column

〈DRIVETHRU〉創刊から10年。選択してきたのはチャレンジングな道。
村松:本日のゲストは、前編に続いてオンラインモーターマガジン〈DRIVETHRU®︎〉のディレクターである神保匠吾さんにお越しいただいています。では引き続きよろしくお願いします。
神保:よろしくお願いします。
村松:前編では、コンバートEVであったり、最近のEV事情みたいなことも踏まえつついろいろお話ししていただきました。後編では、立ち上げて10年になる〈DRIVETHRU〉のこれまでと、これからについてお話を伺っていけたらと思います。ちょっと前にnoru journalの方でも神保さんに出ていただいたときに、インタビューの中で答えていらしたんですけど、〈DRIVETHRU〉立ち上げの頃って、プロデュースした旧車とかトレーラーを販売してたって話、これは何でやめちゃったんですか?
神保:そうですね、〈DRIVETHRU〉で紹介するとよく売れてましたよ。
村松:言ってましたよね。
神保:ビジュアルとテキストをまとめて、わかりやすいように書いて、普通には存在しないであろう紹介の仕方をするので、それを読んだらそのままも欲しくなっちゃう感じでしたよね。そのまま購入してもらえるんだなっていうのはよくあったんですけど。やめたのは、やっぱりクルマを売ろうとしてる人が売らなきゃ、カルチャーが育まれないというか、自分が広めたい世界は広がらないなっていうのを思い始めて。自分が売るとその順番がおかしくなっちゃうので、エンジニアリングとクリエーションみたいなことはやりますけど、あんまり販売っていうことは大々的にするのはもうやめましたね。もっと違うことをやった方がいいなとか、もちろんクライアントワークというか、制作でクルマをつくることはありますけど、あんまり一般の方に販売みたいなことをやるのはやめたというか、前に出ないようにしましたよね。
村松:カルチャーをつくっていくっていうのは、クルマを売るっていうことではなくて、具体的にはどういうふうに考えていたんですか?
神保:そうですね。ポジションとかそういうわけではないですけど、もっとガチャガチャしてないと、いろんな選択肢がないと、広がらないんじゃないかなっていつも思ってて。よく音楽の例を出しますけど、ある音楽のシーンができていくのって、このバンドがいて、このユニットがいて、このグループがいて、っていっぱいあるからそれがシーンになっていくような気がしていて。仮に〈DRIVETHRU〉が、全部やることはできないにしても、スタッフを入れて全部網羅していこうという考えた方もなくはなかったと思うんです。だけど、それだとできすぎた世界になりそうだなと思って。マネタイズしていく上ではそっちの方がよかったのかもしれないんですけど、どっちかというと僕はギリギリでも紙一重な方に挑戦したくなっちゃうタチなので(笑)。もっと難しい方でやってみよう、ということで販売するのは終了にして、よりチャレンジングな方向を歩み出したっていうのはありますね。あと、純粋にクライアントワークのクリエーションといったクリエイティブ周りで仕事ができる方向もあったので、そっちをやった方がいいなっていう気がしました。裏側にまわろうっていう考え方ですかね。
村松:クライアントワークでは、商品開発に関わったりだとか?
神保:みたいなだったり、あとは個々のお店とかショップさんだったりメーカーさんのカラーがあるので、クリエイティブディレクションで何か強烈にクールにしていくのではなくて、そこにはそこの良さがあるので、その魅力がなくならないようにサポートしていくのがいいのかなと思って、絶妙な立ち位置で寄り添っていくことをやっている感じはありますね。
村松:10年前にオンラインのメディアを立ち上げて、いわゆる既存メディアにあるような広告収入でマネタイズしていくっていうことではないチャレンジのひとつとして、クルマをつくったり、それを売ったりっていうのをされてたと思います。その期間のある種の蓄積が今の表には出てないようなクライアントワークにちょっと役立ったりはするんですか?
神保:そうですね。やっぱ10年経っていますからね。いろんなところで苦しんでやってきましたけど、それはあると思いますけどね。
村松:マネタイズ的にはどうなんですか?〈DRIVETHRU〉は。
神保:〈DRIVETHRU〉はそんなにもうぼろ儲けは全然してないですけど、赤になるようなことはならないようにするので、マネタイズがめちゃくちゃ調子いいとは言えないですよね。
村松:でも今の記事の中にタイアップとかあります?
神保:タイアップの記事だと基本的にはそんなにないですよね。大体どこかで書いてたり、〈DRIVETHRU〉は今はメディアサポートみたいなことをやっていたりして、それでもらってたりということもありますけどね。
村松:他の媒体のサポートっていうことですか?
神保:今は香港とかあの辺の人たちと仲良いんで、グローバルのやつとかですかね。なんかハブになっているようなものが多いですけど。
村松:そうですか。へえ〜。
神保:広告いらないわけじゃないんで。
村松:(笑)
神保:広告したいっていう人はもう全然、よろしくお願いします!ですけどね。
村松:それはね、noru journalも一緒です。ぜひ広告。
神保:広告受付中です、ぐらいな感じですよね。
村松:営業行ったりします?
神保:ないですよね。
村松:うちもそれは本当に、ほとんど営業らしい営業はしていなくて。ただ何か既存のいわゆる広告収入で、オンラインメディアを通常営業させていくというか、それ前提で全てのマネタイズを成立させてしまうと、なんか苦しいのは見えているんですよ、立ち上げの頃から。だけどその解決方法をしっかり模索したり答えがないままに、うちも5年ぐらいやってるんで。裏側で、会社として請け負っているクライアントワークだとか、スタジオ運営みたいなところの予算で、メディアの制作費を賄っているような状況ですね。
神保:そうですよね。一緒だと思います。うちもスタジオもやりつつ会社自体は雑誌だったり出版なので。僕はウェブの媒体で、特にタレントさんだったり人物にあんまりフォーカスせず乗り物、モビリティだけにフォーカスしてるんで、コストというコストは全然比較にならないぐらいかからない。こじんまりやっているっていうのではあるんですけど。
村松:自分たちでプロデュースしたり、クルマを売ることをやめる決断をされて、メディアとしてはどうしていこうみたいな感じで今に至ってるんですか?
神保:さっき話したのは決断ということでもないんですけどね、気づいたらそうなっていたっていうような感じで。その時々でこっちかな、あっちかな、みたいな考えてやっているだけですかね。だからあんまり目標をバーンって立ててやっているってわけでもないんですよね。思いついたプロジェクトが常にあるから、それを完成させて、どう発表して、いろんな人に知ってもらってということをしてきた。今でいうとモバイルSSに集中してやっていて、2号機をどうやったら量産ができるか構想を立ていて。量産って今までやってなかったな、みたいなので知っている人たちに聞いて「量産するの!?」みたいな話しをしていて。「最低100台はつくらないと量産とは言わないよ」とか言われたりして。じゃあそれを達成するにはどうするべきかなというのを考えていたら多分5年とか経っちゃうんでしょうねという感じですね、僕は。
村松:メディアをご自身でやられていて運用していく中で、当然取材するものと、かたやコンバートEVだとか『モバイルSS』みたいに自分発信でプロジェクト化して、そのプロジェクトもメディアとしても発信していくこともしていて。周りを巻き込んでプロジェクトをつくっていくっていうことと、取材対象に取材しにいくっていうのは、どういうバランスなんですか? どっちを頑張ろうみたいな意識はあるんですか?
神保:そうですね、どっちかっていうと僕は取材しますけど、基本的に知らないことにしか向かってってないんですよね。人のインタビューとかになってくるとまた話は違ってきますけど、モビリティやクルマ関連は本当に興味があって知らないことだったりするのが大体取材になっていて、それを理解した上で、だったらもっとこっちとこっちが結びつけば更に面白いことができそうだなってなるとプロジェクトになっていくっていう感じですよね。ただ取材して、そのまま紹介する、記事化するだけってこともいっぱいありますし。
村松:そのプロジェクト化していくっていうのは、自然に生まれていくのですか? 意識的ですか?
神保:意識的か…。まあ、何か根本的に面白がってもらいたいだけなので。何かを見つけて、これをこうやって使ったら面白いよね、みたいな。それを笑ってもらうのか、興味深く更に寄ってきてもらうのか、どっかで話題にするのかわからないんですけど。知ってもらって面白くなって、その人の何かが変わってくれたり良くなってくれたらいいな、みたいな話で。多分それが僕にできる仕事のひとつじゃないかなと思っています。少なからず人の為になるわけなので、その為になった分が仕事としてお金になるのかな、ということが何となく根底にあるんですかね。チップをもらうかわからないですけど。
もはやマガジンはいらない!? 〈DRIVETHRU〉がなくなる未来の方が面白い
村松:そういうプロジェクトを生み出していって、ことを起こす中で、巻き込んだ人たちのマインドを変えていったり、何か届けてくっていうところの今の話と、このオンラインのメディアはどういう位置づけなんですか?
神保:そうですね、オンラインのメディアは幅広く扱っているのでハブになる場所っていう感じですかね。〈DRIVETHRU〉っていうところに何かのプロフェッショナルたちがいろいろ、僕が見つけてきたりする人たちが違う側面をみんな知り合うのか。そこがハブというか。マガジンである必要はないんだよなってよく思うんですよね。
村松:面白いですね。
神保:基本〈DRIVETHRU〉を知っている人には取材しにいかないので。いかないってわけじゃなくて、基本僕が知らないところにいくんで、あなたは誰ですか?から始まるみたいな感じで。
村松:ほお。面白いですね。
神保:結果的にっていう。
村松:結果的に。それは狙ったというよりは結果的にそうなっている?
神保:なような気がしますよね。だいたい。とても大変です、だから(笑)。
村松:(笑)
神保:だいたいアウェーですよ。
村松:そうなんすね。え〜でもそれ面白いですね。手探りでいざ10年やったらその形になっていたんですか?
神保:なっていたし、10年経ってもやってる事が一緒なんだなっていう、なんかそういう感じですよね。
村松:ハブになっているっていうのは、人だったり企業だったり。
神保:そうですね。
村松:コミュニティと出会って、そこが繋がったり、違うとこと、違うとこが繋がるためのハブにもなるし。
神保:とかですね。今で言うと、香港の〈GRS〉っていうストリートブランドがあって、仲良しでいろいろやってるんですけど。アジアとヨーロッパだったり、アメリカとかのちょうどハブになっているのがとても面白い。僕の知らなかったもの、見落としていた香港だったり、台湾だったりいろんなところがとても面白いなと思います。逆に、彼らから見た日本や東京の観点もすごい面白い。っていうのと、共通のもの、例えば同じクルマであっても見え方が全然違うとか。「コンバートEVがいいよ」って言っても「香港だと乗れないんだよ」みたいな。今まで海外を羨ましがってたけど、羨ましがられていることがたくさんあるのをどんどん知っていくことが面白いなっていうのは感じたりしていて、何かその辺結構今楽しいかなと思ってますね。
村松:香港で乗れないのはなんでなんですか?
神保:香港はコンバートEVも全然ダメって言っていましたね。EVを改造しちゃダメっていうか、そもそも中国は古いクルマ乗れないので、香港はビンテージは乗れますけど、EVに改造しちゃダメとかですね。アジア結構乗れないですコンバートEV。
村松:法律的?
神保:法律的に。EVってやっぱ燃えちゃうのが問題なので、それを改造するのは難しいみたいですね。
村松:じゃあ、チャンスかもしれないですね。そこはガラッと変わっていったりしていくと。そうやって〈DRIVETHRU〉を通じてハブになったり、ちょっと人が繋がったり、神保さん自身もいろんな人と繋がっていって、出会ったものとか、見ているものとか、起こったこと、全部記事にしてこうって考えますか? それとも何か温めていて、プロジェクトになっていけばいいみたいな感覚ですか?
神保:経験したり、感動したものは全部届けたいので、リアルタイムで全部出せればいいですけど、さすがにそれは難しいので。インスタのストーリーズぐらいは思ったことをすぐ出すようにはしていますけど、全部記事化すると難しいのと、大量な記事をあまり作りたくないなっていうスタンスはある程度ある。
村松:よく言っていますよね。
神保:はい。あんまり大量生産しすぎない方がいいなと思って。それよりも、何年後かに読んで、あのときこうだったんだというのがわかる方がいい。テキスト量は極力少なくしようぐらいな感じです。インスタとかSNSのところはリアルタイムで、できる限りアウトプット、紹介するようにしています。〈DRIVETHRU〉の本サイトの方はある程度ちゃんとまとまった内容にしてはいるつもりですけど、なかなか原稿を書く時間を確保するのは難しいですよね。クルマ特集の雑誌の場合、校了やデッドラインがここですので出してください、というスケジュールがあるけどそういうわけではないのでね。月1、2本記事を上げますというのを掲げているわけではないので〈DRIVETHRU〉は。完全に思いついた時間になっちゃっているのはよくないよなっていうのはあります。でも、常に何か上げていないとっていうのは、もうライフワークにはなっていますけどね。
村松:マガジンでなくてもいいっていう考え方、それがすごく面白いかな。
神保:マガジンじゃないよなっていつも思う、最近とくに(笑)。
村松:(笑)
神保:かといって何かそれに代わるピッタリの言葉もなく、〈DRIVETHRU〉だけにしたら本当にもうマクドナルドみたいなっちゃうかなと思って。
村松:(笑) 逆に今後〈DRIVETHRU〉をどうしていきたいとかありますか? 何か、こうなったらいいなとかこうしていきたいなとか。
神保:1番いいのは〈DRIVETHRU〉が必要ないぐらいみんながクルマに興味に持って、僕が取材して回らなくてもいっぱい人から教えてもらえるようになれば一番いいなと思いますけどね。僕は必要ないなってなれば面白いなと思いますけど。
村松:うんうん、でもそういう意味では、ある種の使命感を持って、まだ世の中に紹介されていなかったり埋もれているものを掬い上げて発信していきたいっていう基本的な考えはあるんですね。
神保:そうですね。だからといって偉そうになりたくはないので。周りからは何かやってるな〜ぐらいな感じだといいですけどね。
村松:でも何かそうやって自然にコミュニティが〈DRIVETHRU〉周りって生まれているなと外から見ていて思っていて。どうしてもね、オンラインのメディアって、ちょうど僕らも世代的には近いのでわかるかもしれませんが、出始めのときって、すごい記事数がメディアの価値みたいな。
神保:そうです! その反動かもですね。
村松:どっかにありますよね。
神保:ちょうど同じぐらいにキュレーションメディアがいっぱい出ていて、量産されるのを見ていて、あれじゃないんだよなと、すごく思っていた気がします。〈DRIVETHRU〉初期の頃って、コミューンって表参道のところ(『246コモン』)でオンラインで紹介したクルマをリアルでそこで見たり触ったり買えたりする、みたいなことを隔週なのかでやってました。中に乗ることもできるようにしたり。デジタルとリアルをちゃんとこう。本は出版するほどパワーなかったけど、クルマを借りてきて展示したりとか、紹介することはできたので、それで説得力を持たせるみたいなことをやっていました。大量生産されるキュレーションメディアをそのとき見ていて、そこと一緒にされたくないなと思って踏ん張っていた感じはあります。とはいえ知名度も全然ないからコミューンに来てくれるお客さんとかを捕まえて、今すぐここでフォローしてくださいみたいな(笑)最初の頃とかやっていました。
村松:へえ〜。
神保:そういうのもあったので、コミューンがなくなり何か接点を持たないといけないから定期的にイベントをやらないといけないからやっていたっていうよりも、何かタイミングなんですよね。これは人を呼んで説明した方が面白そうだな、みたいなのでイベントになっていった感じではあります。
村松:今は『モバイルSS』に注力していますけど、何か考えていることってあるんですか? その次みたいな。
神保:特に今『モバイルSS』が大変すぎて(笑)。いろんなことを今やっているところなんですけど。前やっていたドライビングシューズみたいな、プロダクトで相談されて企画を一緒に考えたりみたり、そういうものがちょいちょいありますかね。僕だと思いつきもしなかったものがポイっと出てきて、それをどうやって知ってもらうかはまだ形になっていないんですけど、あったりするのかなっていう気はします。
村松:ドライビングシューズとドライビングサンダルつくっていましたね。
〈DRIVING SANDAL〉
引用: 〈DRIVETHRU〉
神保:そうですね。全然ドライビングじゃないんじゃないかと言われるみたいな(笑)
村松:去年?がサンダルで一昨年がシューズですか?
神保:そうですね、でした。
村松:すごいですよね、ああいうのも形にしていって。
神保:そうですね、デザイナーの手嶋慎さんが機転を利かしてというか、僕がまあまあ無理を言う、ってわけじゃないんですけど、いい具合に仕上がりますよね。面白いです、とても。
村松:なるほどな〜。
神保:ドライビングサンダルでもね、やっぱりあれはもう夏にしか履いたらダメな気がするからいいですよね。あれを持つことによって夏が早く来てほしいなと思うみたいな。noruは何かプロダクトつくってなかったでしたっけ?
村松:オンラインでストックしたコンテンツを本にしたり、とかっていうのはあるんですけど。プロダクトはやってないっすね。
神保:いいですよね、書籍。書籍も毎回会社に提案してはいますけど、はい、却下ー!っていつも言われます(笑)。
村松:(笑) noruはプロジェクトだとか、ことを起こして、もう少しコミュニティを産んでいったりとか、人が繋がってくみたいなことができたらいいなとは今年は思っていて。このポッドキャストも小さなひとつの手というか、その一環でもあるんですけど、そんなことは考えていますけどね。だから本当ね、すごいなと思いますよ。〈DRIVETHRU〉は。
神保:いやいや、本当に思いついたのをただやっているっていうだけだと思いますよ(笑) 。精度は甘いですからね。だいたい。
村松:いやいやいやいや、本当、やることが大事。
神保:ありがとうございます。ポッドキャストももうちょっと頻繁にやりたいですけどね、我々のポッドキャストはだいたい、「また久しぶりになってしまいました」から始まりますからね(笑)
村松:(笑) 勉強になりました。10年間か。うち5年だから、あと5年間か。どうなることやら。でも確かにそのマガジンじゃなくてもいいみたいな考え方があるっていうのは聞けてよかったかな。
神保:多分マガジンだからなんですかね、みたいな感じはすごいするなと思っていて。何なんだろうな、みたいな。始めたときはオンラインモーターマガジンであることが多分重要な気がちょっとしていて。でも今はもはやもうマガジンの意味がないもんなと思ってる。いるのかな、このオンラインモーターマガジンっていう、ずっとここ5年間。コロナぐらいからよく思っていましたよね。
村松:逆に何を大切にしたり、何を守っていくとか続けていきたいと思っているんですか?
神保:発信力みたいなものがマガジンと関係あるのかなって。別にマガジンであるから誰かが読むってことはないなっていう気がしています。コロナのときとかに『Clubhouse』とかぶわーって浸透して一気に引きましたけど、別になんでもないプラットフォームが出てきて、でもタイミングとそのときの状況によってワーッて集まる。そこの情報の正しいかどうかは、デマもあればわけわかんないのもある。でもすごく熱狂して、そこにいる人たちがいっぱいいて、熱量が高いじゃないですか。
村松:うん。
神保:で、ああいうのを見ていて、これもうマガジンって必要ないよなってすんごい思っていたのはありますね。
村松:じゃあ、そこに人がある程度集まって、キャッチボールであったり、繋がりが生み出せれば?
神保:だし、なんか感覚的にいうと、街である必要はないみたいな感じ。別に街にいるからシティーボーイではなくて、遠くにいたってそのマインドは保てるし、変わらない。街にこだわる必要はない感じで、別にマガジンにこだわる必要はないなっていう感覚ですかね。
村松:逆にそうすると何にこだわるんですか?
神保:人の話を聞いてくれることだと思うんです。マガジンだから聞いてくれるってわけじゃなくて、仮にモバイルSSの話、今の集中しているものでいうと、〈DRIVETHRU〉マガジンがやっているからモバイルSSに興味を持ってくれるわけでは絶対ないなと思っていて。モバイルSSのサイトをつくったんですけど、かっこよくやっても何も聞いてくれなさそうな気がしていて。今『おあしす教授」っていう架空の謎のキャラクターをつくって、そっちからモバイルSSについて「実はソーラー発電して使っているんだよね」みたいなのを教授に言わせる、という感じのを今やっているんですよ。
村松:あ、あのヨコサカさんにつくってもらったキャラクター?
神保:ヨコサカさんにつくってもらった教授。ヨコサカさんの作風はオリジナルは何もなくて、全てジブリだったりドラゴンボールだったりハイジとかのなんか色々なパロディーっていうかオマージュに近いので、サンプリングしてそれを田宮のホワイトボックスの中に集約してるみたいにいうんですけど。ひとつだけ、「ふっとん」っていう布団のお化けのオリジナルキャラクターがいて、それが印象に残っていたんです。で、モバイルSSのロゴとかもつくったりしてたんですけど、テック企業ではないので、モバイルSSのTシャツを着てクールにプレゼンしたいわけではない。電気やEVに対する意識を変えたりとかするのをテックカルチャーの真似してやっても誰も聞かないし、二番煎じってか、五番煎じぐらいな感じがしていて、なんか違うんだよなってすごい思っていたんです。で、たまたまヨコサカさんとよく話したりしていたんで、「ふっとん」みたいなキャラがモバイルSSにあったらいいんじゃないかなと思って、駄目もとで聞いてみたんですよね。もう「ふっとん」の兄弟でもいいから「ぶっとん」でいいから何かモバイルSSのキャラってつくれたりします?って聞いて、「全然いいですよ」と。いろんなコンセプトを伝えて。「モバイルSSっていうのは、インフラがないところにポンと置いたら、そこに電気とネットワークを供給できるから、現代版のオアシスなんですよ」っていう話をして、今さすがに砂漠にヤシの木と湖があっても生き残らないですよね。
村松:(笑)
神保:でも、そこに電気とネットワークがあれば、あとギリギリ水があれば、iPhoneを充電して、どこに行けば助かりそうかが調べられて生き残れる。多分今のオアシスはモバイルSSなんですよね、みたいなことを語ってもらうキャラクターをつくりたいから「ふっとん」の兄弟の「ぶっとん」でいいです、というような話を冗談で言ってて(笑)。「リアルでいつまでに欲しいですか?」って言われたのが去年。年末までにもし、もらえるんだったらめちゃくちゃ助かりますと伝えたら、OKですと言ってくれた。特にそれ以上のお願いはしてなかったんですけど、いきなり出てきたのが「おあしす教授」だったんです。
神保:教授か! と思って。
村松:可愛いですよね。
神保:今までは「〈DRIVETHRU〉の神保です」で紹介してたのが、全部教授が解説してくれるのは、これは新しくて面白いと思って。今そっち全開でやっているっていう感じですね。
村松:面白いですね。
神保:ってなるとやっぱり、マガジンって必要なのかな?ってますます思ってくる。
村松:ますます。
神保:何やってんの?みたいなのをよく言われますけど(笑)。だいたい謎だからこれで合ってるんだろうと思ってやってますけどね。
村松:ヨコサカさんのね、ページにも神保さん出ていただいてますので、リスナーの皆さんぜひ、ヨコサカタツヤができるまでって記事読んでください。
>>ART OF MOBILTY|#05 “作家・ヨコサカタツヤ” ができるまで by ヨコサカタツヤ
神保:ありがとうございます。そうでした。
村松:すごい、いい記事です。
神保:いい記事ですね。
村松:さて、今日の話を簡単にまとめつつ、印象に残ったことをちょっとお話しますけども、メディア運営する醍醐味ってコミュニティを浮き彫りにしたりだとか、育むということだと思っていて。それはすごく手もかかるし、一筋縄ではいかないんですけども、。企画したり、取材したり、記事を発信することと同じぐらいメディアを維持していく上では大切なことだと思っていて。神保さんはそのコミュニティ活動をコンバートEVであったり、モバイルSSであったり、自己発信プロジェクトみたいなことを通して行うことができていて、公私混同しながら行えている、ある意味理想的なあり方だなと改めて思いました。それとコミュニティ活動を考えたときに、〈DRIVETHRU〉がマガジンである必要はないのかもしれないと言ったことは、なんだかすごく自分に置き換えたときにどういうことなんだろうと考えさせられましたし、自分でこれから考えていきたいトピックになったなと思いました。
さて、そろそろお時間なので、今週はここまで。本日お話しした内容は、noru journalの方でもテキストにてお届けしていますので、ぜひご覧ください。それと番組の評価もぜひよろしくお願いします。改めまして、前編・後編と神保さんありがとうございました。
神保:ありがとうございました。
村松:どうですか?最後に感想は何かありますか?
神保:そうですね。もうnoru journalは2回?3回?結構僕なんか登場させてもらっていて、楽しいなって思いますけど。
村松:うん。記事は2回、ちょっとしたコメントを入れると3回ぐらい出てもらっているかもしれないですね。
神保:嬉しいですね。
村松:だから僕もことあるごとに呼んじゃいます。
神保:ぜひ!呼んでもらえるように頑張ります。
村松:またね、モバイルSSの進化、モバイルSSが量産とかし始めぐらいにまたお呼びします。
神保:お願いします。
村松:(笑)
神保:ちょっと、もうちょっと時間かかりそうですけどね。
村松:そうですね。ではでは。
神保:はい。
村松:ありがとうございました。
神保:ありがとうございます。
神保匠吾 (SHOGO JIMBO)
1982年生まれ、福岡県出身。大学卒業後、ロンドン留学を経て、ファッション誌を出版するカエルム株式会社へ入社。2014年にオンラインモーターマガジン『DRIVETHRU®︎』創刊。ディレクターとして現在に至る。POPEYE、UOMOなど他媒体へのエディトリアルや連載など幅広く活動中。2021年にコンバートEVにてグッドデザイン金賞を受賞。目下「モバイルSS」の普及に向けて奮闘中。2025年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員へ。
IG:@drivethru.jp @shogojimbo