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取材から1年。伊那谷のクルマ旅を振り返る
2021.01.01

取材から1年。伊那谷のクルマ旅を振り返る
by noru journal編集部

編集部のスタッフが、記事の裏側や制作意図をレポートするエディターズノートをスタートする。制作メンバーの紹介も兼ねつつ、ときに人気シリーズのまとめ記事や取材事後のレポートなどなど、自由に活用していくのでお楽しみに。

» Editor's Note

エディターズノート初回は、クルマで旅をしてこそ楽しめるエリアを紹介するコーナー〈travel〉の「伊那谷」編を編集長の村松が振り返る。

伊那谷という知られざる「陸の孤島」

最初の特集で、なぜ「伊那谷」を選んだのか

「伊那谷/いなだに」という地名を聞き慣れない人もきっと少なくないだろう。だから、最初の特集で伊那谷?と疑問に思った人もいたかもしれない。

伊那谷を選んだのは単純に僕のライフスタイルと密着した土地だったからだ。僕たち家族は、2013年から東京と長野の二拠点生活をスタートした。それまで東京のマンション暮らしをしながら、どこか地方へ拠点を持ちたいと漠然と考えていて、後に選んだ先が伊那谷だった。行ったり来たりしているうちに、妻と子どもは完全に移住し、僕は平日東京で働き、週末は長野で家族と集合。という具合にスタイルも年々変わっていった。そうやって少しずつ土地に根を張っていくにつれて、この土地の魅力にさらに強く惹きこまれていったように思う。

それに、一歩外側から見ても観光地としての伊那谷とクルマ旅との相性はとてもいいことを知った。

1. アルプスを望む絶景があちらこちらに
伊那谷は市町村ではなく、エリアの通称だ。伊那市や駒ヶ根市、飯田市、中川村など複数の自治体が含まれる広大な盆地で、3,000m級の山々が連なる中央アルプスと南アルプスに挟まれている。特筆すべきは、そのスケール感。端から端まで谷の横幅は約10キロ。旅をしていて、常にアルプスの山々が車窓のどこかしらから望めることができるし、どちらかの山側を上がれば、広大な谷が簡単に見渡すことがというのは唯一無二の魅力がある。

2. 観光地として大ヒットしていない、ほどよいマイナー感
新幹線が通っていないエリアで、メジャーな観光スポットも少ない。山好きやキャンプ好きの一部には熱い支持を集める伊那谷だが、まだまだ未開拓なエリアだと言っていい。ゆえにクルマ旅中に「渋滞」に遭遇することも、駐車場で「満車」の表示を見ることもほとんどない。この「混雑していない」というノーストレスな状態は、旅をする上でシンプルに最高だ。







クルマ旅を「更新しなかった」2020年

2020年の5月に公開した特集『伊那谷』は、約1年前となる2019年の11月に取材を実施している。まさか取材当時、このようなカタチでクルマ旅がフォーカスされるとは誰も予想していない。2020年という激動の年を経て、クルマ旅=“不特定多数の人との接触を避けられる移動手段”として認知され、市民権を得た。アウトドアが更なるブームとなり、車中泊も注目のスタイルとなった。そうした世間の動向の中で、緊急事態宣言中の移動規制もあいまって、越境といった遠出には責任が伴うようになった。そうした流れもあって、残念ながら〈travel〉の取材は長いこと中断をしていた。そして2020年の冬からようやく取材を一部再開した。

次なる〈travel〉の特集エリアは、群馬県の桐生。なぜ桐生か。簡潔に言うと、次は関東エリアにしたかったこと。まだ発展途上のエリアであること。その条件で探していくと、桐生には地方ならではのお店が複数あることに気づいた。さらに掘っていくと、豊かな自然と街の距離の近さにも惹かれ、それでいて新幹線の駅からは程よく離れている街なので、クルマでアクセスするしかない陸の孤島感も良い感じなのだ。

年が変わり、2021年となった今。移動に伴う責任には引き続き、ウイルス感染の問題はついてまわり、それに加わって環境配慮の問題ともリンクし始めてくるのだろうと思う。いずれガソリンからEVへ。重い腰を上げた政府が打ち出したように僕らは脱炭素を目指し、低炭素型の暮らしを急速に求められている。そんな中で取材していく桐生編には、初回の伊那谷編とは違うトピックスも加わることになるだろう。

次回〈travel〉の更新は2021年の春、多分、、お楽しみに。

村松亮
クルマ・オタクではない短所を「伸びしろ」と捉えて暖かく見守ってほしいと願うnoru journal編集長。1983年東京都生まれ。小中高は茨城県で育つ。10代はサッカーに没頭し、20代はクラブカルチャーに。前職では映像メディアDEFRAGの運用、スポーツライフスタイルメディア『onyourmark』とその雑誌版『mark』の立ち上げに参画。2016年よりSHIKAKU incに所属し、2020年にnoru projectを発足。“移動とライフスタイル”が自身のテーマとなるきっかけになった長野と東京の二拠点ライフは、震災を経て2013年にスタート。2020年春からは、東京には拠点を持たずオフィスのみとなり、平日は長野県の御代田町(軽井沢と佐久の間)にある丘の家、休日は中央アルプスと南アルプスに挟まれた伊那谷にある山の家で過ごす。山は登るよりも眺める派、趣味はヨガとランニング、BBQ、キャンプ。子どもはふたり、飼い犬はイタリアングレーハウンドと、ウィペットの2匹。
Instagram:@ryomuramatsu

Photo by Shinji Yagi / Text by Ryo Muramatsu / Illustration by Inigo Gutierrez