Column2026.05.29NEW [PROMOTION]

SNAP #01 | ペダルを踏みながら見落としていたものを探している

YUKI

「Bicycle as Freedom by narifuri」では、fashion+bicycle(機能性)を融合させたnarifuriとともに、自転車とともにあるそれぞれの“自由”のかたちを、スナップとコラムを交互に展開しながら記録していく。都市を走り、日常を更新し続けるサイクリストたちの現在地を追う。

SNAP #01では、かつて“女性最速のメッセンジャー”として知られ、シーンに新たな道を拓いてきたYUKIさんが登場する。サイクリストという存在に「自由さ」をまとわせている所以を、彼女の声を頼りに浮かびあがらせていく。

Bicycle as Freedom | 記事一覧

偶然にぶつかりながら、道はひらけていく

「何をしている人か」と聞かれると、YUKIさんは少し言葉を詰まらせる。メッセンジャーとして街を走りながら、写真を撮り、ZINEをつくり、展示を行う。ときにはデリバリーとして、ときには表現者として、その活動はひとつの肩書きに収まらない。

YUKIさんにとって重要なのは、自分で何かを定義することよりも、出会いや状況のなかで自然と立ち上がってくる流れに身を委ねることだ。

偶然フィルムカメラを手にして、日常のなかで最も長く向き合っている「道路」を撮り始めたことも、その延長にある。パンクを避けるために視線を落とし、路面のひび割れや小さな異物を探し続ける日常。その蓄積が、やがて“見落としていたもの”への感覚を研ぎ澄ませ、小さな写真集が生まれた。それ以降、定期的に彼女はZINEで発信を続けている。

目的地から目的地のあいだにある時間。数分のこともあれば、何時間のときもあるが、自転車に乗るという行為は、呼吸を整え、感覚をひらくための装置でもあるという。走ることで、世界は少しだけ違って見えてくる。そうした身体的な実感とともに、既存の枠組みにとらわれない表現やコミュニティへと興味がうつり、最近はクイアやノンバイナリーといった、多様なあり方が交差する場に注目するようになった。

YUKIさんの現在地は、そうした流れのなかにある。

──「自転車に乗ること」は、あなたにとってどんな時間? 

すごく集中する時間ですね。常に周りを見ていないと危ないので、自然と意識が研ぎ澄まされるというか。呼吸を整える時間でもあって、感覚としてはメディテーションに近いと思います。

──乗っている自転車について教えてください。こだわりのポイントも。

〈W-BASE〉のオリジナルブランド〈DURCUS ONE〉の『MASTER』に乗っています。いわゆるフィクスドギア(ピストバイク)で、構造がシンプルなのが一番の魅力です。メンテナンスがしやすいし、遠くでトラブルがあっても自分である程度対応できる。長距離も走れるし、ずっと乗り続けられる感覚がありますね。最近気に入っているのは、ジャカルタのパーツブランド〈TRNK〉の再利用できるケーブルエンド。小さいパーツなんですけど、使い捨てじゃないところに惹かれました。

レース仕様ではなく、街乗り仕様なこともあり、ボトムブラケットの位置が高い(地面からギアやペダルまでの距離が長い)ので、縁石に引っかかりにくいという。ケーブルエンドは〈TRNK〉。ブレーキレバーは〈KCNC〉のV6。ステムキャップは、〈God & Famous〉のブランドアイコンが刻印されたチタン製。

──自転車での移動距離、1週間でどのくらい?

だいたい200kmくらいです。週によって波はあって、もっと走るときもあるし、全然乗らないときもあります。

──好きなサイクリングコースは?

いわゆるコースというより、東京の裏道ですね。毎回少しずつルートを変えて、なるべく知らない道を通るようにしています。メッセンジャーのときは「止まらずに走り続けられるルート」を探しているけれど、普段はもう少しゆるくて、隙間とか、街角の見落としているものとかを探しながら走っています。

「いいルートは、そのときの流れで変わる」と話すように、正解はない。信号のタイミングや人の動き、その瞬間の街の“隙間”を読みながら、最適なラインを探して走っている。
──今回着用している〈narifuri〉のウエアはいかがでしたか?

マルチワッフルヘンリーネックTシャツ』は、肌触りがすごく柔らかくて、タオルみたいな質感だなと思いました。軽くて空気を含んでいる感じがあって、長時間着てもストレスがなさそう。肌に張り付かない感じもいいですね。

吸汗速乾・UVカットなどの機能を備えたポリエステルワッフル生地を使用した『マルチワッフルヘンリーネックTシャツ』。ペダリングを妨げないサイドポケットデザインがポイント

──ウエアを含め、ギアに求める要素は?

軽さと丈夫さ。この2つは絶対です。ずっと動き続けるので、すぐに傷んだりするものは使いづらい。シンプルで、長く使えるものがいいです。

──自転車に乗り始めた頃と現在、どんな変化を感じますか? また今後のサイクリングのシーンに期待したいことは?

最近はグラベルも多いけど、ピストは一時期のブームを経て、いまはカルチャーとして定着してきた感じがありますね。自分としては自転車を「自分で組む」「自分で直す」みたいな文化がもっと広がるといいなと思っています。ヨーロッパだとそういったDIYのワークショップも多くて、誰でも触れられる環境がある。日本でもそういう場が増えていくと面白いと思いますし、新しいパーツを買う楽しさもあるけど、視点を変えれば、すでに身の回りにあるものを組み替えることもできます。円安の状況もあって、既存のパーツを活かすようなカルチャーはこれからもっと広がっていく気がします。

──自転車に乗っていて、「自由」を感じる瞬間がありますか? どのような時に?

目的地と目的地のあいだにある時間ですね。個人的には、そここそ自由だと思っています。どこを通ってもいいし、何を見てもいい。移動できる範囲が広い分、見つけられるものも増えていく感覚があります。

──“サイクリスト”としての目標や目指す場所はありますか?

自転車をきっかけに、いろんな人やカルチャーがつながっていく流れを広げていきたいです。特にクイアやノンバイナリーの人たちも含めて、誰でも関われる場が増えていくといいなと思っています。ZINEを通して、ロンドンやベルリン、オーストリアなど、各地で自転車とコミュニティが結びついている動きとも少しずつつながり始めています。

もうひとつは『TRAFFIC GOD』という、交通安全のお守りのような存在をつくっています。事故を減らしたいという思いから始めたんですけど、少しユーモアを持たせながら、街の中で自然に機能するものとして広げていきたいと思っています。

YUKI
武蔵野美術大学卒業後、2005年にメッセンジャーの道へ。CMWCなど、世界各国のメッセンジャーレースで上位入賞を重ねる。現在はYUKHINX名義で、自転車を通して見てきた景色や視点をアート作品やZINEを通して表現している。
IG: @yukhinx

photo by Teppei Hagiwara / edit&text by Ryo Muramatsu / promotion by narifuri

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