Column2026.06.30NEW [PROMOTION]

SNAP #02 | 世界をひらき、日常を整えてくれるツールでもある

小俣雄風太

連載「Bicycle as Freedom by narifuri」では、fashion+bicycle(機能性)を融合させたnarifuriとともに、自転車とともにある“自由”のかたちを、スナップとコラムを交互に展開しながら記録していく。都市を走り、日常を更新し続けるサイクリストたちの現在地を追う。

SNAP #02では、「自転車ジャーナリスト」という肩書きを持ち、ロードレースの実況から記事・書籍の執筆、編集、ポッドキャストまでを横断する小俣雄風太さんが登場する。ペダルを踏むことで得てきた精神的な高揚や自由さを、もっと多くの人が味わえるような環境づくりに、自分の仕事を通して少しでも貢献できたらと語る。

Bicycle as Freedom | 記事一覧


自転車とは個人の道具でありながら、社会のインフラでもある

ツール・ド・フランスをはじめとする欧州レースの最前線に立ちながら、「伝えること」を軸に多方向へ広がっている小俣さんのライフワーク。現在の拠点は、八ヶ岳南麓の町・小淵沢。国内外のレースに帯同しながら、山のふもとの日常では、自転車はすでに「特別な趣味」を越え、暮らしのリズムを整えるツールになっている。

走っているあいだは気を抜くと落車の危険もあるため、意識は自然と目の前の路面とカラダにぐっと集まる。その集中が思考をクリアにし、自転車に乗ることは、ときにフィットネスであり、ときに瞑想状態でもあるような感覚をもたらしてくれるというのだ。

そんな小俣さんは、この連載『Bicycle as Freedom』ではコラム編を担当し、「自転車と自由」をめぐる個人史やツール・ド・フランスで見てきた風景、日本のサイクリング文化のこれからについて言葉を編んでいく。その書き手でもある彼に、自転車で走る時間のこと、愛用のバイクやウェアの選び方、そして“自由”の正体について聞いた。

──「自転車に乗ること」は、あなたにとってどんな時間? 

頭の中をいったんフラットにする時間です。レースに勝つために練習に打ち込んでいた時期もあって、その頃は特別な時間だったと思いますが、いまは勝ちたいレースがあるわけではなく、ただ自分が気持ちよく乗りたいから乗る。その意味では、人生の中に自然に組み込まれている時間になりました。

──乗っている自転車について教えてください。こだわりのポイントも。

今日は〈SPECIALIZED〉の『AETHOS』に乗ってきました。いわゆるレースバイクではなく、「レースバイクのテクノロジーを使った、週末ライダー向けの妥協しないバイク」という位置付けのモデルです。レースに出るわけではないけれど、200km、300kmと本気で走りたい人のための一台で、そういうバイクは、実はニーズのわりに選択肢が少ないんです。


『AETHOS』のポイントは軽量性。ロードレースにおいては、『AETHOS』の一部のモデルが「軽すぎて」重量規定に引っかかってしまうほどだ。小俣さんいわく、その軽さがそのまま「気楽さ」や「距離を伸ばせる感覚」につながっているという。

──自転車での移動距離、1週間でどのくらい?

出張でまったく乗れない週もあれば、家にいる週は週に3〜4日は乗ります。一回30kmのショートライドから、100〜200kmをかけて一日たっぷり走る日までさまざまですが、暮らしの隙間で走るときの「平均値」としては、1回40〜50kmくらい。夕方に1時間半だけ、仕事の合間に、という感覚でサクッと走りに出ることが多いです。

──好きなサイクリングコースは?

ベースはやっぱり、自宅のある八ヶ岳南麓エリア。登りが多く、コースバリエーションも豊富で、自分の脚と相談しながらいくらでもルートを組めるのが魅力です。

ライド中、タイミングよく追い風を受けた瞬間、風切り音がふっと消え、世界が一拍だけ無音になる時がある。「いま、自分の身体が風景とぴったり重なっている」と感じる瞬間でもあるそうだ。
──今回着用している〈narifuri〉のウエアはいかがでしたか?

自転車でそのまま街やカフェに入れるような「シティ寄り」のウエアが好きなんです。今日のようなシャツは、自転車に乗る機能性と、打ち合わせや取材先にそのまま行けるきちんと感の両立という意味で、すごくありがたい存在。そもそも〈narifuri〉は、「自転車のためだけ」ではなく、移動全体の中でどう気持ちよくいられるかを考えたウエアです。自転車と暮らす日常に、とてもフィットするブランドだと思います。


通気性の高いメッシュ素材の『アウターライクシャツ』。大胆なフロントポケットやアジャストカフス、ライド時に配慮した袖設計、リフレクターコード付きハンガーループなど、日常とアクティビティをシームレスにつなぐディテールが特徴

──ウエアを含め、ギアに求める要素は?

基本的には「軽さ」。ただ、いわゆるUL志向のように極限まで切り詰めたいわけではなく、「動きを妨げない軽さ」があれば十分だと思っています。自転車も、ウエアも、ヘルメットも、選べる範囲でなるべく軽く。移動や動作の感覚を鈍らせないことが、自転車の楽しさをそのまま引き出してくれるからです。

──自転車に乗り始めた頃と現在、どんな変化を感じますか? また今後のサイクリングのシーンに期待したいことは?

高校時代から自転車に乗っていて、25年ほど経って感じる一番の変化は、東京が圧倒的に走りやすくなったこと。道路環境の整備もありますが、なによりドライバーの意識が変わったと感じます。無理に追い越さず、自転車との距離をとってくれる。全国のあちこちを走っていますが、直感に反してむしろ「田舎のほうが自転車に人権がない」ことを感じます。あまり語られないですが、地域差は相当あると思います。

一方で、自転車の世界はまだまだコミュニティが細かく分断されているとも感じています。競技者、週末ライド、街乗り、同じ「自転車」という共通点はあっても、なかなか地続きになりにくい。各コミュニティがもう少しゆるやかにつながるにはどうしたら良いか、いつも考えています。

──自転車に乗っていて、「自由」を感じる瞬間がありますか? どのような時に?

正直に言えば、「自由しかない」と言ってもいいくらいです。自転車のいいところを尋ねると、世界のどこでも「自由だ」という答えが返ってくることが多い。特に欧米では、女性の服装や行動の自由を押し広げた存在として、自転車が語られてきた歴史もあります。

日本に引き寄せて考えても、多くの人が子どもの頃の「自転車の冒険」を記憶に持っているはずです。隣町まで親に内緒で走ってみたとか、行き先もよくわからないまま、自分の判断でペダルを踏んでいく体験。その延長線上に、今の「自由しかない」という感覚があるのかもしれません。

──“サイクリスト”としての目標や目指す場所はありますか?

理想論としては、もっと多くの人が自転車に愛着を持って、自転車のある生活を送れるようになってほしい。錆びた一台が軒先で野晒しになっている光景ではなく、自分の一台を大事に乗る、あるいはシェアバイクをみんなで丁寧に使うような社会。その実現に向けて、自分の言葉や仕事が少しでも役に立てばいいなと思っています。

個人的な目標としては、『パリ・ブレスト・パリ』にいつか出場して、書籍にまとめたいんです。パリを出発してフランス西端の町ブレストまで約600km、そこからまたパリまで戻る往復1,200kmのロングライドイベントで、その歴史と格式から、多くのサイクリストが夢見る世界でも最高峰の参加型イベントのひとつです。レースというよりは完走を目指す場ですが、自転車でどこまで行けるのか、自分の感覚とともに確かめてみたいですね。


小俣雄風太 (おまたゆふた)
自転車ジャーナリスト、編集者。国内外の自転車にまつわるイベントを取材。自転車を「その土地の文化を知り、体感するツール」に位置づけ、欧州ロードレース実況から小径車のサイクリングまで広範な発信に務めている。著書に「旅するツール・ド・フランス」(太田出版)。J SPORTSではレース実況も務める。サイクリングポッドキャスト&編集室のArenbergを主宰。
IG:@yufta

photo by Teppei Hagiwara / edit&text by Ryo Muramatsu / promotion by narifuri

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