「当てにいかない」価値を、クルマで語る
Story2026.06.02NEW

「当てにいかない」価値を、クルマで語る

小栁雄一郎(GFGS CARLIFE代表)×勝山龍一(フリープランナー)× 村松亮(noru journal編集長)

新潟県・弥彦村で開催される「GFGS Car Life In Yahiko」。スペックや希少性ではなく、"感覚"でクルマを捉えるこのイベントには、どこか今の時代に対する小さな違和感と希望とが同居している。

なぜこの場所で、なぜこの規模で続けるのか。


GFGS CARLIFE〉代表・小栁雄一郎、フリープランナー・勝山龍一、noru journal編集長・村松亮の3者が、イベントの魅力を振り返りつつ、クルマとカルチャーの“今の空気感”についてを語り合った。


「イベント」というより、移動の延長

村松:イベント自体は3年目なんですよね。

小柳:そうですね。ゼロ回から始めて、なんだかんだ続けてきてる感じです。正直、モチベーションは「自分がやりたいから」なんですけど、周りの温度にちょっと追いかけられてる感覚もあって。自治体や参加者からぜひ続けて、と。ありがたいことに。

村松:最初は日産自動車との共創プロジェクトがきっかけでしたよね。


こちらの記事も読む:セカンドライフとクルマ#04|クルマとファッション、カルチャーが交錯する カーライフの現在地小栁雄一郎 (G.F.G.S.創業者)

小柳:そうです。G.F.G.S.と日産さんで一緒にクルマをつくる取り組みがあって。そこからコロナを経て「リアルに会う場をつくろう」となったのがこのイベントの始まりです。最初は50人でもいいからやってみようって。

勝山:いわゆる”クルマのイベント”をやりたかったんですか?

小柳:というより、「生活に近いクルマの場」が欲しかったんですよね。新潟ってクルマがないと生活できないのに、イベントはどこか非日常寄りというか。もっとライフスタイルとしてのクルマを感じられる場があってもいいなと。
あと、弥彦でやったのは単純に自分がこの場所が好きだったから。温泉もあるし、ご飯もおいしいし、弥彦山もある。ここに来るまでの”移動”も含めて、このイベントなんじゃないかと思って。

スペックじゃなく、センスで集まる

勝山:実際に来てみて、このイベントってかなり独特ですよね。

小柳:よくある旧車イベントみたいに「年式」とか「スペック」で縛ってないんですよ。うちは”丸目でかわいい”とか、そのくらいの基準。現行車でも全然OKです。

勝山:かなり自由ですね。だからこそ、従来のカーミーティングでは並ぶことのないクルマが横並日になるのがこのイベントならではで。

小柳:そもそも、カテゴライズしすぎるのがあまり好きじゃなくて。

勝山:クルマメディアの方を取材でアテンドすると、全国的にも珍しいって言われるんですよね。

小柳:自分ではあまり分かってないですけどね(笑)。ただ、選考は結構絞っていて、落ちた人が会場隣の第2駐車場に集まるんですよ。それもまた面白くて。

勝山:狙うことなく、二層構造になってるんですよね。時間帯によっては第2駐車場の方がスペックが高いときもあったりして。

小柳:そうそう。メインもいいけど、あっちもいい。むしろあっちの方が面白い瞬間もある。クルマの人たちってコミュニティが強いなって毎回思います。

村松:確かに、スペックじゃなく”乗り手の個性”が出てますよね。

小柳:クルマの中に何を置いてるかとかね。それでその人が見えるというか。


平松大地/長野県/@bogen_hutte/Renault4 1993年式
エントリーのきっかけ:前から好きだったGFGSのボーダーTシャツとトートを通じてイベントの存在を知り、「せっかくなら」と旅をかねて初めてエントリー/他のカーミーティングとの違い:田舎のローカルイベントなのに人が多くてにぎやかで、展示だけじゃない“まつり感”があるところが新鮮に感じました/GFGS CARの魅力とは:たまたま出会った古いクルマとの縁ごと大事にできる場で、旅の途中の寄り道みたいにゆるく参加できるのが魅力です


たなかゆか/新潟県/@smart_k_2004/Smart-k 2004年式
エントリーのきっかけ:知人に「このかわいい軽なら出られるよ」とすすめてもらい、半年前に買ったばかりのスマートKでエントリー/他のカーミーティングとの違い:地元の人もたくさん遊びに来ていて、来場される方の中には同じ車種のオーナーさんもいて、自然と情報交換ができるのがすごくありがたい/GFGS CARの魅力とは:今は台数も少ないスマートKについて、リアルな知恵をもらえる「オフラインの掲示板」みたいな場所


ハセガワ/新潟県/@tomo2_10/Rover Mini 1999年式
エントリーのきっかけ:3回目のエントリーですが、もともとミニを納車する前から見学に来ていて、可愛いクルマがずらっと並ぶ景色に憧れていたので/他のカーミーティングとの違い:クルマ好きだけじゃなく、一般の人や音楽関係の人も混ざっていて、いろんな人から声をかけてもらえるオープンな雰囲気が好きです/GFGS CARの魅力とは:カーイベントでありながら音楽やマーケットも含めた“場”として楽しめて、毎年の定番行事みたいになっているところ

「当てにいかない」価値

村松:今って、全部が”当てにいってる”時代だと思うんですよ。写真も発言も、いいねの数で価値が決まるというか。むしろ、いいねが少なくても価値があるものが見えづらくなってしまっているというか、そういうものが本当はあるはずだけど、それを感じる機会がとても減ってる気がしていて。

小柳:確かに。

村松:そんな中で、このイベントって、大ヒットを狙っていないというか、当てにいってないじゃないですか。「CD100万枚を売る」みたいなことを目指してない。

小柳:全くないんです。むしろ、30万枚くらいでいいというか(笑)。100万枚を狙うと、どうしても均質になるんですよ。

村松:大ヒットより、30万枚くらいのじわっと残るものの方が影響力あったりしますからね。

小柳:イベントも同じで、集客を最大化することにはあまり興味がないです。来てくれた人が楽しめればいい。

勝山:そのスタンス、今は逆に珍しいですよね。

小柳:でもそれをやらないと、この空気は出ない気がしていて。出店数もあえて絞ってるんですよ。売上が分散しないように。

勝山:ちゃんと”場のバランス”を見てるんですね。

速さよりも、心地よさ

村松:そもそも、クルマの価値観も変わってきてますよね。または今後変わっていきますよね。速さとかスペックって、もうそこまで求められてない空気感があるというか、速度を求める時代から移行している気がしていて。

小柳:本当にそう思います。

村松:むしろ「このクルマ、なんか好きだな」とか「心地よいな」っていう感覚の方が大事になってきてる。

勝山:このイベントもまさにそれですよね。


隆彦/東京都/NISSAN Be-1 1988年式
エントリーのきっかけ:知人から「こんなイベントがあるから来てみない?」と誘われた/他のカーミーティングとの違い:旧車イベントによくある年式や改造の細かい縛りがなく、肩の力を抜いて「好きなクルマで来ていい」ゆるさが心地よい/GFGS CARの魅力とは:丸目のクルマたちがカテゴリーを超えてゆるく集まり、自分がかつて内装のデザインに関わった一台「Be-1」もその中に自然に溶け込んでいる景色そのものがとても魅力的だと思う


ペンギン/静岡県/@penguinep91remix/TOYOTA STARLET REMIX 1998年式
エントリーのきっかけ:「かわいい車が集まるイベント」としてSNSで見かけて気になっていて、このクルマならまさにぴったりだと思いエントリー/他のカーミーティングとの違い:年式や旧車縛り、審査もなく、現行車の友人も連れて来られるくらい様々な時代のクルマが共存できるのがうれしい/GFGS CARの魅力とは:好みの違うクルマ同士が自然と並び、オーナー同士で「この組み合わせ、他ではないよね」と笑い合えるゆるさ


レイ/東京都/@offroadc_x5/MAZDA CX-5 2025年式
エントリーのきっかけ:別のカーミーティングで知り合ったクルマ仲間に紹介してもらった/他のカーミーティングとの違い:年式などの厳しい条件がなくクルマの幅も広いので「このクルマでもいいんだ」とすぐ溶け込める仲間感があるところ/GFGS CARの魅力とは:ライブなど音楽と一緒に楽しめる、他にはなかなかない個性的なカーミーティングであるところ

小柳:大げさにいうと、うちは女性スタッフが「なんか怖い」と思ったら選考から落とすんですよ(笑)。スペックじゃなくて感覚。

勝山:可愛いかどうかが選考基準ですからね。でも、それはめちゃくちゃ新しい基準ですよ。

村松:そういう基準が増えていくと、社会全体の空気や、路上のヒエラルキーも変わる気がしますね。例えば、若葉マークのクルマや旧車を煽らないとか、速さ絶対、遅いやつダサいみたいなものじゃなくて、”暗黙の優しさ”みたいなものも出てきたり。

弥彦という場所がつくるもの

勝山:それにしても、弥彦の空気って独特ですよね。

村松:弥彦神社の影響もあってか、街全体がパワースポットみたいな感覚がありますよね。日常に手を合わせる暮らしが残っているというか。

小柳:弥彦神社には石油の神様も祀られていて、クルマのお祓いもできますから。

勝山:それも含めて、弥彦村はクルマとの相性がいい場所なんですよね。

小柳:だからここでやる意味があると思っていて。もし他でこのイベントをやるとしても、この文脈ごと持っていかないと成立しない気がしています。

村松:東京でやると、きっとまた違うものになりますよね。ぜひ、出張する際はそのクルマのお祓いごと出展してほしいですね。

小柳:多分、都心でやると同じ軽やかさは出ないですね。

勝山:地方で、このサイズ感だからこそできることがありますよね。

小柳:まだまだ僕らも自分たちの価値を模索しながら、”追いかけながらやってる”状態なんです。

村松:でも今は、その模索しながら育てていくくらいの方がちょうどいいのかもしれないですね。


小栁雄一郎 (おやなぎ ゆういちろう)
2013年に〈G.F.G.S.〉を創業。その他にもマガジンの発刊、現代音楽レーベル、クリエイターとのコラボアイテム、クルマとボーダーのある日常を発信するなど、好きなものを追求し続け独自のG.F.G.S.カルチャーを創出。近年はG.F.G.S.でのボーダーカットソー製作を主軸に、2021年には加茂市土産物センターのリニューアル・委託運営をきっかけに、手作りドーナツの製作(BBC)を開始。2023年には株式会社GFGS CARLIFEを立ち上げ本格的にイベントを企画運営を手がけるなど、多岐に渡った活動を展開している。
@gfgs_oyanagi
G.F.G.S.:gfgs.net
IG @gfgs
GFGS CARLIFE:@gfgscarlife

勝山 龍一 (かつやま りゅういち)
服飾専門学校を卒業後、衣食住美を展開する会社ベイクルーズにてファッションやインテリアのPRなどを勤めた後、2021年よりフリーに。現在は道志村にあるキャンプ場、建材屋、インテリアブランドのPRや、アウトドア関連の商品のディレクションなどを行っている。
instagram: @ryuichi_katsuyama

村松亮 (むらまつ りょう)
noru journal編集長。東京-伊那谷-御代田の3拠点ライフを実践中。会社・編集部は東京なので、週2~3回は出稼ぎに。2022年より、家族と米作りを開始。
IG:@ryomuramatsu

photo by PEOPLEISLAND PHOTO STUDIO/ text & edit by Ryo Muramatsu

Share on