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#38 茶が与えてくれる、余白を味わうクルマ旅
2024.09.04

#38 茶が与えてくれる、余白を味わうクルマ旅
by 梶原康太

ガイドブックやメディアに載っていない自分だけのロードマップを作る旅。この連載は、そんな“自分らしいクルマ旅”のススメを、多拠点生活をおくる人や、地方在住者、移動が日常にある人など、日本のさまざまな土地で根を下ろす人々に聞くもの。今回は、静岡市の中山間部、安倍川上中流域エリアにて、お茶の生産研究開発を行う〈株式会社THE CRAFT FARM〉統括マネージャー を担い、製造したお茶を企画・営業・販売する〈株式会社TeaRoom〉では事業部長を務める梶原康太さんが、『お茶』をテーマとした旅を紹介してくれる。

ガイドブックには載っていない旅のススメ| 連載「自分らしいクルマ旅」記事一覧

» 自分らしいクルマ旅

ヒトの自然を感じる茶と暮らしに余白を与えてくれるクルマ旅

梶原康太/〈株式会社THE CRAFT FARM〉 統括マネージャー・〈株式会社TeaRoomTea〉事業部部長

area:静岡

『暮らしの、次の1ページをつくる』を理念に掲げ、お茶の生産や研究開発を行う〈株式会社THE CRAFT FARM〉では経営企画、統括マネージャーであり、お茶の販売、文化事業、空間プロデュースなどを手がける〈株式会社TeaRoom〉ではTea事業部 部長を務める梶原康太さん。年々1世帯あたりの日本茶消費量が減少する中で、今や衰退産業だとも言われるお茶業界を活気づけるため奮闘している。そんな彼だが、数年前までは損害保険会社で忙しく働き、お茶を1杯飲むような時間もないほど、余裕のない日々を過ごしていた。そんな時に、知人の繋がりで訪れたのが静岡の茶畑だった。そこでお茶を味わう時間の豊かさに魅了され、心に余白を与えてくれるお茶という存在の可能性を感じ、この業界への転職を決意。3年前から東京と静岡を行き来しながら、お茶の生産から販売までを一貫して担う暮らしをしている。

『お茶を飲むという時間が与えてくれる飲み物として以上の価値を伝播していきたい』という梶原さん。彼にとって、クルマはお茶と同じく、暮らしの“余白”を楽しませてくれる存在だ。

「クルマは、人間の能力を拡張させてくれる存在。趣味の空間でもあり、疲れた時は寝床にもなる。何かしたい!そう思った時にはどこまでも走っていける。予定不調和、不確定なことがすきな自分にとって、わがままを叶えてくれる最高の乗り物であり、相棒です」

クルマで過ごす時間は「人間らしくいられる時間」だという彼がクルマ旅をする上で大切にしていること。それは、自分の本能に従えるゆとりを持ったコースであること。

「家で過ごす時間って、やりたいことよりもやるべきことで頭が一杯になり、本能が理性に負けてしまう場面が多いです。でもクルマでの移動中は、運転に集中するという制約の中で、考えるという人間的な行動を後押ししながら、自分の好きや妄想に向き合える時間を与えてくれる。それがクルマ旅の魅力です」

“余白”を大切にする梶原さんが紹介してくれるのは、『自然を感じる茶とクルマ旅』。日々、“お茶”というものを通して自然に向き合いながら暮らしている彼らしい旅。『在り方を求めない』から、自然体に楽しんでほしいという。

「なにかと疲れてしまう現代において、心を解放したいときにきっかけを与えてくれるスポットを選びました。疲れてテンション下がっている時、良いことがあってすごくテンション上がっている時、感情が大きく揺れ動いている時程自分と向き合う時間が欲しかったりします。決まった使い方、過ごし方のあるスポットでないので、『まぁとりあえず1杯飲んで落ち着こうか』というゆったりした感覚で、自由にのらりくらり楽しんでもらえればうれしいです」

静岡県静岡市

01.うつろぎ

地の特産物を感じる

まずは、腹ごしらえということで、“わさび栽培発祥の地”にあるお蕎麦屋〈うつろぎ〉へ。標高600mほどにある有東木地区に位置し、周辺には地元の方々が『宝』と呼ぶ清流が、山葵田や茶畑を育む里山風景が広がる。お店では地元のお茶や山葵、農産物を販売しており、地元食材を使った有東木のお母さんたちが作るうつろぎ蕎麦、定食やわさび漬け、金山寺味噌やわさびのり、お饅頭などが人気。
おすすめのメニューと過ごし方は目の前に水の流れをのぞみながら、特産の生わさび・わさび漬けや手打ちそばを楽しみながら、地元でとれた香りのよいお茶も楽しむこと。

住所
〒421-2303 静岡県静岡市葵区有東木280-1
URL
utougi.hiho.jp

 

静岡県静岡市

02.梅ヶ島の入島在来茶園

地の生業を感じる

梅ヶ島は静岡県静岡市を流れる安倍川の上流の地域。山を越せば山梨県。山間に点在する集落には武田信玄が切り開いた金鉱や温泉が存在する隠れ里のようなエリア。梅ヶ島は最大の茶産地といわれ、12軒程度の農家さんがお茶を作られているとも言われます。
安部川沿いを北に上っていくと山との距離がより近づいたような感覚、自然にはいっていくような感覚になります。静岡市内からは車で1時間程度。入島の吊橋の安倍川を挟んだ川向うに在来の茶園が広がっています。

標高750m、山の中に突如現れる一般的な茶園と言われイメージするものとは少し違う、くねくねしているような見た目をした茶園。全国的に1950年代からやぶきたという優良品種(耐寒性があり、様々な土壌に対応できる等々)が広がり、茶園管理においても効率化をすすめるこことができることから、在来の茶園(自生している茶園)から代替されていきました。しかしこの茶園ではあえて在来の茶園を残しており、昔からこの地に根をはって育ってきた茶の風景と出会うことができます。

住所
〒421-2302 静岡県静岡市葵区入島

 

静岡県静岡市

03.細野橋

地の暮らしを感じる

安倍川と山々を一望できる吊り橋。
高さもある上、結構揺れるので高所恐怖症の方は少し怖いかもしれません。細い真ん中の板の上を歩くスリリング、でも隙間から見える真下の美しい安倍川は絶景、ここからしか見えない景色を堪能することができます。この吊橋は、私の家からもとても近く、わたしのお気に入りの場所でもあります。今はほとんど使用されていませんが、昔は住民の生活動線として使用されていたそうです。行き交う人がすれ違いをするために板が敷いてあったところを見ると、昔の人の暮らしが想像でき、時を超えて思いを馳せることができワクワクします。

住所
〒421-2304 静岡県静岡市葵区渡

 

神奈川県足柄下郡

04.オクシズベース/古民家カフェ

地の歴史を知る

静岡市の山間部「オクシズ」にある築100年以上の古民家を使用したカフェ。季節の主菜や付け合わせ、煮物などが含まれたオクシズランチプレートや静岡のお茶やコーヒーなどオクシズの食を楽しめることができます。お店を運営するのは一般社団法人オクシズベース。オクシズエリアを軸としてカフェ事業の他、特産品を活用したお土産づくり、移住相談、観光フリーマガジンの発行など、エリアの魅力づくりを目的に様々な事業に取り組んでいる。
そのため、カフェ内には地元のことを知れる掲示物や書物がおいてあり、街の暮らしや顔が見えるのでこれに目を通すのもおすすめ。茶は急須で提供していただけるので、2人で訪れ、種類違いを楽しむのもいいかもしれません。

住所
〒420-0001 静岡県静岡市葵区平野21
営業時間
11:00~16:00 (L.o.15:00)
URL
okushizubase.com
IG
@okushizubase

 

静岡県静岡市

04.キャンプ場

自分の感性を解放する

昔から地域に根差して活動されている方々が運営されている完全プライベートのキャンプ場。小川のあるキャンプスペースで話し声や音楽の音量も気にすることなく楽しむことができます。お茶を飲みながら、ゆっくりと過ごしているとあっという間に時間が過ぎていきます。虫の声や空からの光、風や水の冷たさ、焚火の音など、デジタル環境にない、普段は得られない状況が自分の感性を刺激し、自分の気持ちに向き合う貴重な機会を与えてくれます。キャンプギアのレンタルもやっているので、ギアを揃えていない方も手軽にキャンプを楽しむことも可能です。

住所
〒420-0001 静岡県静岡市葵区平野

 

梶原 康太 (かじはらこうた)
東京都出身。大学を卒業後、損害保険会社(東京海上)で法人営業を3年勤務した後、お茶のベンチャー企業に入社。静岡県でお茶の生産・製造に携わり、2023年より販売部門の部長をしながら、お茶を飲む時間/空間の価値の高さに注目し、その価値を広めるべく活動。キャンプや旅などアウトドアな趣味をもつ。今後は東京のオフィスや街中で、キャンプの焚火のようにお茶を酌み交わす、そんな情景をつくることを目標としている。好きなお茶は大河内の煎茶と白茶。

Text by Kouta Hara