『旅商』が心奪われた土地を巡る旅
南馬久志/正藍染師・作家(かぜつち模様染工舎)
area:静岡/山梨/千葉
静岡県伊豆半島の中央部、修善寺にて日本古来の藍染め“正藍染”を行う〈かぜつち模様染工舎〉の代表であり正藍染師、作家の南馬久志さん。出身は兵庫県神戸市。ファッション専門学校時代、卒業制作としてジーパンをキッチンハイターで脱色した経験から“染”への興味をもった。“職人に向いている”という先生からの言葉が後押しになり、卒業後は修行の道へ。京都の友禅工場にて手捺染を学び、“創る”技術を身に着けた。その後、創るだけではなく、価値の高いものを考える“企画”する力も身に着けたいと、奈良の染織会社へと移り、企画室で精一杯働いた。
染めを生業にしていきたいと考え始めた頃訪れた伊豆半島で、土地の気候や景観に一目惚れし、2018年夏、新天地として移住。それと同時に〈かぜつち模様染工舎〉を構えた。かぜつち模様染工舎は蒅(すくも)を、灰汁(あく)で醗酵させて染め液を作る、室町時代より続く日本古来の藍染め“正藍染”を行っている。
型紙を用いて布を染め上げていく“型染め”という手法では、型の模様を考えるのも大事な工程の一つ。伊豆半島を囲む大きな海、火山地帯ならではの迫力ある山々、そのまま飲めるほど綺麗な川、自然豊かな土地だからこそ出会える風景からインスピレーションを受け、型染めの模様を施しているという。
南馬さんは共に工房を営む妻(南馬絵理さん)と息子を連れ、家族三人で旅商をしながら日本中を巡る。
制作するだけに留まらず、作り手として藍染の魅力を直接使い手に伝えることを大切にする南馬さんにとって、クルマは旅商を行う上で必要不可欠なパートナー。
「公共交通機関だったら時間も行ける場所も制限されるけどクルマは途中で休めるし、気分が変わればどこでも方向転換できます。自分たちの行きたい方向、求める方向に連れて行ってくれる。学びや経験を与えてくれるのがクルマ旅の魅力です」
家族と一緒にクルマで各地へ移動をし、旅先の夜は三人で川の字になり車中泊。海がある時は近くに泊めて朝日を見にいくのが楽しみだという。
今回、南馬さんが紹介してくれるクルマ旅のテーマは『旅商』。旅商とは、各地を旅しながら商売をすることを指す。彼自身が旅をしながら藍染を販売する中で、心が動いた、記憶に深く残っている場所を選んだという。
「様々な土地と繋がる旅商として、“染め”という知恵と一緒に土地を巡ります。風に吹かれながら、場所を訪れ、袖すり合うのも多生の縁ということで、道中で出会う人々との交流や、美しい風景に感謝の気持ちを抱きます。旅先での経験や出会いは、私の人生を豊かに彩ります」
クラフトフェアや作家さんのものづくりがお好きな方には楽しんでいただけると思います。
様々な手仕事のものを見て、触れて、心を一杯にしてほっと一息つく。自分の感覚がすっと澄む時間になると嬉しいです。
静岡県静岡市
01.高松海岸/大浜海岸/広野海岸
朝の時間を楽しみに、出展時は決まって車中泊するお気に入りの海岸
海を見ながら釣りができたり、広々としたエリアではサーフィンができるスポットも。天気のいい日には富士山が見えることもあります。芝生が広がる多目的広場や遊歩道のあるエリアもあり、太平洋が一望できるので、毎日お散歩に来たくなってしまうような場所。静岡市内でのイベント出展時は海岸近くにクルマを停めて、車中泊をします。
朝、起きたら子どもと一緒に海岸を散歩します。息子を定点撮影して成長の記録を撮り溜めており、家族にとっての大切な記憶に残っていく場所でもあります。
- 住所
- 〒422-8034 静岡県静岡市駿河区高松1丁目-21
山梨県富士吉田市
02.道の駅富士吉田
ハタオリの産地に立地する、富士山を臨める道の駅
ハタオリの産地として“ハタオリマチ”とも呼ばれる富士吉田。産地でお世話になっている方に会いにいく際は、この道の駅を訪れます。道の駅富士吉田は富士山が真正面に見え、年間を通じて多くの人で賑わっています。ちなみに、10月は『ハタオリマチフェスティバル』が開催され全国からたくさんの人が集まり、産地が注目される日もあります。
200台分以上の広々とした駐車場があるので、安心して車が止められることも嬉しいポイントです。たくさんの名物やお土産が並び、日本酒、ワイン、農産物やお土産にぴったりのお菓子に加え、富士吉田の郷土料理『吉田のうどん』も味わうこともできます。
- 住所
- 〒403-0006 山梨県富士吉田市新屋3丁目7-3
- IG
- @michinoeki_fujiyoshida
千葉県佐倉市
03.佐倉城址公園
『日本百名城』のひとつ、大自然在り、歴史在りの広大な公園
私たちが出展でお世話になる佐倉城跡の中に設置されている公園。2006年には『日本百名城』のひとつに選定されています。公園内には天守閣跡、空堀など城の遺構が残っており、天守閣跡脇の樹齢約400年の『夫婦モッコク』(千葉県指定天然記念物)、シイ、カシ、モミジなどの大木が見られる、緑豊かでとても素敵な空気が流れています。
ここに集う人たちもいい空気感を纏われている方が多いです。
- 住所
- 〒285-0017 千葉県佐倉市城内町 官有無番地
静岡県三島市
04.三島市立公園楽寿園
子どもから大人まで、幅広い層に愛される、小さな街のような公園
三島市立楽寿園はJR三島駅のすぐ南に位置する、家から一番近い出展場所です。毎年5月に『village 三島』が開催されます。このイベントは楽寿園を舞台に各エリアが街のようなイメージで分けられていて、歩くだけでも雰囲気を楽しめます。
緑豊かな森に囲まれた広さ約78,379平方メートルの自然豊かな公園にはどうぶつ広場やのりもの広場をはじめ、郷土資料館、県・市指定の文化財『楽寿館』などもあり、四季を通じて子供から大人まで楽しめる場所として親しまれています。
- 住所
- 〒411-0036 静岡県三島市一番町19-3
- URL
- city.mishima.shizuoka.jp/rakujyu
- IG
- @rakujyu_mishima
南馬久志 (なんばひさし)
服飾学校の卒業制作でデニムを脱色させたときに、色や素材の変化に興味を持ち、京都の染屋で修行を決意。現在は静岡県伊豆市、豊かな山と美しい水に恵まれた環境にて蒅(藍の葉を堆肥状に醗酵させた原料)を灰汁(あく)で醗酵させて染め液を作り、日本古来の藍染めを行う藍染師。
IG:@kazetuti_moyou_senkousha
Text by Kouta Hara