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#10 旅を通して双子のアイデンティティを捉え直す〈前編〉
2025.05.23

#10 旅を通して双子のアイデンティティを捉え直す〈前編〉
by 船山改/船山潔

noru journalがおくるPodcast番組『窓がうごく(仮)』では、旅すること、移動することが暮らしに根付いている人々をゲストに迎え、さまざまなお話を伺います。

今回のゲストは、アーティスト・船山改(アラタ)さんと、クライマー・船山潔(イサギ)さんです。厳冬期の北海道でのバントリップをテーマにした連載『NEW OUTDOOR JOURNEY』(2025年2月〜4月公開)に登場してくれたのが記憶に新しいおふたり。二卵性の双子として生まれ、肩書きも活躍するフィールドも異なる彼らですが、山を愛し、自然と遊ぶ生き方は共通していて、それぞれ長野県に居を構えています。そんな2人と、今回は編集長村松の自宅の庭で収録。

前編では、自然に生きるふたりのアウトドア体験を通して、地球で遊ぶこと・生きることの新しい視点をお届けした連載『NEW OUTDOOR JOURNEY』の旅のことを振り返ります。旅の裏テーマであった“双子としての価値の再発見”。その真意に迫ります。

北海道・羅臼のバントリップで深まった、お互いの理解の解像度とは?

ここでは音声コンテンをまるッとテキスト化してお送りしていきます。

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お互いの価値観にフォーカスをあてた、北海道・羅臼のバントリップ

村松:さて、本日のゲストはアーティストの船山改(アラタ)さんと、クライマーの船山潔(イサギ)さんにお越しいただきました。

アラタ:よろしくお願いします。

イザギ:よろしくお願いします。

村松:2人は二卵性の双子なんですけど、ちょうどこの間までnoru journalの中で『NEW OUTDOOR JOURNEY』という連載に登場してもらっていました。バンに乗って厳冬期の北海道を旅するロードトリップがテーマで。個人的に旅の印象として残っているのが、壮大な山でスノーボードをするっていうミッションがありつつ、裏テーマとして双子としての価値の再発見、自分たちのオリジナリティをもう一度捉え直そうという狙いがあったと思っています。そのあたりの話もこの後、詳しく聞いていきます。まずは簡単に2人のプロフィールから紹介しますね。船山アラタさん、アラタがお兄ちゃんですね。


NEW OUTDOOR JOURNEY | #01 自然を相手に成功も失敗もない 船山改×船山潔

アラタ:そう、みたいですね。なんか双子はあまりお兄ちゃん、弟ってないですけど。

村松:何分差なの?

アラタ&イザギ:7分。

村松:(笑)。7分なんだ。一応覚えてるんだ(笑)。

では兄の船山アラタさん。ファッションデザイナーからキャリアをスタート。ペインティング、グラフィックデザイン、アートワークロゴ制作、写真撮影までをこなすアーティスト。企業ブランディングでは企画から制作、アウトプットまで手掛けます。

7分弟の船山イサギさん。十代からロッククライミングをはじめヨーロッパのフィールドを転戦。2021年よりガイドツアーサービス〈Gen〉を主催。バックカントリースノーボード、サーフィン、ハイキングなど、アウトドアアクティビティ全般を楽しむ。

実は今日は初の屋外収録でして。当初は焚き火しながら、とも思っていたんですけど、さっきまで雨が降っていたので我が家のデッキのタープの下で収録をしてます。一応説明しておくとですね、我が家は御代田町という軽井沢の隣町にあるんですけど、アラタの家が同じ町内でクルマで5分。

アラタ:はい。

村松:イサギの家は隣町で20分? 30分はかかる?

イザギ:20分ぐらい山の方ですね。

村松:ということで、めちゃめちゃ近所なので、今日は我が家の庭で収録してます。
さて、今日ゴールデンウィーク最終日ですけど、アラタは何してたの?

アラタ:僕、ゴールデンウィークは結局仕事をしていました。ゴールデンウィーク1週間前にゴールデンウィークをしていて。軽井沢の追分に新しくできた〈SANU〉という施設に泊まり行ったり。

村松:あ、追分なんだ。北軽井沢の〈SANU〉はこないだお邪魔しましたね。(STORY|セカンドホームは僕らの暮らしに何をもたらすか by本間貴裕

アラタ:そこに泊まりに行ったり、まだ山は始まる前だったんですけど、瑞牆山の方にキャンプしに行ったりゆっくり過ごして、連休中はなるべく仕事をしていましたね。

村松:イサギは?

イザギ:僕は、四国にツアーで5日間行っていました。

村松:へ〜、どこ?

イザギ:愛媛から入って、高知経由して、徳島で。山は石槌山と剣山を登って、淡路1日ステイして、京都まで行って、京都で解散っていうツアーを組んでやっていて。

村松:いいね。

イザギ:で、帰ってきて、1日開けて青森に弾丸で家族旅行行って(笑)、昨日は山に山菜を取り行ってというゴールデンウィークでしたね。

村松:その高知のツアーは〈Gen〉でやっているの?

イザギ:〈Gen〉でやっています。ただお客さんの要望に合わせて、今回石槌山に行きたいっていうことだったんで、その周辺でもう1個、せっかくだったら剣山も行こうってなって。その周辺のいい街だったり、景勝地だったりも絡めて、最後京都まで行きたいっていうのもあったので、淡路も行って京都も行って、っていうような5日間を計画してましたね。

村松:いいね。ちょっといろいろ話はしていきたいですけど、冒頭で説明したように、noru journalでついこの間まで2人の旅を連載でお届けしていました。旅の感想から話を聞いていきたいですけど、それぞれ自分にとってどんな旅だったかっていうのと、印象的な場面、エピソードを教えてもらいましょうか。アラタから。

アラタ:そうですね。なんだかんだイサギと旅をするっていうのは、初めてではなかったんですけど、計画をして北海道に行って、バントリップするっていうことが初めてだったので、すごく新鮮でしたし、まあ相変わらず喧嘩したり。そこらへんはある意味いつもと変わらない時間を過ごしたんですけど(笑)。僕もイサギも山が好きですけど、その好きっていうことにはいろんな好きがあると思うんです。僕にとっての山が好きっていうのは、景色だったり色合いだったり、そういうものが自分のデザインするものに繋がるっていう楽しみ方なんですけど、イサギはイサギで全然違う山の楽しみ方をしていて。それを間近で見れたというか、知れたので、双子でも全然違うんだなっていう新鮮さがすごく面白かったです。印象に残っているのは、知床半島の羅臼岳が今回1番の目的だったんですけど、とにかく長い道のりを歩いてバーって見えたあの山がジュラシックパークみたいで。たまたま長野の友達が北海道にいて。彼が札幌から知床までクルマで駆けつけてくれて、3人で行ったっていうのが何よりも思い出ですし、1番印象的な時間でした。


NEW OUTDOOR JOURNEY | #01 自然を相手に成功も失敗もない 船山改×船山潔

村松:noru journalでの連載の1回目で、今話してくれた旅の模様が紹介されていますけど、それがわりとメイン?

アラタ:そうですね、あれがメインではありましたね。あの旅が去年の3月なんですけど、2、3年前にイサギと別の仲間と一緒に羅臼は登った時に、イサギが「ああ、ここ滑れるよ。多分雪着いたら面白そうだよ」って言っていたのを、いろいろ思い出したりして。夏も行ったし、じゃあ冬も行こうかと。そういうこともあり、なんか意外と前々から見ていたというか、イサギも行きたがっていた場所でしたね。

村松:イサギはどうですか?

イザギ:僕は、山の感想とかで言うと、いつも長野で知らないところを調べていくような感じと同じで、ある情報や、天気を見ながら本当に行けるのかどうかっていう。普段の長野とかでの遊び方とすごい似ていて。旅自体の感想は、さっきアラタも言っていたんですけど、お互い自然に関わりながらも違う表現方法になっていて、それをこの期間中毎日目に触れることで、「ああ、なんかアラタはそういう切り取り方をするのか」とか、普段気にしてなかった部分を見れたのが面白かったですね。まあ最後は喧嘩して終わるという、すごい身内の話で終わっちゃうんですけど(笑)。

村松:そうね、この連載は最後喧嘩しましたっていうのが最終章でしたからね。

イザギ:(笑)。

村松:もともとこの旅の話を聞いた時に、アラタかイサギかが話していた双子のオリジナリティみたいなことを見つけられたらっていうのが裏テーマとしてはあったと思うんだけど。旅の目的って当然どこ行くとか、誰かに会いに行くとかになると思うけど、一緒に行く人との関係性を見直す旅っていうのもいいプランだなと思ったのは、印象に残っている。その裏テーマは達成できたの?

アラタ:僕はできたと思いました。

村松:ほお、そうなんだ。

アラタ:それこそ、記事のインタビューでもイサギが言ってましたけど、頭の中の山の地図を埋めていくみたいな、空白になっている白黒の薄い山だったところから自分で歩いて線でなぞっていくというか。そういう俯瞰した視点から山遊びを楽しんでいるって、聞いたことない山の捉え方で。また違う視点で僕も山遊びを楽しめそうだなと思って、そういう意味では僕は達成できたなと思いましたね。

村松:確かに。連載の中でイザギが「旅をしながら自分の地図を作っていく」という話をしてくれていて。スキルの探求も地図を広げるためのものだと話をしてくれていたけど、それは僕もすごい印象に残っていたことだったと思う。どうですか?イサギさん。

イザギ:そうですね、関係を見直す旅っていう意味では、ちゃんと見直せたのかなっていう気がしますね(笑)。外側から見たら、ただ2人で移動して山を登って終わりなんですけど、僕らからすると、意外と山に登る時間よりも、それ以外の一緒にいる時間の方が長かったりしたんで。話ししたり、喧嘩したりとかもね。だから、すごくわかりやすい関係性の見直し方になったのかなって気もしますしね。改めて相手が何をやっているかとか、どう考えるのかとか。まあ、山の時間はそういう時間じゃなかったんですけど、それ以外の時間はゆっくり旅する形で移動をしていたので。普段そんな時間もないので。

村松:それぞれの違いを認識したって感じ?なのかな。

アラタ:そうですね。もちろんお互い別人なので、違いはもともと知ってるんですけど、よりその解像度が上がった。生活では別に解像度はどうでもいいもの。ただお互い山で使うスキルが違って、そのスキルの解像度が上がったっていう感じですかね。

イザギ:そうなんだ。

村松:それぞれの能力を認識し直したってこと?今の話は。

アラタ:そうですね。その能力がよりもっと明確にわかったというか。ただ山を登って、ギアを使えて、山の状況判断能力があってっていうところもそうなんですけど、さっき言った山の捉え方だったり、どう遊んでるかだったり、もっとなんか深い部分を知れたというか。それによって多分、じゃあ別の山をイサギと行った時に、ここはこういう風に見えてんの?とか、こういう景色を見るためにはどうしたらいいの?みたいな。また違う会話だったり、また違う僕が知りたい景色の見方みたいなものをきっと教えてくれるんだろうなって。そういう意味の解像度が上がったっていう話ですね。

村松:そもそもこれ、どっちが見出してこの旅が始まったのかというのと。なんで双子のオリジナリティみたいなものを再発見したかったのか。アラタ発だったんだっけ?

アラタ:僕だったと思いますね。

イザギ:羅臼は俺じゃない? まあ、行った時点で決まっていたよね。いつか行こうみたいなのは。

アラタ:意外とそれがいつもなあなあになるというか、どっか行くってなっても突然決まったりするんですけど。ちゃんと行こうよ、ちゃんと計画してやろうよって言ったのは僕だけど、あ、じゃあ羅臼行こうよと言ったのは多分イサギ。で、オリジナリティの話は僕の意見ですけど。山をやっていた人間がサーフィンをやり始め、いろんなスポーツをやり始め、僕から見たらなんか一瞬、山を離れたような風に見えて……。

村松:(笑)。え、何、イサギが?

イザギ:(笑)。

アラタ:そう。離れたというのは、難易度高いところにどんどんどんどん攻めていくっていう姿勢からもっとソフトになったというか、何年か前からそういうふうに変わったように見えたんですよ、イサギが。

村松:ストイックに山のスキルを上げたり、そこに没入するっていうよりは、

イザギ:あーなるほどね。

村松:もちろんヨガもやっているし、サーフィンもやるしって、アクティビティの幅が広がっていった時に? なんか双子の兄的にはやや心配みたいなそういう感じ?

イザギ:(笑)

アラタ:でもそうかもしれないですね、心配というか、これは僕よがりの考え方なんですけど、そうやって切磋琢磨をしてきたつもりでいて。変わったことに別に疑問も心配もないですけど、なんで変わって、イサギが果たして何を求めてそうなったのかっていうのを知りたかったっていうのは多分あったと思うんですよね。スポーツって、マラソンとかもきっとそうですけど、速いのがすごい、それが結果みたいなのが、王道というか。

村松:ひとつのベクトルとしてはそうだよね。

アラタ:ひとつのベクトルとしてすごい太い道だと思うんですけど、そうじゃない選択をしたイサギの考え方が何なのかって、多分浅間山にふらっと2人で

村松:じゃあ知りたかったんだ。

アラタ:知りたかったですね。気持ちの話ですけど、僕はどっちかっていうと戦ってるじゃないですけど、未だに面白いものづくりとかするために、どんどんどんどん欲が埋まらない感じなんですけど。そうじゃない考え方になったのがイサギだったんで、それが何なのかなと。

イザギ:(笑)。それは形が違うだけなんだけど(笑)。

村松:ちょっと聞いてみよう(笑)。1回イサギに。どういうふうに、アクティビティの幅が広がった真意はなんなのかっていう。

イザギ:あ〜、なるほど。まず1回、アラタの話を整理すると、確かに今回の羅臼でいうと、僕の領域にアラタが来た感じだったんですよね。

村松:うん、そうだね。

イザギ:イサギ:ちょっとアルパイン的要素もあるけど、僕でいうと最低限これぐらいはできると言ったらあれですけど、そのくらいのスキルの冬山。アラタからするとチャレンジだったかもしれないですけど、僕からすると、ちゃんと集中すれば楽しくピクニックぐらいの気持ちで行ける山だったんです。っていうのを1回前置きにして。確かに、アルパインクライミングで難しいものとかをやってた時期があるんですけど、サーフィンに魅了もされちゃって。その分、本当にできないとか、うまくならないとかの苦労もあって。アルパインクライミングで培った精神面とか体力みたいなものがサーフィンで粉々にされて(笑)。それから自分と向き合うには別に1個である必要はないなって思ったんですね。それは多分いろんなものがあるし、もっと僕は季節で遊びをしたかったんで。そうなってくると、冬はアルパインクライミングだったり、バックカントリー。真夏はフリークライミングやったりで、そこにサーフィンが入ってきたっていう中で。僕の中からすると、より季節のホットな遊びをできるようになったとも言えるんですね。1個のものを突き詰める楽しさもめちゃくちゃ好きなんですけど、やっぱ1回きりの人生なんで、いろいろやってみたくなっちゃったなっていう(笑)。ただ、どれも自然と自分の体ひとつでっていうのは変わらないんで。挑戦とかもね、してないつもりはないんですけど、ある程度負荷がかかることは好きですし、そういうものとずっと向き合いたいなっていうのはありますね。


村松:うん。ということですけど。

イザギ:(笑)。そうですね、どうですか。

アラタ:サーフィンの話は、実は前もこの話イサギとしたことがあって、納得もしてて。それを会話じゃなくて、現場でやっぱ知りたかったなっていう。それは僕のこの旅で知りたかった1ポイントみたいな。

イザギ:まあ、アラタが納得する最低限の山のレベルを見せられてよかったっすね。僕からしたらね、一応ね。

村松:じゃあアラタ的にはイサギがある程度長い年月かけて積み上げてきたアルパインみたいなことを、もう1度見たかったみたいなのもあるんだ。

アラタ:見たことないんですよ。

イザギ:見たことないですね。誰も見たことない。

アラタ:僕も最低限、スノーボードができるようになって、初めて同じ土俵に立てるのがたまたま去年。長野では何回か一緒に行ったんですけど。僕の中で長野ってちょっと安心感があるんですよ、近いし。だからそれが全く違う場所だと、僕の中でやっぱり緊張感が違うんで、そういうのを見てみたかったですね。

村松:へ〜。

アラタ:まあだからなんだっていう話でもあるんですけど。

村松:なんか恋人でもないし、家族ではあるんだろうけど、夫婦でもないし……。なんかさ、双子ってちょっと兄弟ともまた違う距離感っていうかさ。

イザギ:そうですね。

村松:他人というかね、自分とは違う誰かに対しての興味関心のなんかレベルが高いよね。

イザギ:そうなんですかね(笑)。

村松:いや、わかんない(笑)。

アラタ:身内に向くからってこと?

村松:そうそう。

アラタ:それはあるかもしれない。

イザギ:ただ興味あるないは多分兄弟次第な気がしますね。

村松:そうだよね。だからもうわかんないけど、なんか、自分に置き換えてないだけかもしれないな。

アラタ:確かに。

イザギ:僕とかあんまり気にしないタイプなので。

村松:うん。

イザギ:自分の山ばっか見ちゃうんですけどね。アラタが何しているかとか、定期的に聞くぐらいなんですけど。

アラタ:いや、僕も基本的に興味ないですよ。

村松:(笑)。

イザギ:(笑)。

移動も旅になる。バントリップも魅力と楽しみ方

イザギ:僕らがやっているスポーツとかって、なんかわかりやすいじゃないですか。やってないとやってないし、表に出すとやってるんだなっていう。それだけといえばそれだけになっちゃうので評価が。どうしても行ってないと、やってないって思われちゃうんですよ。

村松:ああ〜そうだよね。

イザギ:それはありますね。行かなくなってたんで。バックカントリーにハマってなおさら攻めたアルパインクライミングみたいなものよりかは、もうちょっと自分なりの遊びみたいなものになってきちゃってたんで最近とか。でもその遊びの本当一片みたいなものは羅臼で共有できた気はしますね。僕が好きな、今やっている遊び。登りも下りも楽しいよね(笑)、みたいなのはあったかもしれないです。

村松:オリジナルの地図を作るみたいなことで言うと幅が出てはいるし、イサギ自体のモチベーションとか、目指しているものっていう意味では広がっていくのは自然な気もするけどね。それと今回の北海道の旅は、バントリップ。バン1台で、2人で車中泊しながら旅してもらってましたけど、バンで旅するっていうことの魅力は、それぞれどうですか?

アラタ:それこそ記事のインタビューの中でも言いましたけど、途切れない感覚がやっぱり好きだなと思っていて。例えば、長野にいて4日間山登ろうってなったら、家に帰れて、また登り行って、風呂入ってまた家帰ってって、1日1日が途切れてる気がする。それが、バンだと移動しながら寝て、移動でご飯食べて、またどこかに登り行くのか、どこかに歩き出すのか。なんかそれがバンを借りてから返すまでがすごく繋がっているのが、集中もできるし、気持ち的にもいつも高いモチベーションのままいれる。それが居心地の良さだったり、パフォーマンスの良さだったり、今回の羅臼のバントリップで感じたことでしたね。バンの良さ。

村松:確かに車中泊は旅の時間が途切れないっていうのは面白い考え方だなとは思っていて。連載の2回目かな? でもわりとそのことは紹介しているんですけど、かたや一般の人はさ、休憩したいじゃん?

アラタ:へえ〜。

村松:っていうことも想像できるじゃん。毎日一息つきたいみたいな。

アラタ:ああ、そうですね。

村松:だから結構アクティビティよりの考え方でもあるのかなとは思った。旅の時間が途切れないっていうのは、イサギもそうだなって感じ?

イザギ:そうですね。本当、流れるように移動できる。あとは身軽さ。多分それに関連するんですけど、すべてが余白だらけなんで。移動できる距離も自分たちで選べるし、行き先も選べるし。どこに行っても、誰に会っても何をしてもいい状態。なかなか歩いても遠いし、タクシー移動ってあんまり現実的ではないですし、ホテルは1個ベースができてしまうんで、時間の余白しかないのが1番いいなと思いました。自分たちなりにすべてアレンジできる。それが自分たちにも合っていて、その時間の使い方が好きなんだなと思います。

村松:うん。なんかバンだとさ、 “Less is more”じゃないけどさ、限られた装備や物でミニマムな旅になるじゃん。多分2人はさ、わりと日常からもう車中泊してそうだから。

イザギ:(笑)。してますね。

村松:そもそもあんまりそこは連載でも触れなかったし聞いてもこなかったけど、多分すごくバントリップの魅力のひとつではあるよね。

イザギ:そうですね〜。

村松:“Less is more”的なものは。

アラタ&イザギ:うん。

イザギ:やっぱそれ以外にすべて時間が使えるんで。

アラタ:自由度が本当高いよね。

イザギ:そう、自由度が高い。

アラタ:そうじゃない日ももちろん好きですけどね。でもなんかそれが全く違う時間の過ごし方になっているというか。

村松:バントリップならではのエピソード、記憶にありますか?

イザギ:バントリップならではのエピソード…。

アラタ:あの北海道の?

村松:そうそうそう、急に振ってみましたけど。

イザギ:でも山の話で言うと、山の近くで寝れるんで、山のアクティビティに集中しやすい (笑)。あんまり何も困んなかったもんね。別に米も炊けるしさ、ガスコンロ2台あれば料理できるし、お昼ご飯も自分たちで作った。米でっかいの買って、毎日米炊いてたりとかしたんで。

アラタ:おにぎりにめっちゃしました。ご飯。

イザギ:それバントリップのエピソードじゃないでしょ。

アラタ:いやいやいや。っていうのもさ、やっぱ片付けしなきゃいけないじゃないですか毎回毎回。お米をいつもイサギがだいたい全部おにぎりにするんですよね。食べ終わっておにぎり、おにぎり、おにぎり、おにぎりみたいな。エピソードトークとしてはやばいですけど(笑)。

イザギ:なんか朝日と夕日のタイミングで好きな場所に入れるのはめっちゃいいなと思って。高確率で朝日と夕日を見に行っていたんですけど、僕は山よりもそっちの方が印象的でした。シンプルに良かったです。

村松:翌日見たい朝日のポイントで、寝るわけじゃない?

イザギ:そうそうそう(笑)。だいたいその地形見れば、太陽がどんな感じで上がってくるかとかもわかるんで。ちょっと西向きにいようなのか、東向きにいよう、なのか。自分たちが好きな時間をピンポイントで見れるのはいいですよね。

アラタ:(笑)。

イザギ:弱いかな。

アラタ:違う違うそのさ、クルマの中のエピソード考えてみたら、移動してっていうのはさ、最悪バンじゃなくてもさ、車中泊で自分たちができることだったじゃん。

イザギ:快適だなって思ったマジで。あのバン贅沢すぎました自分たちには。

アラタ:広かったです。

イザギ:広かった、贅沢で最高。〈MOVING IN〉のバン、めっちゃ良かったです。

村松:うん、いいね。アラタが真面目にいい話しなきゃいけないみたいな感じもね。

アラタ&イザギ:(笑)。

村松:さて、そろそろお時間なので、今週はここまで。今日の話を簡単にまとめると、双子のオリジナリティーを見つめ直す旅として、バントリップを選んだことはすごく良かったのでは、と思いました。「車中泊は旅が途切れない」という魅力については、2人も語ってくれたけれど、そうやって途切れることなく、会話して、移動して、ご飯を炊いて、同じ景色を見ながら、それぞれの違いを認識し合った。いわゆるそのミニマムなルーティンの中で、きっとその違いを見つけることにも集中できたのではないかな、と想像できました。改めて、ご協力いただいた〈MOVING IN〉にも感謝ですね。

2週間後に公開予定の後編では2人の自然観や自然との暮らしの話を聞いていけたらと思います。ではではありがとうございました!

アラタ&イザギ:ありがとうございました!

船山改 (フナヤマ アラタ)
ファッションデザイナーからキャリアをスタートし、ペインティング、グラフィックデザイン、アートワーク、ロゴ制作、写真撮影までこなすアーティスト。企業ブランディングでは、企画から制作、アウトプットまで手がける。
IG:@arata_funayama


船山潔 (フナヤマ イサギ)
10代からロッククライミングをはじめ、ヨーロッパのフィールドを転戦。2021年より、ガイドツアーサービス〈Gen〉を主宰。バックカントリースノーボード、サーフィン、ハイキングなど、アウトドアアクティビティ全般を楽しむ。
IG:@isagi.f.de_le_rue


村松亮(むらまつりょう)
noru journal編集長。東京-伊那谷-御代田の3拠点を移動しながら暮らす。会社・編集部は東京なので、週2~3回は出稼ぎに。2022年より、家族と米作りを始めました。
IG : @ryomuramatsu