Column2026.08.26NEW [PROMOTION]

SNAP #03 | 自転車は、社会の解像度を上げるメディアでもある

柳川健一

連載「Bicycle as Freedom by narifuri」では、fashion+bicycle(機能性)を融合させたnarifuriとともに、自転車とともにある“自由”のかたちを、スナップとコラムを交互に展開しながら記録していく。都市を走り、日常を更新し続けるサイクリストたちの現在地を追う。

SNAP #03に登場するのは、横浜を拠点に活動するメッセンジャー、柳川健一さん。約四半世紀にわたりメッセンジャーとして走り続けながら、現在は約50名規模のチームを束ねる〈Courio-City〉の代表で、単なる配送業にとどまらず、行政との連携や都市実験、カーゴバイクの社会実装、さらには映画祭『Bicycle Film Festival JAPAN(BFF JAPAN)』のオーガナイズなど、自転車を起点に多様な領域を横断している。

Bicycle as Freedom | 記事一覧


自転車をインフラから「人間の延長」へ

柳川さんの活動のなかで一貫するのは「自転車は個人の移動手段であると同時に、社会を編み直すためのメディアでもある」という視点だ。メッセンジャーは書類や荷物を運ぶだけでなく、ときには医療検体や行政資料を届け、あるいはコーヒーかすの回収と再資源化も担う役にもなれる。都市の“隙間”に入り込みながら、既存の仕組みを少しずつ更新していくその営みは、自転車の可能性を静かに拡張し続けている。

オーガナイズする『Bicycle Film Festival JAPAN(BFF JAPAN)』では、世界各地の映像作品を通して自転車が単なる乗り物ではなく、ジェンダーや都市環境、コミュニティといった社会的なテーマと深く結びついている現実にも触れてきた。移動手段としての利便性を超え、「これから人々がどう生きるのか」という問いにまで接続されていく自転車。その射程の広さを、柳川さんは現場から実践的に示している。


photo by Masayuki “rocky” Tsuyuki

photo by Masashi Kimura

「選択肢としてそこにあることが大事なんです」。クルマでもなく徒歩でもない、“もうひとつの当たり前”を都市に根付かせたい。さらに先に見据えているのは、自転車を“車両”としてではなく、人の延長として捉え直すという考え方なのだという。

「近年、欧州を中心に広がっているのが“アクティブモビリティ”という考え方なんです。徒歩や自転車のように、人の身体的な動きをベースにした移動手段を、都市の中心に据え直そうとするもので、たとえば、都市の中心部に車両を立ち入れなくすることで渋滞の緩和なども見込めるんです」

そこでは、自転車はクルマと同じ交通カテゴリーに属する存在ではなく、「人」に近い存在として扱われる。速度や効率だけではなく、環境負荷の低さや、街との関係性、そして人の感覚を取り戻す移動としての価値が重視される。

柳川さんの実践は、まさにその延長線上にある。自転車の位置づけを、インフラの一部としてではなく、人間的なスケールへと引き寄せていくこと。「都市生活のなかで、自転車はもっと“人寄り”の存在として機能できるから」と。その試みは、静かに、しかし確実に街の風景を変えていくだろう。

──「自転車に乗ること」は、あなたにとってどんな時間? 

最高に気持ちがいい時間ですね。感覚としては、お風呂に入っているときに近いかもしれない。身体ひとつで移動している実感があって、すごくシンプルで、人間らしい感覚に戻れる時間だと思います。

──乗っている自転車について教えてください。こだわりのポイントも。

19歳のときに組んだフレームを、いまも乗り続けています。普通は新しいものに乗り換えていくと思うんですけど、あえて使い続けることで見えてくるものもある。エイジングも含めて、自転車と一緒に時間を重ねていく感覚が好きなんです。いまは“完成されたもの”というより、変化し続ける状態を楽しんでいます。


19歳のときに組んだ一台を、いまも乗り続けている柳川さん。補修やパーツ交換を重ねながら、フレームに刻まれた傷や塗装の表情も含めて、自転車とともに時間を重ねてきた。ブレーキケーブルも交換しやすいようにセッティングし、まだ使えるパーツは修理を重ねながら、できる限り使い切る。新しさや完成度を追いかけるのではなく、使い続けるなかで生まれる変化を楽しんでいる。

──自転車での移動距離、1週間でどのくらい?

基本的には、ほぼ毎日通勤で乗っています。片道がおよそ8kmで、往復に少し街中の移動が加わって、週にするとだいたい100km前後になると思います。レースのために距離を稼ぐというより、生活のリズムの中で自然と積み上がっていく距離、という感覚に近いですね。

──好きなサイクリングコースは?

よく走るのは鎌倉から134号線のルートですね。海沿いを走るのはやっぱり気持ちがいい。ただ、帰りはあえて内陸に入ることが多いです。同じ道をなぞるより、少し違う景色を選びたくなるので。

──今回着用している〈narifuri〉のウエアはいかがでしたか?

サイドポケットの配置がいいですね。以前は背中側にポケットがあるものが多かったですが、街での動きやすさを考えると、この位置のほうが自然に使える。ワッフル素材の軽さや通気性も含めて、日常とライドを無理なくつないでくれる印象です。

吸汗速乾性やUVカット、ストレッチ性を備えたポリエステルワッフル生地を用いた『マルチワッフルジップパーカー』。軽く、動きに合わせてしなやかに伸びる素材に加え、ペダリングを妨げにくいサイドポケットや、夜間の視認性に配慮したリフレクターピスネームを備える。
──ウエアを含め、ギアに求める要素は?

乾きやすさと、汚れが目立たないことですね。自転車に乗っているとどうしても汚れるので、それを前提にストレスなく使えるものがいい。あとはシンプルであること。長く使えるものを選びたいです。


2010年頃に別注企画で発売された〈narifuri×Courio-City〉のショーツ。その当時「ジーパンのように穿いて育てるチノパンショーツを作ろう」がテーマだったとか。柳川さんはポケットのエッジ部分などほつれた箇所は補修しながら履き続けている。

──自転車に乗り始めた頃と現在、どんな変化を感じますか? また今後のサイクリングのシーンに期待したいことは?

昔は「速く走る」とか「競う」みたいな側面が強かったと思いますが、いまはもっと社会との関わりの中で自転車を捉えるようになりました。カーゴバイクのように、新しい使い方も少しずつ広がっていますし、都市の中での役割も変わってきている。

これからは「人が中心の街づくり」の中で、自転車がもっと自然に選ばれる存在になっていくといいですね。クルマと対立するものではなく、適材適所で共存していく。その中で自転車の領域をきちんと広げていくことが大事だと思っています。

──自転車に乗っていて、「自由」を感じる瞬間がありますか? どのような時に?

やっぱり、自分の身体だけで成立していると感じるときですね。エンジンもいらないし、特別なインフラに依存しなくても動ける。そのシンプルさが、そのまま自由につながっている気がします。

──“サイクリスト”としての目標や目指す場所はありますか?

カーゴバイクが当たり前に街を走っている状態をつくりたいですね。それが結果的に、人が中心の街になっていくことにつながると思っています。自転車は、ただの移動手段ではなくて、社会のあり方を少しずつ変えていく力を持っている。その可能性を、実装として広げていけたらと思っています。


photo by Shota Mizuno


柳川健一 (やながわけんいち)
メッセンジャー/Courio-City代表。横浜を拠点に約25年以上メッセンジャーとして活動しながら、配送業の枠を越えた都市インフラの再設計に取り組む。カーゴバイクの社会実装や自治体連携、Bicycle Film Festival JAPAN(BFF JAPAN)のオーガナイズなどを通じて、自転車の公共性と可能性を拡張している。
IG:@courio_city

photo by Teppei Hagiwara / edit&text by Ryo Muramatsu / promotion by narifuri

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