から夫婦2人でキャンプしたり、山登ってテン泊とかしてたんです。だけど、子どもが生まれて、ちっちゃい子どもを連れて出掛けるって、僕たちにとってはすごいハードルが高かったというか、やっぱストレスだった。他の人に迷惑かけちゃうんじゃないかとか、出先で子どもに何かあったらどうしようとか。
村松:そうそうそう、本当にね。キャンプ地の夜泣きね。ほんとすみませーんみたいな時あるじゃないですか(笑)
小濱:(笑)。周りのことを考えると、なかなか連れていくのがちょっとしんどくて、3歳までは一切キャンプに行かなくて。だけど、そろそろそういうことできるなって思ったときに、車中泊だったら、なんかトラブったらクルマで帰ればいいだけだから。そういう意味でやっぱりね、楽ではありますね。
村松:そうだよな〜。バン買って、すぐ板張ったって意味ではスキルがあったってことなんですか?
小濱:スキルはね、多分あったと思います。 めちゃくちゃの器用貧乏なので昔っから(笑)。
もともとインテリアの仕事をしていて、内装のデザインしたりとか、自分たちで簡単な施工はしてたので。そういうスキルがあったというか、作り方をなんとなく分かっていた。
ちょっとしたカスタムで、クルマはよりパーソナルな空間になる。
村松:そもそも、バンを持つと何がいいですか?
小濱:バンを持つと何がいいか。僕で言うと、僕もともとクルマはそこまで好きじゃないですし。
村松:運転が嫌いってこと?
小濱:要はクルマ好きな人ってパーツも好きだったりするじゃないですか。自分の子どもみたいにかわいがるというか、整備も細かいところまで気にしてっていう人たち多いと印象なんですけど。僕はそういう入り方じゃなくて、ただの移動する道具だった、最初は。今も、整備とかは工場に任せきりで、自分で何かできるかというとそうではないんですけど。 でも、自分で選んだこのクルマがあって、後ろ荷室で車中泊できて、どこでも寝られる、移動しながら好きな場所でキャンプしたり、宿泊できるっていう環境があると、なんか無限にどこでも行けるというか。計画しなくても思い立ったらすぐ出かけられる、遠くまで行ける。出先やイベントに来てくれたお客さんと話していても、「僕らは関東から岐阜までとか、岐阜から関東まで行くとか考えられない」とか言われたりする。名古屋、愛知とかの人もそうですけど、なんかクルマで出かけるっていうことにハードルを感じていたりする人って結構多いんだなって思うんです。でもこういう生活をしていると、移動が全然苦じゃなくなる。逆に楽しくなる。ストレスから解放してくれて、違う遊びを見せてくれるっていうのはあるんじゃないかなって思って。
村松:確かに、さっきのフォスターの写真集じゃないけど、駐車したところが今日の我が家になるというか、我が家が動くっていうワクワク感は究極シンプルで、なんか強いですよね。
小濱:いや、強いですね。 だって全然飽きないもん(笑)。僕、めちゃくちゃ飽きっぽくて、本当にどんどん次にいくタイプだけど、車中泊とかバンライフっていうところからは、全然飽きないですね。楽しいですね。
村松:確かに。 車中泊とも違うのは、こういう個人のパーソナル空間みたいなのはバンの大なり小なりあるんでしょうけど、自分の部屋ごとどこかまだ見ぬ地に行けるっていうのが、いいんでしょうね。自分で作っちゃったりね。
小濱:いや、本当そうです。そうですね。作んなくてもね。僕も今キャンプ用のコット置いて、このテーブルは脚立じゃないですか。これ下ろせば何もない空間になるし。だから本当簡単に、家にあるものでできると思う。フラットにしちゃえばシーツなり、家にある部屋からクッション持ってきて、ちょっと差し色してもらうっていうのだけでも自分の空間になると思うんで、そんなにハードル高くないし、自分のクルマがある人は誰でもできるんじゃないかなと思いますけどね。
村松:そういう意味では真似しやすいスタイルで、今第2フェーズとしてバンを作り始めているっていう感じなんですかね?
小濱:そうそう、そうですね。もともとあんまりハードル高くなく見てもらいたいっていうのをずっと考えているので。こういう、ブラインドつけたり、スポットライトをつけたりとかしてますけど、これはなくてもいいじゃないですか。ただ個人的に好きで、やってみたいなっていうのでつけたけど、別になくてもいいものなので。だからシンプルに、自分でもできるっていうのを感じてもらえるような作り方をしていきたいなとは思ってますね。
村松:これからの小濱さん自身の活動、ともすると、〈VANCAMP JAPAN〉の活動なのかもしれないですけど、どんなことを思い描いてるんですか?
小濱:なんだろう……。日本で、バンライフやバンキャンプっていうスタイルを楽しんでいる人たちを、もっともっと仲間として受け入れられるような組織に、コミュニティになっていきたい。横の繋がりができる場所、あんまりないじゃないですか。車中泊やバンライフをしている人たちだけのイベントってそうないと思うので。僕らはそれを企画して、普段はそれぞれ自分のスタイルで楽しんでいる人たちが、集える場所っていうのをいろんなところに作っていくっていうのを今後も続けていきたいなとは思っています。それで、どんどんバンライフ業界が、クルマだったり、キャンプだったり、いろんなところで派生していくものが、もっともっと横に繋がって盛り上がっていくと、また面白いことに繋がっていくんじゃないかなと思うので、このまま継続はしていきたいですね。
村松:その活動の根幹にあるのは前編でも話していましたけど、自分たちが楽しめることが前提の場作りとして?
小濱:そうですね。それがないと多分しんどくなっちゃうと思うんで、自分たちが楽しくないとできないかもしれないですね。
村松:うん。ほんとこうやってみるといいですよね。
小濱:そうなんですよ。落ち着くんですよね、やっぱり。
村松:このモバイルバッテリーの進化は、結構バンライファーにとって大きそうですね。
小濱:うん、大きいかも。多分必需品じゃないですか。
村松:年々きっと性能が上がっていくじゃないですか時代的に。
小濱:そうですね。まあ、でも、ポータブル電源に頼り切るのも僕はちょっとなんか違うかなと思っていて。
村松:そうか、そうか。まあこれがね、膨らんでいけば本当に、家になっちゃう。
小濱:そうそうそう。キャンプの延長でしかないので、僕にとっては。だからバンキャンプって言ってるし、車中泊をしながらキャンプを楽しむっていうスタイルなので。僕今ポータブル電源いっぱい積んでるんですけど、これは仕事で使うものがほぼで、キャンプに行って使うこと、ほとんどないですね。照明をちょっと点けたりするぐらいかな。車中泊って、災害避難の観点からも見られたりする中で、最近思うのは、例えばソーラーつけていても、富士山噴火したり、長雨続いたらソーラーは意味なくなっちゃうな、とかっていうのもあって。そうすると充電できないし、ポータブル電源自体何の意味もなくなっちゃう。そうなると、もっと違うサバイバルというか、ポータブル電源に代わる本来のキャンプスタイルというか、エネルギー源っていうのをちゃんと車内に確保しておかないといけないなとは思っていますね。
村松:なるほど、なるほど。確かに、キャンパーからすると車中泊は、よりものも多く積めるし、より近代的に、便利になっているじゃないですか。ただ、そのミニマルなことがすごいわけでも、正義でもないし、みんなころ合いのいいミニマルライフや、シンプルなラインを見つけていければいいんでしょうね。
小濱:そうですね、うんうん。いろいろなスタイルでね。キャンピングカーをちゃんと買えば、もっとラグジュアリーなバンライフはできるし、そうじゃなくて、僕みたいな本当に安いボロボロのバンを買って自分で作るっていうのも、ひとつの楽しみ方だし。バンライフも今、いろいろ多様化して捉え方いっぱいあると思うので、自分に合ったスタイルをみつければ、それが楽しみになるんじゃないですかね。
村松:ちなみに、最後に改めて聞きますが、結局キャンプの延長だったり、モバイルバッテリーみたいなものに頼りすぎないとか、小濵さんの中にもどこかそういうミニマムな暮らしや、シンプルに生きるみたいなことがなんとなくあるじゃないですか。そういうモチベーションは日々持っているんですか?
小濱:持っていると思いますよ。モノって考えると、僕はモノに執着がないタイプだと思っているので、 だからいつでも手放せるような。そんなに愛着のあるものっていうと、多分ほぼなくて。なくなっても、多分そんなに不便じゃないものばっかりかもしれないですよね。
村松:さてさて、そろそろお時間なので、後編もここまでとします。こういうバンライフってなんぞやだとか、ミニマムライフやシンプルライフがなんでいいのか、みたいなことって、確かにちゃんと考えたいなと思う反面、こうあるべきという型にはめすぎてもいけないようなものでもあるし。あんまり説教くさくもしたくないしっということで、雑談でワーワー話した感じではあるんですけど。バンライフとかバンキャンプのベースにはそういうものがあったりするので、それはきっと皆さんそれぞれ持ってるんだろうな、と思ったりしましたね。
隔週にわたってお届けしましたけども、改めましてありがとうございました。
小濱:ありがとうございました。
村松:いいですね。 海沿いで話すと。
小濱:ね、なんかよかった。ありがとうございます。
村松:ありがとうございます。
小濱潤平 (おばま・じゅんぺい)
合同会社ブロロロ 代表。アウトドア体験に新しい価値を生みだすコミュニティ〈VANCAMP JAPAN〉の責任者として、DIYで作り上げたバンとのキャンプスタイルや、開催イベントの様子などを積極的に発信中。
HP:vancampjapan.com
IG:@junpei_obama
村松亮(むらまつりょう)
noru journal編集長。東京-伊那谷-御代田の3拠点を移動しながら暮らす。会社・編集部は東京なので、週2~3回は出稼ぎに。2022年より、家族と米作りを始めました。
IG : @ryomuramatsu
Photo by omote momoka